第6話 道三を味方にする戦略
三郎信長と斎藤道三は、
濃姫が
信長の父・信秀が、尾張の織田一門をひきいて西の斎藤道三、東の今川義元と覇を競い、合戦に明け暮れていたのは、すでに述べた。
その信秀にとって、やはりいちばんの強敵は、駿河の今川である。当時、今川領は百万石に及び、四万前後の動員兵力を誇った。しかも、義元は尾張を攻め取るために、北方
美濃の道三にとっても、今川が脅威であるのは同じである。尾張が今川領となろうものならば、
この両者の利害関係が一致したことにより、秀信と道三は
信秀の死は、その矢先に起きた思いがけぬことであった。
尾張の虎の死を聞き、道三は急に不安になった。緩衝地帯の尾張を守ってくれるはずの
道三は信秀の死をきっかけに、信長と会って、大うつけの評判がそのとおりか、否か、自分の目で実際に見定めてみたいと考えた。
果たして、信長の器量たるや――。
策略家の道三は、正徳寺の会見の前に、婿がどんな格好で来るのか、冨田の町はずれの小屋に身を隠し、信長の行列を待ちうけた。
すると、信長が噂どおりの
道三は先頭をゆく信長の
しかし、その信長のあとにつづく八百余の兵の隊列を見て、道三の怒りの感情は、驚愕へと変化した。信長を
通常、この時代の槍は二間半(約四・五メートル)であったが、信長の兵は三間半(約六・三メートル)あったのだ。当たり前だが、槍は長いほど重い。それだけに使いこなすのがむずかしいのだ。
つまり、兵に長い槍を持たせるには、合戦時の訓練がよく行き届いていることを示すものであった。
さらに、である。
この当時、まだ珍しかった鉄砲隊まで伴っているではないか。しかも、火縄をくすぶらせ、いつでもぶっ放せるようにしているのだ。いつマムシの道三に奇襲されようと、即、戦える臨戦状態であった。
――こいつは手強い。
道三は内心
その道三を信長は、正徳寺の対面で再度、唸らせようとしていた。
マムシの道三を
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