第3話 真の敵を見定める
父・信秀の葬儀に、信長が現れたとき、
いつもながらの一重の
しかも、焼香するどころか、何やら甲高く
一同、驚きのあまり声もない。
信長は仏前から
それは、信長が
弟の信行も負けじと兄を睨み返した。
その視線には、織田家の家督を継ぐためには、この兄の首を刎ねるしかあるまいという決意が秘められていた。
お互いの目から殺気がほとばしり、冷たく宙でぶつかった。
そこに居並んでいた重臣の林佐渡守、佐久間信盛、柴田勝家らは、このとき大うつけの信長では織田家はあやうい。信行の側について織田家を存続させるしかあるまいと、目を見交わしあった。
――織田家の大うつけ、父の葬儀で
この噂は、たちまち
左馬助も信友も、信長を大うつけと侮り、信秀という大きな
信長はこれを自分の親衛隊を中心とする手勢で撃退したが、相次ぐ戦いで不良仲間ともいうべき家臣らの多くが討ち死にした。その悲報を聞くたびに、信長は周囲をはばかることなく
――三郎さまが泣いておられる。われらのために泣いておられる。
小姓組を中心とする親衛隊のだれもが、このとき三郎信長こそわが命を賭けるべき主君と
信長は多くの犠牲を払ったものの、今後、まず攻め滅ぼすべき相手をはっきりと視野におさめることができた。
まず尾張第一の堅城たる清州城を手に入れ、次に家督を狙う弟の信行を殺し、さらに駿河の
そのためには、一歩たりとも
信長は自分を励ますがごとく叫んだ。
「われをうつけと侮る
十九歳の若き主君の
生まれ落ちたときから、信長は母親の愛を知らずに育った。ともに戦ってくれる仲間だけが、生死をともにしてくれる親衛隊といるときだけが、深い孤独を忘れさせてくれたのである。
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