第14話

翌日。


3階層のグループへの手土産を用意すると最短ルートを通って3階層へ降りてきた。買取窓口の人の話によると移動や狩場の割り当てが平等になるように3階層の中央辺りにキャンプ地を作ってるらしい。本来泊まりがけでダンジョンに潜る場合は階段を下った場所、つまりその階層の開始地点にテントを張るらしいが、こういうこと中央をキャンプ地とするができるのはこのダンジョンがHランク故だそうだ。


「地図によると……こっちだな」


今回は最短でキャンプ地へ向かうため3階層の地図を購入してきている。


地図で道を確認しながら最短ルートでキャンプ地へ向かう。


「あ~、やっぱ戦闘無しで行くのは無理か」


しばらく進んで行くと正面からウサギがピョコピョコ跳ねながらやってきた。しかしその大きさは2階層のウィップトードとほぼ同じである。


このウサギはヘッドラビット。目元に影ができるほど大きく出っ張った額を持つウサギで攻撃方法はスライムの体当たりと同じような速度の突進でその大きく膨らんだ額で頭突きをしてくる。


「頭は堅いからカウンターは狙わずに、頭突きを躱して後ろから首筋を切りつけるのが基本。だったか」


ヘッドラビットが近づいてきて突進の姿勢になったのを見逃さずに身構えてサッと横にズレると立っていた所をヘッドラビットが通りすぎていった。


「よっと」


すぐに振り返り、首の後ろにナイフを突き立てる。離れながらナイフを抜き去ると傷口から血が噴き出し、ビクビクと数回痙攣すると黒い霧となって消えていった。


「魔石がドロップしたか。これは3階層に住んでるグループに渡すか」


魔石を拾うとここまでのドロップ品と混ざらないように別の袋に分けてカバンにしまっておく。


「途中でこの辺りで狩りをしてる人に会えるか?」




しばらく歩いていくと通路の壁沿いに橋の下にありそうな段ボールハウスが並んでいる場所が見えてきた。


「あれがキャンプ地か。結局誰にも会わなかったな。すいませーん、誰かいますかー」


特に見張りが立ってる様子もなかったので近づきながら声を掛けると真ん中あたりの段ボールから白髪交じりの長髪を後ろで束ね、無精ひげを生やした4~50代くらいの男が出てきた。


「あぁ?誰だ?」


「突然すいません。私も最近こちらのダンジョンに潜るようになったので、こちらで寝泊りをするグループに加えてもらえないかと相談にきました」


そういうと男は眉を寄せて訝し気にこちらを見た。


「こちらはひとまず挨拶代わりといいますか、手土産を持ってきたのでこちらのグループの皆さんで分けてください」


リュックから缶ビールとツマミになりそうな缶詰が入ったビニール袋を差し出すと男はひったくるように受け取って破顔した。


「なんだ、わかってんじゃねぇか。よし俺んとこ来い!とりあえず、話だけは聞いてやる」


そういって男は俺の肩に腕を回すと先ほど出てきた段ボールハウスに向かって歩き出した。


この缶ビールと缶詰で少しずつ貯めていたほぼ使い果たした。これでここでの寝泊りだダメになったら今晩はひもじい思いをして明日から2階層で少しずつやるしかなくなる。


俺は気合を入れてこの男の段ボールハウスへ上がりこんだ。

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