第54話 茶番劇 その後
「ルカよ、これは一体…」
「ルシアーノ様、私たちは確かにこの国の貴族社会に波が立ち乱れるのを恐れ過ぎていたのかもしれません。
ジッと耐え、変わるのを待つ時は終わったのです。
これからは多少の粗治療を伴ってでもこの国が世界に必要である事を示さねばならくなったという事です」
「それが叶わなければ」
「そうです。使徒様に滅ぼされるのは魔族ではなく我々になるかもしれないのです」
「それでは結果は魔王と同じではないか」
「そうかもしれません。片や蹂躙を楽しむだけのために人を殺し、片や世界を清浄化するために人を殺す。しかし、私たちがこの世界に相応しい在り様を示せるならば共に手を取り魔王に立ち向かえるかもしれません」
「そのためには全ての民衆を救わねばならんのか」
「全てではないでしょう。女神様の教えには『真面目に慎ましく正直に暮らす者の下にこそ安寧が訪れる』とあります」
「しかしそれは全てと変わらないであろう」
「そうかもしれません。しかし残念ながら今はその多くの善良な民が報われない社会になりつつあると言う事でしょう」
「私にそれが出来ると思うか?」
「勿論です。ルシアーノ様は誰もが認める立派な王なのですから」
崩れ落ちた壁から覗く城壁まで広がる街並みを眺め王は決意を口にする。
「よかろう。私たちにどれだけの時間が残されているのかは分からんが、人生をかけて女神に誇れる国を作るのも悪く無かろう。ルカよ、手伝ってくれるか?」
「はい、この身が朽ちるまでお供させていただきます」
ルシアーノ・エリュシオンが王国中興の祖として賢王ルシアーノの名を歴史に残すのはまた別の話。その傍らには常に名宰相ルカ・サルバトーリの姿があったという。
青空に大きな白い雲がのんびりと漂っている。
聞こえてくるのは梢を渡る風の音と、街道に敷き詰められたレンガを踏む蹄の音だけ。
「…てなことがあった訳だ」
『あった訳だじゃないでしょ。何であたしがここに居るのかって聞いてるの!』
「いや、そりゃあさすがに国を護る気ないって言っちゃたし、
『それ、あたしに関係あるの?』
王宮を瞬間移動で抜け出した俺は、侯爵邸の馬小屋で無聊を託つオルフェを有無を言わせず伴い、王都の外に『移動』したのだ。
「一人じゃ寂しいでしょ?旅は道連れ世は情けって言うじゃん」
『どこの言葉よ。聞いたこともないわよ』
「あっ、ひょっとしてイシュトリアと一緒にいたかった?」
『ふん、あいつはハズレよ。二言目には「母様に聞いてみないと」とかいって話にもなりゃしない。とんだマザコンだったわ』
機嫌が悪いのはそのせいか。
『そんな事より、そこまで好き勝手やったなら王様や貴族に狙われたりするんじゃないでしょうね?逃げ回るのは嫌なんだけど』
「多分、大丈夫だよ。もし来ても何とかするし。これでも一応使徒だから」
『あんたが使徒って、明らかに間違ってるわよね?』
「そこは
『で、この後どうするのよ』
「それな!さてどうするかな」
『……あんたが全く考えなしなのだけはよく分かったわ』
「とりあえず隣の国に行ってみよう。そこにも魔族はいるみたいだから。
『結局、魔族とは戦うのね。取り敢えずで倒される相手に少し同情しちゃうわ』
「問答無用で殺しに来るあいつらが悪い」
『そりゃそうだけど。じゃあ、このまま街道を進めばいいのね?』
「そうそう。いざ行かん、ハイヨーシルバー!」
『シルバーって誰!!!』
街道を勢いよく駆け抜ける一人と一頭。
その背中を見送るかのように路傍に咲く小さな花だけが風に揺れていた。
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第一部終了です。
〇ャンプの10週打ち切りエンディングだな。
よければ感想お聞かせください。
続きは構想中。
第二部にタイトル付けるなら
『野良使徒物語 ―超能力でお願いします part2―』
かな。
内容がハチャメチャ過ぎてまとまる気がしない。
公開できるならこのままここに続けて投下していきます。
取り敢えずお楽しみに〜(超無責任)
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