第9話 お買い物

 登録が終わったんで、次は装備を揃えよう。


「アレックスさん、武器や鎧を売ってる店でお薦めありませんか?」


「ローデリア商会と付き合いのある店なら何軒かは」


「アレックスさんお薦めなら問題ないでしょ。お願いします」


 異次元ポケットに鎧はなかったから買わなきゃいけなかった。


 剣はあったんだけど、これがまた・・・。一見すると普通の剣なんだが、手に持ってジッと眺めると独特の雰囲気を漂わせていて、妖気とういうか邪気というかがダダ洩れなんです。絶対、普通じゃない。これ魔剣とか妖刀とか言う奴だろ。小屋の外で試しに軽く振ったら、そこそこ太い幹の木が倒れたよ。見事なまでのポンコツ仕様だ。


 くっ、そこはせめて神聖な光に包まれた聖剣的な物にしろよポンコツ。こんな物使ったら魔王にされかねん。


 案内された店はこじんまりとしているが品揃えが良さそうな店だった。


「よう、アレックス。珍しいな。今日はどうした?」


「彼に剣と鎧を見繕って欲しいんだが」


「あいよ、任せな。よう、兄ちゃん。俺はマルロだ。どんなのが欲しいんだい」


「はじめまして、ジンです。今ギルドで登録してきたんですが何も装備が無くて。できれば鎧は軽くて動きやすい物を。剣も小振りでも切れ味優先でお願いしたいんですけど」


「なら、そこの革鎧がいいな。北の森のオーガの革だからオークよりは高くなるが丈夫だし軽い。火や水にも強いしな。肩当てと立て襟は鉄製にもできる。剣はそうだな・・・。切れ味ならこいつはどうだ」


 後ろの棚から持ち出したのはシミターのような独特な反りのある剣だ。


「片刃だが切れ味は保証する。ちょっと短いかもしれんが、その分軽くて取り回しは楽だぞ。新人ルーキーには剣も鎧も少し高いかもしれんが、ここはケチらない方がいい。長く使えるから結果安く上がるはずだ。持ってきてくれればウチで整備もやってやるしな」


 鎧を身に着け、剣を軽く振ってみる。うん、いい感じだ。これなら移動にも問題なさそうだ。元々、荒事は超能力で片付ける予定だから、機能は重視する必要はないけど見た目は大事だからね。一般人を装う為の偽装ですから。


 金額は気にしない。たんまり持ってますから。この世界に来るときにお願いした『預金通帳残高くらいの現金』がありますから。バイト学生の貯金位と侮って安請け合いしてくれたポンコツはどう思ったかな。一億近い残高を見て。くふふ。


 両親が一昨年死んだ。酔っ払い運転のトラックに突っ込まれて。その保険金が入ってます。後見人の叔父には定期やら投資やら勧められたけど、面倒しか感じなかったので普通預金で塩漬けです。おかげで大学にも通えてた。学費以外の生活費はできるだけバイトで稼ぐようにしてたしね。異次元ポケットには千枚近い金貨が唸ってますよ。そりゃ金貨三枚くらい返しますって。


「請求はローデリア商会に回してください。バラン様から言い付かっていますから」


「いや、払いますよ。そこまでお世話にはなれないし」


「いえ、バラン様からは必要な物があれば全て商会の扱いにするように言われていますので。ここは譲る訳には参りません。ご理解ください」


「おいおい、この兄ちゃん何者だい?バランさんの客ならこれも付けてやるよ。世話になってるからな」


 ベルトとダガー三本をオマケしてくれた。しかも商会持ちらしい。再びラッキー。


 一端の冒険者の装いを整えて店を出た。


 ついつい肩で風切って歩いちゃうよ。子供か!

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