第2話 異世界らしい
目が覚めると、そこは布団の中だった。
ああ、夢だったか。変な夢だったなと目をこすりながら体を起こすと、豊かな木の香りに鼻をくすぐられ周りの違和感に気付く。
「ヘクシュン!グズッ」
俺は花粉症なんだよ。
そこは見慣れない部屋だった。ログハウスのような木肌剥き出しの壁に天井。布団も俺の布団じゃない。というか変な麻袋みたいだ。窓が小さいせいか室内がうす暗い。
『灯りが欲しいな』
寝ぼけた頭でそう思った途端、空中に光の珠が現れ辺りを照らす。
「ウオッ!」
思わず声が出た。
流石に今度はハッキリと目が覚める。マジか。夢じゃなかったのか。
あのポンコツのせいでホントに俺は異世界に転生しちまったのか。
ベッドから跳び起きて、裸足で木の床に立つと自分の身体を確かめる。
パン一でした。恥ずッ。でも全裸よりはマシか。
そんな事より気になったのは腹部に張り付いた白い半円。これはひょっとして。
そっと上部の直線部分を引っ張ってみるとポケットのように口を開ける。中は覗ける範囲では真っ黒だ。恐る恐る手を入れてみると頭の中にリストが浮かんだ。服だの剣だの金貨だの水だの結構な種類が並ぶ。突っ込んだ手が腹に当たっている感覚はない。
うん、これはアレだな。俺がお願いしたヤツだ。ちゃんとつけてくれたんだな。
ありがとう・・・ってなるかーーー!
違うだろ!異世界の収納ってこうじゃないだろ。確かに例えで上げたのはコレだけど、”みたいなの”って言っただろ。”みたいなの”って。
大事な事なんで二回言っとく。
これは”まんま”だよ。”まんま”は色々拙いんだよ。大人の事情なめてんのか。
チッ、寝起きで血圧上がったわ。やっぱりあいつはポンコツだったか。
独りでブツブツと文句を呟きながら、いそいそと取り出した衣服を身に着ける。
目撃されたらかなりアブナイ奴だ。
身支度を整えたら外に出てみる事にした。光の珠がフヨフヨと付いてきたが外では不要なので『消えろ』と念じたらあっさり消えた。
俺が居たのは森の中の小さな小屋だった。小屋の周辺だけ整地されていて、その周りには木々が鬱蒼と茂っている。獣道すらなさそうなんだが。聞こえるのは風に揺れる梢の音だけだ。人の気配はない。
一番望んだ力のテストをしてみる。収納があのザマなんでどうなってるのか不安しかない。あいつ”初めての事”って言ってたし。
まずは目の前の木の枝を見つめ、掴んで曲げるイメージを向けてみた。
『メキッ』と音を立てて風も無いのに枝が撓む。
更に力をこめるイメージで『折れろ』と念じると『バキッ』と枝は折れて地面に落ちた。
続けて落ちた枝を持ち上げるイメージに切り替えると、枝はふわりと空中に浮きあがり俺が意識した方向へ移動していき、思った場所に落ちた。
おお、
次に10メートルほど離れた場所を見ながら『移動』を意識すると、一瞬で景色が変わる。俺は見つめていた場所に移動していた。
これなら他の能力も期待してもいいかもしれない。
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