第3話 人を探すぞ

 一通り思いつく能力を試し終わると腹が減ってる事に気付いた。そういや朝飯食ってない。


 因みに試験結果は概ね良好。俺の想定した能力は使えるようだ。髪の色は緑か青にしてもらった方が良かったかも。何だポンコツ、やればできるじゃん。


 小屋に戻って食べ物を探すが何も出てこない。ふむ、森で探さなきゃならんのかと諦めかけた時に異次元ポケットに水があったのを思い出した。


 手を突っ込んでみると現れたリストには水だけじゃなくお茶やスポーツドリンク、炭酸飲料、果ては缶ビールや缶チューハイなんてアルコールまである。他にもおにぎり、サンドイッチ、のり弁、牛丼、ミートソースパスタに焼うどんetc、etc・・・。


 これ、俺がバイトしてたコンビニのじゃね?だって〇ァミチキってあるし。


 やっぱりあいつはポンコツだった。一瞬でも褒めてしまった自分を恥じる。こんなもの異世界に持ち込んだらどうなるかなんて1ミリも考えてないのが丸わかりだ。しかし今回は都合のいい方に外れてたんで勘弁してやろう。コンビニ弁当は神だ。


 小枝で弁当を食べながら次はどうするか考える。


 箸がないことに気付いたのは弁当の蓋を開けた後だった。勿論フォークやスプーンもない。おにぎりなら箸は要らないけど、もう弁当の蓋開けちゃってるし、捨てるのはもったいないから小枝で箸擬き作って食べてます。箸を創る超能力なんてありません。さすがポンコツ様だ。もはや感心しちゃうよ。クソッ、また折れた。


 食べ物や飲み物があるなら、このままここで立派な引きニートにもなれそうだけど、それじゃつまらんよな。せっかく異世界に来られたんだから多少のリスクを取ってでも世界を楽しまなきゃ。取り敢えず近場の人里探してみるか。


 空になった弁当に蓋をしながら森の奥を見る。この先に道が一本あるのは、さっき遠隔視リモートビューイングのテストで見つけた。人家は見当たらなかったけど、道を辿ればどこかには行きつくだろう。


 空を見上げると太陽は既に中天を過ぎて傾きつつある。結構な時間遊んでたんだな。これじゃあ道に出てもすぐに陽が暮れそうだ。力ももう少し試したいし、出発は二、三日後の朝一にして今日は諦めるか。


 そして俺は力の確認作業を続けることにした。




「くぅー、今日もいい天気だ」


 小屋の扉の前で伸びをしながら朝の森の空気を吸い込む。既にこの世界に来て五日目の朝だ。硬い寝台で寝るのにも慣れてきた。天気はずっと晴れ。雨は降らないのかこの世界?


 今日はいよいよ人里を目指して出発だ。旅立ちには相応しい天気だと思おう。


 一旦、小屋に戻って中の確認。確認と言っても中に有るのは寝台と布団代わりの麻袋に詰まった干し草。部屋の隅には小さなテーブルと四日間で食べたコンビニ食材のゴミがあるだけだ。驚いたことにポケットから出して消費した物は翌日には補充されてました。配送のトラックでも来るのか?誰が品出ししてるんだろ。


 ここに戻ってくることはなさそうだけど念のため小さな窓の扉も閉めた。荷物は小屋にあった麻袋を加工したザック擬きだけだ。これは異空間ポケットの偽装用に作った。取り敢えず水と食べ物だけが入ってる。


 再び外に出ると遠隔視で道の状況を確認する。人の気配が無い事を確認して瞬間移動を発動。


 小屋と道は五キロ程の森で隔てられている。歩けば一日掛かりだろうが瞬間移動なら正に一瞬だ。


『グチョ』


 道を歩き出そうとしたときに足元の違和感に気付いた。


 路肩にあった糞の上に出てしまったようだ。人は気にしたけどこいつは想定外だ。ってそこまで分からんわ!ポンコツの呪いか!呪いなのか!


 口の端を引き攣らせながら、幸先よく「」が付いたと思い直すことにした。


 道の移動は短距離の瞬間移動や空中浮揚レビテーションでもできるが、最初だし、どこに人の目があるか分からないので歩くことにした。靴底を地面に擦り付けながら。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る