第21話

「ひとまずウィンドの付与でできることをまず考えよう」


最初の付与では風属性(微弱)の魔石を皮膜に付与して、わずかな風しか出なかった。


「まず付与した魔法の効果が弱い理由について。考えられるのはスキルレベルが低いこと。そして、魔石の風属性が微弱だったこと、魔石の大きさが小さいこと、この二つは要は素材の質が低いってことだな。あとは付与した物の大きさと付与した物が風属性と相性が悪い可能性もあるか?……あぁ、発動するのに使ってる魔石が原因ってのも考えられるか。微弱とはいえ風属性の魔石だし相性は悪くないはず。魔石の数が足りないか、魔石自体の質が低いか」


付与した魔法の効果が弱い理由を考え、検証方法を考えると買っておいたメモ帳に書き出していく。


「スキルレベルはレベルが上がるまでひたすら付与を使ってみるしかないからひとまず置いておく。素材の質が悪かったことについては継承で風属性(弱)の魔石を作って別の皮膜に付与すれば属性の強さについては比較できるな。魔石の大きさについては比較できるくらい大きい魔石を用意してそこに継承で風属性を付けるか。魔石はどこかで買えるかな?」


思いついた検証方法と問題の解決策をメモに書き加えていく。


「付与した物の大きさは皮膜を切って小さくしてから付与すればいいし、相性についてはスライムグミでも取ってきて付与してみるか。いや、相性という意味だと風属性と相性が悪い属性を調べてから考えた方が良いな。あとはダンジョン産以外の物に付与した場合も調べた方がいいか?発動させるときの魔石は数に関してはいくつかまとめて使ってみればわかるな。魔石自体の質はこれも魔石を狩って来るしかないな」


一応ぱっと思いつく限りは洗い出せた。


「次は発動位置と指向性か。ただこれについては全く案が浮かばないんだよな……。付与するときに発動位置と指向性をイメージしてみるくらいか?あとは付与したあと筒の中に組み込むとか1方向だけ向くように固定すれば……いや、固定した面で魔法が発動して暴発でもしたら大変だからなこの方法は最終手段だ」


発動位置と方向についてはいくら考えてもこれといった案が浮かばなかった。


「課題と解決方法はこんな所か。さっそくすぐできる所から手をつけていくか。今できるのは風属性(弱)の魔石を作ることと、皮膜を切って付与することか。あとはイメージで発動位置と指向性を付けられるか」


今できる内容を試すとあっさりと分かり易い結果が出てしまった。


「弱の魔石を使う、皮膜を4分の1にするどちらで作っても若干効果が強くなったな」


皮膜に手をかざすとハンディ扇風機の微風くらいの風量を感じる。


「つまりより良い素材を使った方が良いし、付与する物は小さい方が良いってことか。……いや、この場合付与した魔法が効果を発揮する範囲が小さい方が良いってことも考えられるな。発動する面を片面だけに絞れれば比較できるんだけどな。……とりあえずイメージしてやってみるか」


微弱の魔石と4分の1に切った皮膜を手に取り、皮膜の片面からだけ風が出るようにイメージをしっかり固める


「『付与:ウィンド』」


光が吸い込まれ、付与が完了した。魔石を乗せてみると皮膜の両面から風が吹いたが、片面の風は弱く、風が出るようにイメージした側はわずかに強くなった。


「完全ではないけど指向性はつけられたな。付与する時のイメージが影響するのは間違いなさそうだけど、完全に指向性を付けるにはもっとイメージ力をつけるかスキルレベルが上がらないとダメそうだな」


残りの魔石の数を確認して、この日の付与の実験はここまでにした。

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