07 使用人日記帳1

△月○日


 お坊ちゃまを起こし準備を整えた後、朝食の時間になってもお嬢様が起きてらっしゃらないので、お部屋に向かいました。

 ドアをノックして入ると、どうやらまた夜通し本を読まれていたようで、お嬢様はベッドの上で本を読んでいらっしゃいました。

 あの・・お嬢様に限って、起きてから読み始めたなんてわけは無いでしょう。

 これはまた徹夜ですね……


「お嬢様!」

 強く声をお掛けすると、お嬢様はハッと本から顔を上げわたしの方を見ました。

 その表情はバツが悪そうで、わたしの視線を避けるかのように少しばかり視線を外していらっしゃる。


 これで何日目かしら?

 新しい本(続編有り)を購入してからこっち、夜通し本を読み続けていらっしゃいます。

 本来なら可愛らしいはずのお顔は、目の下には慢性的にクマが出来、顔は死人のように血色が無く土色に……

 あぁなぜこのような状態になったのでしょうか?



 寝不足と不規則な生活から、朝食や昼食を摂られないことも多く。

 体からは女性らしい柔らかさも失われてしまっています。

「お嬢様……」


 叱られると感じたお嬢様はすぐに「ごめんなさい!」と素直に謝られます。

 先に謝られてしまうととても困ります。

 わたしの立場上これ以上叱ることがむつかしいのです。でもそれを見越して~ではないでしょう。だってお嬢様はすごーく単純ですからね。

「わかりました。今回だけですよ。でも、奥様には報告させて頂きますよ」

 奥様に報告する、それを聞きお嬢様はこの世の終わりのような表情をされました。


 もはや何度目か分からないお嬢様の「今回だけ」と言う約束で、報告は取り止める事になりました。

 あぁわたしが甘いのがダメなのでしょうか……





□月×日


 先日、お嬢様の婚約が破棄されたというお話を聞き、わたしは大層ショックを受けました。


 それはそうです。

 わたしがもう少し厳しく接して生活を律していれば、お嬢様も婚約破棄される事も無かったはずなのです。

 後悔先に立たずといいます。もはや起きてしまったことは覆せないのです。


 お嬢様も何か思うことがあったのか、ここ数日は思いにふけるような仕草が増えていました。





□月☆日

 本日、お嬢様が夜会へ出られると言うお話しを聞きました。

 しかもお相手はあのフェスカ侯爵家の跡取り様だというではないですか!?


 お嬢様! 大金星ですわ!!



 その件について、執事のセリムよりお嬢様会議が開かれました。

 そこで決まったわたしの役割は、就寝前にダンスレッスンで疲れたお嬢様のマッサージです。これは花の香りがするオイルを使用して念入りに磨き上げるというものです。

 お任せください!


 さらに奥様のご手配で、奥様のご友人の貴族より、使用人の方が週に二度、ご令嬢を着飾らせる技術を教えに来ていただける事になりました。そこでは最近の流行の髪の巻き方や、化粧の仕方などを習います。

 使用人一同頑張りますね!

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