第13話

今日も2階層を回っていく。ウィップトードが正面からやってくるが対処方法はもう完璧だ。


昨日と同じようにウィップトードが体を反らせて舌攻撃の溜めに入ったのを見て、1歩横にズレてウィップトードに向かって走り出す。その次の瞬間には舌が伸びてくるがその舌の攻撃のライン上にはすでに俺はいない。


どうやらウィップトードは体を反らせて溜めに入るとこちらのことは見えなくなるようで体を反らせた瞬間にこちらがいた位置にしか舌は伸びてこない。その為1歩横にズレてしまえば攻撃に当たることはない。


俺はそのままウィップトードの喉を切り裂きながら横を走り抜ける。


ウィップトードが苦しむようにもがいて死んで消えるまで多少時間が掛かるがこれで返り血は最小限に抑えられる。


「ふぅ~」


ウィップトードが魔石を残して消えたのを確認して息を吐くとリュックからペーパータオルを取り出す。


100円ショップで必要な物を買い足したので今日は準備万端だ。


ナイフに付いた血をなるべく拭って使ったペーパータオルは一つの袋に詰めてまとめておく。


「ん~……こんなもんか」


ナイフに血が残っていないことを確認して鞘に戻すと昨日は通らなかった道を選んで進んでいく。


「この調子で今日一日歩きまわれば3階層への階段を見つかるか?ただその3階層が問題なんだよな。そこで寝泊まりしてるグループに入れてもらうべきかどうか」


そもそも入れてもらえるかも分からない以上あまり悩んでもしかたないが、ここに居続けるならグループに入れてもらう方がメリットが大きい。だがもっと下の階層を目指したり、他のHランクダンジョンを回って素材を集めたりスキルを鍛えてより使えるようにするなら足枷になる可能性もある。


「う~ん、いっそのこと3階層は素通りで4階層に降りるのがいいか?」


そもそもこのダンジョンの魔物なら対処方法に違いがあってもよほどのことが無ければ死ぬことはないとされている。少なくとも1~2階層の魔物は対処が簡単で攻撃は避けられるし腕で防げば少し痺れる程度の威力しかなかった。事前に出てくる魔物を調べておく必要はあるがプロテクターか何かちょっとした防具でも用意しておけば問題なさそうだ。


「ただ往復に時間が掛かるのが難点だな」


3階層まで最短ルートで2時間、5階層までだと5時間なら4層までは3時間から3時間半位掛かるだろう。往復6時間から7時間となると狩りに回せる時間が限られてくる。


「3階層のグループに4階層のドロップを少し渡して寝る時だけ一緒にさせてもらうとか?それなら向こうの今までの狩りのルールに割り込まなくて済むし、何かあれば抜けたって向こうも影響は少ないだろうしな。それで数日に1回売るために外に出ればいいし……。よし、その方向で交渉しよう」


それから2階層を回り続けて無事3階層への階段も見つけることができた。


そこから帰りの時間いっぱいまで2階層で狩りを続けて、地上に戻ると今日の収入は税引き後で3375円になった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る