第16話 愚劣なこの世をぶっ壊す
信長は六万の大軍をひきいて電光石火、上洛の途についた。
案の定、南近江守護の六角
これを
無論、将軍
しかし、三好三人衆は松永
しかも、折も折、将軍義栄が背中に
一方、義昭は義栄死後、まもなくして征夷大将軍に任じられ、
ところが、
信長は、義昭を将軍に就けた最大の功労者でありながら、参内さえ許されないという現実に直面し、内心激しく憤った。
――下らぬ。愚劣きわまるこの世をぶっ壊してやる!
幕府も寺社の権益もすべて破壊して、世の中を刷新してやる。理屈に合わぬこの世の道理すべてをわれが正してやる。見てるがよい、と信長は決意した。
その不機嫌な信長を見て、義昭がおずおずと申し出る。
「
言下に、信長はこの申し出を拒絶した。
「この三郎は無位無官で結構でございまする」
足利家の血筋の上にあぐらをかいている、こんな凡愚の男の
天下布武をめざす信長は、義昭なんかに構っていられない。
尾張、美濃、伊勢に睨みをきかせるためにも、その頃、居城となっていた岐阜城へさっさと引き揚げた。
その隙をついて、三好三人衆や美濃を追われた斎藤
これを明智光秀、細川藤孝らが奮戦の上、追い払ったが、あやういところであった。
急を聞いて、岐阜から入京した信長は、新たに
信長は義昭を内心馬鹿にしていたが、天下布武のためには、まだまだ利用価値のある道具であった。その道具を失うわけにはいかない。
二条御所造営の陣頭指揮に当たっていた信長に、比叡山延暦寺から
追放した六角承禎の所領である南近江には、延暦寺の所領が多数存在していた。延暦寺はその広大な所領を背景に、莫大な富をたくわえ、山法師と呼ばれる数千人の僧兵を擁していた。
もちろん、近江の支配を重視する信長が、延暦寺の申し入れに応じるはずもない。どころか、信長は延暦寺に対して極度の不快感を抱いていた。
延暦寺は
――
この怒りが、のちに起きる比叡山延暦寺焼き討ちの伏線となっていたのである。信長は権威を笠に着る、いかがわしい宗教が大嫌いであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます