第22話

付与が使えるようになってから3日。


魔石はなるべく買取に回して稼がないといけないので、付与の実験はその日のドロップ量を見ながら少しづつやることにした。


実験の結果、初日に分かったより良い素材を使ったり、魔法発動範囲を小さくするように付与すると魔法効果が強くなることに加えて、発動位置も付与発動時にしっかりイメージすることで付与に反映されることが分かった。ただ、発動位置は付与する物から1㎝程度まで離した位置で発動することができたがそれ以上は無理だった。だがこれでファイアを付与しても付与した物が燃える心配はいらなさそうだ。


また、発動させるのに使う魔石は微弱より弱の魔石を使った方が効果が強くなり、魔石1つより複数使えばこちらも効果が強くなった。だが、魔石を複数使う場合は微弱の魔石なら3つまで、弱の魔石なら2つまででそれ以上は変わらなかった。

どちらの場合でも効果の強さは体感的に一緒だったので付与した魔法効果の出力上限がここってことだろう。


ついでに付与した魔法の発動に使った魔石は端からだんだんと灰色に変わっていき全体がそうなると魔法が止まることも分かった。


「弱の魔石を作るのに結構微弱の魔石を消費したから今日の買い出しではあまり食料を買い込んでこれなかったけど代わりにこれを用意できたからな」


少しだけウキウキとした気持ちで用意した物をテーブル段ボールに広げる。


「買い出しの帰りにさんざん狩ってきたからな。今後、買い出しで水を買わなくてもいいくらいの物ができるといいんだけど」


取り出したのは今日の買い出しの帰りに狩ってきたスライムの魔石多数と買い出しで用意した水タンク、漏斗、取ってが付いてない茶こしだ。


「全部100均とはいえ、あまり余裕がないこのタイミングでこの3つを買うのは厳しかったな。おかげでしばらくは節約生活だ」


そう呟きながら袋やラベルを剥がして、タンクに漏斗をセットしておく。


「次はこっち」


鼻歌交じりにスライムの魔石を手に取ると継承を繰り返し、水属性(弱)の魔石を作る。


「メッシュの部分から出るようにイメージして……『付与:ウォーター』」


水属性(弱)の魔石が茶こしに吸い込まれて消えた。


「水の出はどうだ?」


茶こしを漏斗にセットしてそこに水属性(微弱)の魔石を乗せる。


チョロチョロチョロチョロチョロチョロ


「おぉ~、出てきた出てきた!」


茶こしが魔石に反応して水を出すとそのまま漏斗を通して水タンクに流れ落ちていく。


「最初の問題は微弱の魔石1つでどの位水が溜まるかだな」


様子を見ていると魔石が端からだんだんと灰色に染まっていき30分ほどして完全に灰色に染まり切ると水が止まった。


「500mlより少し多い位か?スライムの魔石が1個50円だから、1個でこれだけ溜まるなら時間は少し掛かるけど使い物にはなりそうだな。次の問題は飲める水かどうか……。味は何の問題も無いな。様子をみながら少しずつ飲んで腹を壊さなかったら飲み水として使えるな」


ペットボトルに移して少しづつ飲みながら様子をみたが体調に問題はなく飲み水として使用できた。


「あとは他の魔石でどのくらい溜まるかと魔石を複数使った時の出力と溜まる量を確認だな」


結果レッサーブラッドバットの魔石だと出てくる水の勢いは若干弱く、だが少しだけ長く出続けたので溜まった水の量はほとんど変わらなかった。


レッサーブラッドバットの魔石は1個75円だからスライムの魔石より少し効率が悪いが、買い出しで水を買ってくる手間を考えると悪くないかもしれない。なんなら買い出しの時にスライムの魔石を補充するようにして、それ以外の魔石は水が足りない時の緊急用という扱いでもいい。


魔石を複数使った場合には一度に出る水量は増えたが、最終的に溜まった水の量は魔石1個あたりで考えると変わりはなかった。


「しばらく使ってみて、問題なさそうならテツさんに売り込んでみるか」


だんだんと自分がやりたかったことができるようになっていくのが楽しくて思わず笑みがこぼれた。

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