第20話

テツさんと最初の買い出しに行ってから約2週間が経った。


あの買い出しから帰ってくるとテツさんに手伝ってもらって壁だけ作って俺のスペースを確保してもらった。


それから2日4階層で狩りをして1日買い出しと段ボールハウス作りというペースで過ごし、ようやく段ボールハウスの完成と一通りの必要な物を揃えることができた。


これでようやく食費に予算を回すことができる。


「つぎの買い出しでは3日か4日分くらい買っておきたいなっと」


そう呟きながら飛んできたレッサーブラッドバットと切り落とすと皮膜がドロップした。


「またハズレか」


レッサーブラッドバットの皮膜はレアドロップの割に買取価格が安すぎて完全に外れ枠になっている。


皮膜をリュックに仕舞って時間を確認するともう5時になるところだった。


「そろそろ帰るか」


3階層のキャンプ地に向かって歩き始めた。




「ただいま戻りました」

「テツサン、お帰りー」


キャンプ地に声を掛けるとマルさんが出てきた。


3階層組は狩場のローテンションの一環でキャンプ地誰か1人が留守番することになっている。今日の当番はマルさんだったみたいだ。


「マルさん、ただいま。テツさんは戻ってきてる」

「テツサンならさきさっき戻たもどたよー」

「了解、ありがとう」


人懐っこいマルさんとは打ち解けて、普段通りの喋り方で話せるようになった。他の人も話し方は最初と変わらないがだいぶ気楽に話せるようになっている


マルさんと別れてテツさんの小屋にやってくる。


「テツさん、戻りましたよ」

「入っていいぞ」


返事を聞いて小屋に入る。


「お邪魔しまーす」

「今日はどうだった?」

「今日はハズレが少し多かったですね。とりあえず、これが収める分の魔石です」


リュックから取り分けておいた魔石を取り出してテツさんに渡す。


「おう、確かに。どうだ、ここでやっていけそうか?」

「はい、皆さんいい人たちですし、おかげで自分の小屋も形になりましたから」

「そいつは良かった」

「それじゃあまた夕飯時にきますね」

「おう、またあとでな」




「さてと……」


テツさんのところで温めてもらった夕飯を食べ終え、自分の小屋で一息ついてステータスを確認する。


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 名前:指宿司

 職業:変幻自在のクラフター

  L v :3

 M P:25/25

 STR:12

 VIT:12

 INT:18

 MND:16

 AGI:10

 DEX:24


 スキル

 ・素材鑑定 Lv1

 ・継承 Lv1

 ・付与 Lv1

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「おっ、レベルが上がってる」


レベルが3に上がり、新しくスキルも増えていた。


「新しいスキルは付与か。やっと生産系でまともに使えそうなスキルが出たな」


スキルを選択すると一覧が開いた。火属性魔法、水属性魔法と各属性魔法と無属性魔法があった。そのうちの火魔法を選択すると魔法名が展開された。


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付与

・火属性魔法

 ┣ファイア

 ┗ファイアボール

・水属性魔法

・風属性魔法

・土属性魔法

・無属性魔法

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水、風、土魔法も確認したがウォーター、ウィンド、ストーンと各ボール系の魔法だけだった。

無属性魔法はマナボールとシールドだった。


「お試しでも火は危ないしとりあえず水か?」


水属性魔法からウォーターを選択すると別のウィンドウが開いた。


--------------------

付与:ウォーター

必須素材:

・水属性魔石

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「素材?付与に魔石を使うのか。いや、魔石じゃなくて素材って書いてあるから今後魔石以外が必要になることもあるかもしれないな。水属性の魔石なら1、2階層の魔石が一応水属性だし、次の買い出しのついでに取ってくるか」


他の魔法も確認するとどの魔法も対応した属性魔石が必要で無属性魔法は属性指定がなくただの魔石になっていた。


「風属性の魔石ならあるし今日のところはウィンドでも試してみるか。何に付与するかな……」


何に付与するか考えながら溜めている魔石を取り出すと今日ドロップしたレッサーブラッドバットの皮膜が目についた。


「売っても大した金にならないし、これなら試してダメにしても問題ないか」


風属性魔法のウィンドを選び直して、風属性魔石と皮膜を手に持ってウィンドを『付与』と念じる。


すると魔石が光の粒子になって皮膜に吸い込まれていく。


「……これで付与できたのか?」


光の粒子がすべて吸い込まれたが皮膜には何の変化も見られなかった。


「魔力は減ってるし付与できてると思うんだけど……」


ステータスを確認すると魔力が5減っている。


「付与した魔法を発動するにはどうすればいいんだ?定番だと魔力を込めるとか魔石を触れさせる?」


試しに皮膜をテーブル代わりの段ボールの上に広げ、レッサーブラッドバットの魔石をその上に乗せてみる。


「あれ?……おぉぉ……しょぼっ」


魔石を乗せてみても一見なにも変わらないように見えたが、そこに手をかざしてみると言われてみないとわからないほど薄っすらだが風を感じられた。


「これは素材の問題か、付与した物の問題か、スキルレベルの問題か。どれにしてもこのままじゃ使い物にならなさそうだな。それにこれ、付与した物全体から風が出てるな。」


皮膜と魔石を取ってみると皮膜の両面から風が出ていた。


「ファイアなんて付与したら付与した物が火に包まれて、燃えてなくなりそうだな。それに攻撃魔法付与したらどうなるんだ?魔法の強さだけじゃなくて、付与した魔法を発動させる位置とか方向も問題になるな」


付与の検証でできることを考えていく。

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