第5話

階段を降りてダンジョンに入るとそこは洞窟だった。


「天然の洞窟とか鍾乳洞はもっと足場が悪かったり、高低差があったりするけどなんか人の手で掘ったみたいに整備されてるな」


洞窟はまるで坑道のように足元はある程度平らに均され、天井はアーチ型になってる。


「それに本当に明かりになるものがないのに見えるんだな」


本で読んで読んだ通り洞窟内にはランプなどの光源は設置されていないにも関わらず、まるで壁自体がうっすらと光っているかのように普通に見えていた。


「それじゃあモンスターを探すか」


洞窟を進んでいくとすぐに十字路に出た。


「下手に曲がると迷いそうだな。とりあえずなるべくまっすぐだ」


十字路をまっすぐ進み少しすると浜辺に打ち上げられたクラゲのようなうっすら青みがかった物体が道の真ん中で震えていた。


「これがスライムか」


この虎岩Hランクダンジョンは全5階層で1階層ではスライムしかでない。このスライムの攻撃方法は体当たりのみで強さはバレーボールの球を人が全力で投げるくらいらしい。体が強い酸だったりすることもなく硬さもわらび餅くらいで刃物でサクッと核を突き刺せは簡単に死ぬ。


「あれが核だな」


半透明な体の中にゴルフボールより少し大きい位の青い塊が見えた。ナイフを逆手に持ちいつでも突き立てられるように構えてゆっくりと近づく。


3mほどの距離まで近づいたところでスライムがこちらに気が付いたようで体の表面を波立たせ、ぎゅっと小さく縮こまった。


「うぉっ!」


次の瞬間、スライムはこちらに向かって勢いよくジャンプして飛び込んできた。


それを慌てて横に避けると背後でべしゃりとスライムが地面に叩きつけられた音が聞こえた。


「くそっ!」


俺は駆け寄りスライムにナイフを突き刺したが核を外した。慌てて何度もナイフを突き刺し、4回目でようやく核に刺さった。


スライムは黒い霧へと姿を変えた。


「うぐっ!」


心臓がドクンと痛い位大きく脈打ち、体に何かが流れ込んでくるような不思議な感覚が俺を襲った。


「はぁはぁはぁ……。これでステータスが手に入ったのか?」


しばらく座りこんで呼吸が落ち着いてくると最後に大きく深呼吸して手元に落ちていた物を拾った。


「これが魔石か」


それはスライムが消えた時に残していった物でビー玉より一回り小さいくらいの黒い石だった。


「簡単に倒せることは分かったし、稼ぐには時間当たりのエンカウント率とドロップ率がどのくらいかが問題だな」


魔石をポケットに仕舞うと辺りを見渡して他にスライムが近くにいないことを確認すると通路の端によった。


「それはさておき、まずはステータスの確認だな。『ステータス』」


そう呟くと目の前に薄い青色の半透明の板が現れた。


--------------------

 名前:指宿いぶすきつかさ

 職業:能工巧匠のうこうこうしょうのクラフター

  L v :1

 M P:15/15

 STR:8

 VIT:8

 INT:12

 MND:10

 AGI:6

 DEX:16


 スキル

 ・素材鑑定 Lv1

 ・継承 Lv1

--------------------


「これが俺のステータスか。職業が能工巧匠のクラフター?」


昨日調べた内容によると職業には『剣士』や『魔法使い』のような戦闘職と『鍛冶師』や『細工師』のような生産職がある。そしてその職業の前に特徴や成長性を示す枕詞のようなものが付くらしい。


例えば職業が同じ『剣士』でも頭に『瞬迅の』が付けば移動速度や剣速に補正が掛かり、短剣やレイピアのような軽い剣の適正が高くなる。また、それに適したスキルを覚える。『重撃の』と付けば一定以上の重量の剣を持つときのSTRに補正が掛かり、大剣のような両手持ちの重たい剣の適正が高くなる。同じように『魔法使い』の前に『延焼の』と付けば火属性の特に燃え広がるような範囲魔法を覚えやすく、『慈雨の』と付けば水属性の特に回復等の補助魔法を覚えやすい。

そして中には枕詞と職業がかみ合わない場合もあり、そういった人は早々に探索者を続けること諦めることが多い。


「クラフターっていうと生産職だよな。けど鍛冶とか革細工とか何かに特化してるわけじゃなさそう。能工巧匠って聞いたことないけど字面的に優れた能力備えた作り手って感じか?」


かなりよさげな職業にワクワクしてくる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る