第3話

「さてどうするか」


公園まで戻ってきてベンチに座る。


「周りの環境からするとここは日本とほとんど変わらない。異世界は異世界でもパラレルワールドって認識でいいよな。」


もしも地球にダンジョンが出来ていたらという並行世界パラレルワールドそう認識してこれからのことを考える。


「現代日本で家無し、金無し、身分証無し。これ詰んでるんじゃないか……。」


どう考えても詰んでいるいるこの状況。おそらく戸籍もないだろう。警察に助けを求めるにしてもなんて言う?記憶喪失のフリか、異世界の日本から来ましたとでも言うか?悪ふざけと思われてまともに対応してくれないだろし、仮に対応してくれても捜索願が出されてる人のリストと照合されるくらいでリストに名前があるわけがないから何をしてくれるかもわからない。ヘタすれば精神異常者扱いで病院行きの可能性もある。いくら衣食住に困らないとはいえそれは勘弁だ。


「そうするとなるべく人に頼らずに自力で生きていくしかないか。しばらくは橋の下かどっかでホームレス生活だな。寝るところはどうにでもなる。問題は金だな。」


金が無ければ食べる物も用意できない。最悪窃盗なんて犯罪に手を染めることになりかねない。


「そういえば夢だと思ってたあの内容が現実なら生産系スキルがあるはず……。それで何か作って売ることができれば。それならまずスキルを確認しないとな。定番なのはこれか?『ステータス』。……何も起きないな」


転生物定番のキーワードを口にしても何も起きず、恥ずかしくなってくる。それから『ステータス・オープン』や『鑑定』などステータスを確認できそうなキーワードを口にしていくが何も起きなかった。


「う~ん……。いきなり人に声かけて聞くわけにもいかないし。何か教本でもあればいいんだけど。そうだ、図書館に行ってみるか。コンビニ雑誌があるくらいだし、探索者になるための本とかダンジョンついての本があるかもしれない」


公園を出るとまっすぐ図書館に向かった。


時間はもうすぐ昼になろうとしている。完全に無一文で喉の渇きだけは公園の水道で潤してきたが腹が大きな音を立てた。


「腹減ったな。これでステータスの確認とかスキルを使う方法が分からなかったらどうしよう」


建物の中に入るとカウンターでダンジョンや探索者関連の本のコーナーを確認し、タイトルから何冊か選んで空いてる席に座った。


「まずはこれだな」


最初に手に取ったのは『ゼロから始める探索者生活』だ。見出しから必要になりそうな所をパラパラと読み進めていく。


「まずダンジョンと探索者についてか」


ダンジョンはダンジョン協会によって管理されていて、危険度の高い方からS、A、B、C、D、E、F、G、Hとランク分けされている。Hランクは同意書に署名すればだれでも入れるがGランクからは協会が発行する探索許可証、通称探索者証が無いとはいれない。探索許可証を持つ人を探索者と言う。


「身分証も済むところもないから探索許可証を取るのは無理そうだな。そうすると俺が入れるのはHランクのダンジョンだけか。とりあえず協会と探索者についてはざっと流し読みでいいか」


どんどん読み進めておおざっぱに内容を把握していく。


「次は……あった。ステータスについてだ。え~っと……」


本によるとステータスとは身体的、精神的な能力補正やスキルや魔法の取得、使用を可能にする能力でダンジョンで初めてモンスターを倒した時に取得できる。


「つまり一度ステータス無しの自力でモンスターを倒さないとダメなのか。」


ステータスの取得は正攻法なら探索許可証(探索者証)取得の際にインストラクター付き添いのもとダンジョンに入って取得するが、探索者証無しでも入れるHランクダンジョンに入って自力で取得する方法もある。


「やっぱり雑誌に載ってた誰でも入れるダンジョンってやつに行かないとダメか。身分証なしで入れるといいんだけど」


さらに読み進めていくとステータスの確認方法とステータスの内容の記載があった。ステータスはステータスを表示したいと念じながら『ステータス』と口にすることで目の前に表示されるらしい。


ステータスにはレベルがあり、ダンジョンでモンスターを倒すことでレベルが上がって強化されるが、Hランクダンジョンに潜り続けていてもレベルは5までしか上がらない。レベル5のステータスは平均でアスリートクラスの身体能力と同等となる。


「やっぱりHランクに潜り続けてても強くはなれないんだな」


閉館時間まで集めた本を一通り読み、おおざっぱに内容を把握して図書館を後にした。

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