第19話 行軍
二日目の朝は早かった。夜明け前に朝飯の準備を始めた。
朝飯っていっても昨日の残りのスープとパン、干し肉。昨夜と代わり映えせんな。ずっとこれなのかorz。
こっそりコーヒーを飲んでたらアレックスに見つかった。
「ジン、それは何ですか?」
ようやく”様”が取れてこなれてきたな。よしよし。
「ん?飲む?おいしいよ」
暖かい黄色と黒の缶を渡す。マッ〇スコーヒーです。この甘さが好きなんだよ。
それはコーヒーじゃないだろって?商品名に『コーヒー』って入ってるし、チバラギじゃ昔からこれが立派なコーヒーなんだよ。
「…甘い。それにこの香りがなんとも癖になりそうですね」
「だろ。ちょっと中毒性があるから飲み過ぎるとヤバいぞ」
特に尿糖が。シャレにならんから。
飲み終える頃にはみんなも準備が終わって、ほぼ日の出とともに行軍を再開した。
「よう、ジン。昨夜は寝られたか?」
マットが声を掛けてきた。昨日は先鋒だったが今日は
「ああ、マット達がしっかり見張ってくれてたおかげでグッスリだ」
「これだけ腕が立つ奴らがいると見張りも楽なもんだ。この辺じゃ人の気配で逃げる獣の方が多いしな。でも今日はそうはいかねえぞ。森の木の様子が変わってきてるだろ」
言われて辺りを見回すと確かに森の様子が変わってきている。上に真直ぐ伸びていた木々が妙にグネグネと曲がりくねっている。
「この先はどんどん魔素が濃くなるから出てくるのは角有りか魔獣だ。油断してると一発であの世行きだから気を付けな。まあ、これだけ人数が居るから、そうそう出てきやしないだろうがな」
「
言ったそばから出ました。人はそれをフラグと呼ぶ。おいマット、余計な事言うな。
「初撃は任せろ」
言うと同時に飛び出したのは4人組のパーティー”剣の舞”。こいつら剣士3人に魔法士1人で超攻撃的編成の脳筋パーティーだ。よく四つ星まで生き残れたな。
だが言うだけの事はあって一瞬で5匹を屠る。
この群れは見えるところで13匹。前衛を抜けた8匹が本体に迫るが”月影”と”赤き地平”は落ち着いて削っていく。俺たちのところにも一匹来たけどマットがキチンと仕事しました。いや、フラグ立てたのお前だから責任取って回収しただけか。
「魔石だけ抜いて早くここを離れよう。血の匂いで
魔獣は魔石を体内に宿している獣。どんなに大きくて強くても魔石が無ければそれは只の獣だそうだ。
その後、二度ほど
小鬼はホントに害しかなくて魔石もない。討伐証明は右耳ってグロいでしょ。月影のかわゆい女性二人も談笑しながら耳切り取ってるのは異世界感満載の光景だな。
二回目の遭遇を終え行進を再開してすぐに斥候に出ていた一人が戻ってきた。月影のサティとかいったかな。
「この先2キロに集落を見つけたわ。ガルドが見張ってるけど予想より大きいわよ。ざっと見ただけで100は超えてる。森に出てるのも数えれば200を超えるかもしれないわ」
「200だと。ギルドの情報の倍じゃないか。このたった何日かでそこまで増えたのか。この戦力じゃ難しくなったな。ガルドを呼び戻してくれ。ここで一度協議しよう」
「分かったわ」
サティは身軽に再び森の中に消えた。
斥候の二人が戻るのを待って始まった話し合いの結論は決行。
今、集落に居るのが100前後なら今の戦力でいけるだろうということになった。
夜中に一網打尽を狙うには数が多すぎるので、暗くなる前に集落を制圧して、三々五々森から戻ってくるであろう集団をその都度殲滅していくのならこの戦力でいけると結論付けたようだ。
そう17人全員でかかるのだ。当初は俺たち戦力外の荷物持ちの護衛に残る筈だった二人も戦いに参加してしまう。つまり俺たち戦力外も自衛するしかなくなった訳だ。
まあ俺とアレックスは問題ないだろうけど残りの三人はなぁ。体はそこそこ大きいけど12、3歳の子供が二人と隻眼のオッサンが一人だ。子供は俺と同じ一つ星だし、オッサンは三ツ星らしいが片目を失って前線からのリタイア組のようだ。
俺たちは所詮オマケで作戦への発言権も拒否権もないから従うしかない。できれば現場で安全に戦闘の様子を見たかったんだが、何とかできんかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます