02 没案、悪役令嬢

 本日から悪役令嬢を目指す私です。

 本家の悪役令嬢は、公爵家ご令嬢のクラウディア様。金髪の御髪にはお約束のドリルを何個か装備されてます。

 華やかな本家に対し、私はだたの地味っ子。

 まぁ出来る限り頑張ろうと思います。




 まずはプレイヤーの素性を探ります。

 実はプレイヤーは名前が自由入力&絵師別に3枚の顔があるのです。

 ここで無駄に凝っているのは、選択した絵師によりキャラの設定が違う事でしょうか。

 選んだ絵師によっては攻略不可能なキャラが出てきます。もちろん逆も然りです。


 ちなみに私には絵師縛りはなく、誰でもウエルカム。参考までに、他にフル出場なのは悪役令嬢のクラウディア様だけです。

 攻略対象では唯一人、なんと言う難易度の低さでしょうか。


 プレイヤーの変わらない設定では、所属しているクラスは2-B。

 2年の春から転校して学園に通い始めた、とある貴族の子。絵師のパターンにより王道の実は隣国の王子様であったり、幼馴染キャラが発覚したり、血の繋がらない妹令嬢が居たりするはず。

 まぁようするにですよ、この時点でプレイヤーの詳細情報が分からないってことです。


 だって接点無かったからね!


 接点あったら私ルート一直線だからね!!

 何この地雷キャラ!

 そりゃ避けるよ……



 そんな中で私が接触したのは、絵師なんぞに一切左右されない固定キャラであるお助けキャラです。

 クラスはプレイヤーと同じ、2-B所属でお名前は確か……アウグスト様。フェスカ侯爵家の嫡男です。

 彼はイケメンなのに許婚どころか彼女も居らず、プレイヤーだけの為に存在して、お得情報やらお役立ち情報を快く教えてくれると言う、ゲームに無くてはならない存在の人!

 ただし、最初のうちは~と言う注釈が付きますが……


 ほら、ゲーム慣れするとさ、その会いに行く為のタイムスケジュールとか無駄じゃん。

 って事はだよ?

 周回重ねると、会話もしなくなるよねー




 さて、時刻はお昼時です。

 貴族の令嬢が他クラスの教室まで特定の男性を訪ねるなんて、はしたないですからね。

 お昼までしっかり待ちましたよ。


 お昼時にアウグスト様が普段食事をされている食堂に移動し、昼食のプレートを手に彼の座る席の前に着席します。

 もちろん、着席前に了承を得て座ってますよ。


 男性と同じテーブルの時点でかなりはしたないのですが、一番込み合っている時間帯を選んだので自然を装えたでしょう。

 ちなみにアウグスト様の前の席は、プレイヤーが情報を得る為の席ですから、どんなに込み合っていても常に開いています。きっとゲーム効果と言う奴です。



 向かいに座った私へチラリと視線を上げた後、アウグスト様は若干ガッカリした表情を見せますが、再び無言で食事を再開しました。

 まぁ私はプレイヤーではありませんから、特に話すことも無いのでしょう。


「初めましてアウグスト様、私はギュンツベルク子爵令嬢のディートリンデと申します」

 唐突に自己紹介を始めた私に顔を上げると「知ってるよ」と、気さくに返事を返されました。

 言われて見ればごもっとも。

 攻略対象である私の情報なんて人に教えるほどあるのでしたね。

 まぁ速攻落ちる私の情報は少なそうですが……



 コホンと間を入れてから、「本日はお伺いしたい事がありまして、」と続けると、爽やかな微笑みを浮かべながら「何かな?」と、問い掛けてくれます。

 その微笑たるや、糖度十二分です。

 アウグスト様はとてもイケメンなのに、なぜ特定の女性が居ないのでしょうか?



「私が知りたいのは、今年の春に入った転校生についてですわ」

 私の言葉を聞いたアウグスト様からは、先ほどの微笑が瞬時に消え、苦々しい表情に早変わりしました。

 なんぞこれ?

 そして彼は搾り出すように、

「あいつとは話したことが無い」

 と、そう一言だけ。




 あ……、そう言うことですか……

 周回を重ねると~、のやつですね?

 う~ん、これは困りましたね。


 それでも諦めずに、「お名前はなんと仰るのでしょう?」と、問えば、「ブレンターノ伯爵家のモーリッツだ」と教えてくれました。

 続いて話を聞くと、どうやら両親が亡くなり、引き取られた家で血の繋がらない妹令嬢がいるそうで~と、出るわ出るわの情報群。

 流石はお助けキャラですね、プレイヤーとの会話が無くとも凄い情報量でした。


「ちなみに今一番好感度が高いのはどなた?」


「それは妹令嬢だよ」

 と、さらりとシステムメッセージまでお話してくれました。

 なるほどー

 ご自分の条件反射っぷりに、何言ってんだ俺? と、はてなマークですが気にしない方向で。



 そう言えば妹令嬢と言えば、フルコンプリート後の隠しキャラ扱いだったはず。具体的に言えば、フルコンプリートするまでは「血が繋がっていない」と言う最も重要な情報が手に入らないという設定ですね。


 そこまで攻略できているということは、つまりゲーム慣れしているから助言不要。さらに今回の周回では他は一切無視で妹狙いと言うことですね。

 スケジュール管理の都合上、股掛け不能なゲームでしたからね。


 無事、攻略対象が分かったので、イベントを妨害しますかね~

 っと、待てよ?


 妹令嬢と言えば、起きるイベントは殆どプレイヤーの屋敷内やら学園外ばかりです。ぶっちゃけ学園モノゲームに喧嘩売ってます。

 おまけにフルコンプ後の隠し要素と言う事で、選択ミスもほぼなしと言う難易度駄々甘設定じゃないですか!?

 まぁ難易度については私も耳が痛いですけどね!


 何が言いたいかって?

 つまりお家大好きなインドア派の私が妨害する術が無いじゃない!?

 どーすんだこれ?

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