第6話

「ステータスはDEXは高くてINTとMNDが平均とそれより少し高いくらい。STR、VITは低めでAGIはかなり低いな。」


ステータスの各数値に目をやり思わず唸る。


ステータスの各項目の初期平均は10。記録されてる最高値は20、最低値は3だ。MPの15DEXの16は優秀と言えるだろう。その反面AGIの6はかなり厳しい。


ステータスにHPは無いがVITの影響で体は頑丈になり、怪我をすることは少なるなるという。もちろんVITを上回る攻撃を受ければ別だ。


「DEXが高いのは生産職らしいけどSTR、VITが低いのは逆に鍛冶とか力のいる生産活動に向いてないんじゃないか?あっ、でも特殊効果を付けられる能力を望んだんだっけ。特殊効果を付けるのに魔法的なステータスが必要ならその分STR、VITよりもINT、MNDに数値が回されたって考えるのが自然か。あとはスキルだな」


今の俺のスキルは2つ。


・素材鑑定 Lv1

・継承 Lv1


ステータスのスキルに注目するとスキルの詳細が表示された。


・素材鑑定 Lv1

  素材として扱われるダンジョン産アイテムの鑑定を行う。


・継承 Lv1

  素材が持つ特性や能力の一部を他のモノに移す。

  継承後素材は崩壊する。


「素材鑑定はいいとして継承?特性や能力を移すのが特殊効果を付ける能力になるのか?とりあえず物は試しだな」


先ほど倒したスライムがドロップした魔石を取り出すと素材鑑定を発動する。


--------------------

 魔石

 魔力を含んだ結晶

--------------------


「これだけか?じゃあ継承は……とりあえずレンタルのナイフでいいか。どうせ手入れも何もされてないんだし」


継承先に指定する物を考えてひとまず手持ちの武器を指定する。


「『継承』」


魔石を素材に、継承先をナイフと意識して『継承』スキルを発動するとステータスを同じような半透明のウィンドウが表示された。


--------------------

 継承可能項目

 ・水属性(微弱)

--------------------


「魔石から継承できるのはこれだけか?素材鑑定では分からなかったけど、この魔石は水属性を持ってるってことだな。ナイフに水属性付けてもしょうがないし、キャンセルはできるのか?」


キャンセルと意識すると問題なくウィンドウが消え、継承が中断されたようだ。


「とりあえずこんなところか。スキルレベルが上がると性能が上がるらしいし、自分のレベルが上がれば職業に合ったスキルも増えるらしいからな」


スキルの取得方法は3つだ。自身のレベルアップ、スキルのレベルアップそしてスキルオーブだ。自身のレベルが上がると職業に合ったスキルを覚えることがあり、スキルのレベルが一定以上になると上位または関連スキルを覚えることができる。


そして、それらとは別にスキルオーブというスキルを覚えることができるマジックアイテムを使用することで職業やレベルに関係なくスキルを覚えることができる。


「とりあえず今日のところはこのままスライムを倒して自分のレベルを上げつつ、ドロップ品を集めて素材鑑定。それからドロップ品を売って食費の確保だ。」


やるぞー!と自分を鼓舞するように拳を上げるとダンジョンを奥へと進んでいった。





1階層を一通り回り尽くし、2階層への階段も見つけて入り口に戻ってきた。今回の探索で60匹ほどのスライムを発見し、42個の魔石とスライムの体を圧縮して固めたような固めのグミのような物3個がドロップした。


ちなみにこれのグミのような物を素材鑑定と継承に掛けた結果がこれだ。


--------------------

 スライムグミ

 スライムの体の一部を圧縮したもの

--------------------

--------------------

 継承可能項目

 ・弾性強化(微弱)

--------------------


このドロップ品をダンジョン入り口の買取カウンターで査定してもらったところ買取額はなんと1810円。


「これだけですか?」

「はい。スライムグミは1個10円。魔石の値段は重さで決まりますが、持ち込まれた無属性魔石は平均すると1個当たり50円です。合計2130円からダンジョン税15%を引いて1810円です」

「えっ、無属性ですか?スライムの魔石は水属性じゃ?」


集めた魔石すべてを確認したわけではないがいくつかに『継承』を掛けたところすべて水属性(微弱)が継承できるようになっていた。スライムの魔石は水属性のはずだ。


「持ち込まれた魔石の色はすべて黒。黒い魔石は無属性の魔石です。属性付きなら属性の強さによって色が変わりますが、水属性なら青系色の魔石になります」

「……そうですか」

「それで、すべて買い取りでよろしいですか?」


腑に落ちない感じがしつつもこれ以上ごねてもしょうがないので承諾した。


「はい、お願いします」

「お支払いは現金でよろしいですか?」

「はい」


買取金額を受け取り、ロビーの椅子で一息つく。ロビーに設置された時計を確認するだいたい12時間ほどダンジョンに潜っていたことになる。


休憩時間も含んでいるが12時間で1810円、時給換算で約150円。ホームレスにとってこの時給は良いのか悪いのか。


「でもまぁ、少なくとも今日の夕飯と明日の朝昼分くらいにはなったな。明日も同じようにダンジョンに入っていれば同じように稼げるだろ。あとはスキルを鍛えて売れそうなものが作れれば生きていける!」


ひとまず食べていくだけなら何とか希望が見えてきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る