第9話

「元の世界だとこの辺りに100円ショップがあったんだけど……。これか?」


そこにはビルが丸ごと100円ショップの建物が建ち、『ダンゾー』と看板が掛かっている。


「一度にあれこれ買い揃えるのは予算的に難しいし、とりあえずすぐに必要な腕時計とリュックだけ買うか。あとはスーパーに行くのにちょうどいい時間になるまで色々見て使えそうな物を確認しておこう」


店に入るとカゴを取ってひとまず、腕時計を探す。


「あったあった。値段は100円、300円、500円か」


値段と機能を一つ一つ確認していく。手持ちは昨日の残りと合わせて3000円弱。今晩の弁当と明日の朝昼のご飯を買うことを考えると2000円は残しておかないといけない。そうなるとここでの軍資金は1000円にも満たない。


「う~ん……。500円のは軍資金的に論外として、100円のは安くていいんだけど時間を表示するだけで他の機能は無し。300円のは見やすくなるバックライトの他にもストップウォッチとアラーム機能まで付いてると。ダンジョンの中は洞窟だけど一応見えてるしバックライト無しでも見えるか?アラーム機能があれば帰りの時間をオーバーすることもなさそうだし」


さんざん悩んだ結果300円の腕時計をカゴに入れた。


「次はリュックだな」


リュックのコーナーは3階のようなのでエスカレーターで上がっていく。


3階に上がると目的のコーナーはすぐに見つかった。こちらも材質や形状によって値段が100円、300円、500円に分かれている。


「とりあえず100円のは無しだ」


100円のは巾着の口を絞る紐がそのままリュックの肩紐になるタイプで手提げのビニールよりマシ程度でわざわざ買うほどの物じゃない。


300円の物はキチンとリュックとして認識できる、上部が丸く、正面から見ると山型食パンのように見える形状だ。上部に大きい口が一つと正面にポケットの口が一つ。さらに側面にはペットボトルなんかを入れられるようなネットのポケットが一つ付いている。肩ベルトはちゃんと長さが調整できるようになっている。


500円のは300円のと形状は一緒だがこちらの方が一回り大きい。


「300円のは薄くてつるつるした素材で500円のは300円のと同じ素材のリュックとスウェットっぽい素材の2種類か。スウェットっぽいのはほんの少しだけど重くなるし、つるつるした素材のどっちかだな。500円のやつを買ったとしても時計と合わせて880円で一応ギリギリ予算内か。この先持ち歩くものが増えるかもしれないし少しでも大きい方がいいか。」


500円のリュックをカゴに入れるとこの先どんなものが必要になりそうか?100円ショップで揃えられるか?そんなことを考えながらスーパーに行くのにちょうどいい時間になるまで店内を見て回った。





「ごちそうさまでした」


昨日と同じ橋の下で夕食を済ませると今日の振り返りをしながら今後について考え始める。


「ひとまず、昨日今日と丸一日ダンジョンに入って食べていくだけなら問題ないことが分かった。ただ1階層を独占できなかったら稼ぎが減って2階層にも……っていうか昨日今日と誰とも会ってないな。せっかく誰でも入れるのに何で誰も来ないんだ?」


昨日も今日も食べていくだけなら問題ないだけの稼ぎはあった。ただし、それは1階層を独占して狩り尽くすことができたからだ。2階層以降に向かう人、そこから出てくる人どちらとも会っていない。


「受付の人に聞いて事情は分かるか?聞くだけ聞いてみるか。とりあえず明日明後日は1階層回りだな」

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