第46話 計画
「時間かかってるね。揉めてるのかな?」
「どう考えても話を聞いて『はい、そうですか』とはならねえだろうよ。普通なら与太話だと相手にもされねえような内容だからな」
「この調子で王都なんか行ったらもっと面倒臭そうだよね」
「当たり前だろ。だが全部、非常識なお前が悪い。俺まで巻き込みやがって」
「あっ、ズルい!勝手に砦に残ったのはマットだろ」
「そりゃそうなんだが王都にまで引っ張って行かれるとは普通思わんだろ」
「まっ、いいか。なるようになるでしょ」
「軽っ!王様に会うかもしれないのに軽っ!」
二人がそんな緊張の欠片もない会話をしていると部屋の扉が開いた。
「二人とも待たせて悪かったな」
「いえ、そんなことはございませんのでお気になさらず」
そう言いながら部屋に入ってきたルカとロベルトにジンとマットが立ち上がり頭を垂れる。
おお、マットがちゃんとしてる。 byジン
「さて、砦での話はソーンバーグ伯爵から聞いた。ジン、ご苦労だったな」
「いえ、滅相もございません。侯爵様の依頼に応えただけの事ですので」
お前こそ誰だよ byマット
「そうか。それよりもいつもの調子でよいぞ。
「ルカ様…」
ロベルトがちょっと困った顔でルカを見る。
「そんな事よりも、王都に向かう前にお前に聞かねばならんことがある」
部屋の空気が緊張する。
「ジン、お前は渡り人ではないのか?」
「渡り人?それはどういう…」
言葉の意味が分からず思わず聞き返す。
「知らぬか。この世には多くの言い伝えがあってな、その一つだ。異なる世界より訪れ、この世にない知識や技術を授けるとされている者の事だ。同時に渡り人は強力な魔法の使い手でもあるとされている。お前の振るった力は渡り人とでも考えなければ納得できん力なのだよ」
なるほど。つまりは
あの女神、迷惑過ぎる。そしてポンコツ過ぎる。
さて、どうするか。
既に面倒な事態になっている訳だが、これを認めるべきかとぼけるべきか…。
「私は気が付いたら森の中にいました。その前の記憶はないので異なる世界から来たのかは自分でも分かりません。力は最初から使えてましたけどこれも理由は分かりません」
力が使えないのは色々不便だし、もう見せちゃってるから仕方がない。
異世界の知識云々は下手に期待されても困るので知らんぷりしときましょ。
記憶がなければ諦めてくれるよね。(やっぱり小賢しい)
「侯爵様にお会いしたのは周りの様子を探ろうと森を出た日の事でした。申し訳ありませんが私がはっきり言えるのはそこからだけです。ですので私がその渡り人であるのかどうかも私には分かりません」
「ふむ、記憶がないのか。ならば却って都合がいいかもしれん」
えっ、そっちに行っちゃうの!
『ならば仕方がない』で終わりにならないの?
渡り人認定されちゃうの?
「確かに。教会にその出自を問われても記憶がないで押し通せるかもしれません」
ロベルトさんまで。
教会なんかに関わりたくないんですけど。
「いけるな。ジン、改めて頼もう。その力、使徒様の力として王国に貸してもらえぬか」
ええーっ!渡り人通り越して使徒になっちゃうの!!
汎用人型決戦兵器に倒されちゃいそうだから嫌だって
『あんたばぁ〜かぁ〜?』って返されたけど。
「いきなり使徒様は恐れ多いのではないかと…」(本物だけど)
「ジンと初めて会った時に私が王都に向かっていたのは、巫女である孫のメリルが受けた『女神の使徒様が降臨した』とういう神託を王に伝えるためだったのだよ。
まさかその道中で使徒様に相応しい力を持つ者と巡り合うなどとは思いもしなかったがな。これが運命と云う物なのだろう」
神託!
やっぱり
くっ、こんなとこでフラグ回収図るとは侮れん。
はぁ〜、俺の自由でキャッキャウフフな異世界ライフが遠のいていく(泣)
「そんな大それた事はできませんよ?」(本物の使徒だけど)
伯爵とマットのジト目が酷い。
「いや、その力が本当に使徒の力であるかどうかは問題ではないのだよ。私達にはそれを見定める術はないのだからな。今は力を持った者が使徒様として現れるという事が重要なのだ。それだけで魔族の侵攻に怯える民がどれだけ安らげる事か。人の心を救うためには必要な事なのだよ」
やっぱり〇完計画じゃねえか!
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