第14話 天下取りは復讐である
三郎信長は桶狭間で今川義元を討ち破った。
この戦国時代、通常なら父を討たれた男子はすぐさま仇討ちの兵を挙げねばならない。なのに、今川家の家督を継いだ義元嫡男の
今川家の氏真は
これを見て、幼少から今川家の人質となり、長じては戦いの最前線に立たされつづけた松平
東方からの脅威は除かれた。
信長は西に目を向けた。
上洛し、天下をうかがうためには、まず美濃を攻略せねばならない。
当時、美濃一国は、信長の岳父であり、おのれの父である斎藤道三を攻め滅ぼした
信長は美濃を攻めながら、着々と天下取りへの布石を打ちつづけていた。
背後の武田
そして、永禄十年、ついに信長は斎藤龍興を追い、美濃を攻略した。さらに余勢を駆って北伊勢にも侵攻して、これを
都合のいいことに、畿内の
この頃、尾張、美濃、北伊勢を領有し、松平元康と同盟した信長の最大動員兵力は六万を超えていた。しかも、北近江の浅井家とは同盟関係にある。いまなら天下を取れる、間違いなく取れる。
――
信長は心の中で絶叫した。
十九歳で天下を望んでから、十五年以上の歳月が経過していた。
信長は二度、三度、心の中で叫んだ。
――見返してやる。すべての人間を見返してやる。
――人を見る目のなかった奴らは、おのれを
信長は、叫びながら、この十五年の合戦のすべてが、愚物どもに対する
しかし、その信長にもひとつだけ大きな不安があった。それは、上洛軍六万の挙兵に対する正当性である。たとえ天下を武力で取っても、権力の
さらに、である。
このときの足利将軍は、三好家に
信長の上洛は、大義名分なき
そうした不安と危惧を抱える信長の前に、一人の男があらわれた。帰蝶こと濃姫の
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