29 蛇足:幕間集
■幕間
「「それじゃあ披露宴やりましょう!」」
お母様ズが口を揃えてそう言います。
「結婚していませんが、もう披露宴ですか?」
「馬鹿ね、披露なのだから何でもいいのよ! あとこの子は家の
「そう言うものですか?」
そんな会話も、完全に蚊帳の外の私です。
何がって?
婚約が決まりまして、王家主催のパーティへ行くことになりまして、急遽、ドレスの採寸が始まったのです。
「お嬢様、ご婚約おめでとうございます」
開口一番のご挨拶はお馴染みのエルゼ様。
「清楚で可憐なお嬢様にお似合いのドレスを作りますわ!」
最近至るところでそう聞きますが、どこら辺が清楚で可憐なのかは不明。
そんな事をぼやけば、
「何を仰いますか、侯爵家のご子息との噂が流れた際は、皆様がお似合いの二人だと納得されたのですよ?」
そう言えばあの噂も清楚で可憐でしたね。
「今の社交で華と言えばお嬢様のことです。ドレスも皆様、ディートリンデ嬢のような物をとご注文頂いてますわ」
「へ、へぇ……」
半信半疑の生返事。
「そうなのよリンデ。貴方きっとすっごく驚くわよ。だって夜会に行くとみんな貴方と同じようなドレス着てるんですもの」
この時の私は、色取り取りのさらに凄いのよバージョンの令嬢が並ぶと壮観だろうなーと、微笑ましく思っていました。
■幕間
とある日の王家主催パーティ。
「凄いなみんな!」
先ほどから一人興奮気味なアウグスト様が、周りをキョロキョロと落ち着き無く見回しています。視線の先には色取り取りのご令嬢たち。
「これはやりすぎではないでしょうか?」
だってね?
皆様、さらに凄いのよバージョンを大きく越えた
その大きさたるや、まるで蝶です。一部、力なく垂れ下がったリボンを召した蛾も居ます……
「エルゼさんが言ってたよ。リンデの噂話を元にデザインを勝手に盗用する人が居るんだってさ」
はぁ、この蝶やら時々蛾の方々はパチモン(失礼)を掴まされた方ですか……
もう少し上手く真似れなかったのですかね?
でかすぎるリボンを見て興奮冷めやらぬ、アウグスト様に、私は気になったことを聞いてみた。
「そう言えばアウグスト様も、あれは初めて見たのですか?」
「それはそうでしょう? だって僕は愛する令嬢から参加拒否されてたからね」
一体誰と参加しろと言うのだと、ニヤリと笑います。
う……やぶへび。
「はい、すみませんでした」
そう言って誤れば、「別にいいよ」と糖度十二分の笑顔で頬にキスを落とされました。
■幕間
「リンデ、お出掛けしよう!」
「はあ?」
夜会シーズンも終わり、学園の休校期間も終了。
そんな学園のいつもの食堂での会話。
「だから、デートしようと言っている」
婚約してからと言うもの、アウグスト様は周りを憚らずグイグイ来るようになりました。
えぇお隣にはいつも通りモーリッツ様が座っていまして、先ほどからニヤニヤと嫌らしい笑顔を浮かべていますよ。
「いつでしょうか?」
「これから明日ま「お断りします」」
婚前でお泊りなんて禁止ですよ?
「じゃあ明日で」
「……」
「本屋と」
ピクッ。
「帰りは苗を買って帰ろうかな」
「い、行きます!」
とんだチョロインでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます