第41話 凱旋

 勿体つけて出てきた割には出オチキャラだったな。

 まあニョロ助だから仕方ないか。(ザルタンです)


 周りを見回すと炎は消え、そこら中に元の形も分からない消し炭どころか灰の小山が無数にあります。


 おっ、魔石が残ってる。ラッキーとばかり魔石を拾いに近づく。


 視線を感じて砦を見ると、防壁の上の回廊で皆さんボーっと立ってこっちを見てます。


 さては俺がネコババしないように見張ってやがるな。(下衆の勘繰り)


 俺がやったんだから貰っていいだろに。


 しかしハイエナが死肉を漁るが如きさもしい姿は見られたくないよな。


 分・か・り・ま・し・た、今回は諦めます。ちぇっ。


 しかし今回は少し疲れて怠いな。


 絶対、あのとんでも魔法のせいだろう。体の芯からゴッソリ持っていかれる感じだったもんな。念のためカーシャ激推しのリ〇D飲んどきましょ。


 とっとと砦に戻りたいが、ここで瞬間移動テレポートでもしようものなら間違いなく面倒な事になるだろう。(無駄な足掻き)


 ふぅ、諦めて歩くか。トボトボ。



 トボトボと砦の門まで辿り着くと、声を掛けるまでもなく大きな観音開きの扉が開かれた。


 扉の内側には大勢の兵士たちが集まって俺の事をジッとみつめていた。


 げっ、勝手に出たから怒ってる?そして捕まっちゃう?

 マズいぞ。これは必殺技を出すしかないのか!


「勝手に出ちゃって申し訳ありませんでした!」


 己の額をこれでもかと大地に擦り付ける。


 The土下座。

 しかも後ろに跳びながら正座の姿勢でダイレクト着地するというオプション付き。

 バックステップフライング土下座。

 脛の下に小石があった時には大惨事につながるG難度の大技だ。

 因みにH難度はバク宙からダイレクト着地するムーンサルト土下座がある。


 謝意を表現する最強のスタイルであろう。どっから見ても謝っているのが伝わるはずだ。

 こんな時は先に謝ってしまえばいいのだよ。(小賢しい)


「俺たちの英雄が帰還したぞ!」


 誰かが大声で叫んだ。


「「「ウォー――!!!」」」


 言葉にならない歓声が空気を振るわせる。


「英雄だ」

「魔族を倒した英雄だ!」

「勇者だ!魔族を討つ勇者の奇跡だ!!」

「俺たちは奇跡を見たんだ!!!」


 口々に歓声を上げる兵士たちの人垣を割って着ぐるみ熊と見間違いそうな黒い鎧のロベルトさんが歩み出る。冑外しても顎髭凄いから熊感は変わらんな。


「何をしているジン。頭を上げろ。良くやってくれた。お前のお陰で砦は救われた。砦を預かる者として感謝する」


 へっ?命令違反で捕まるんじゃないの?


「そんな所にいないで中に入れ。あれだけの魔法を使ったんだから疲れただろう。取り敢えず何か腹に入れて少しは休め。おいライリー、英雄殿を部屋に案内して食事を用意してやってくれ」


「はい」


 名前を呼ばれた少年兵が元気に返事をして俺の前に来た。


「さあ、ジン様参りましょう」


「あ、ありがとうございます?」


 予想外の対応に疑心暗鬼になりながらも立ち上がり、額の土を払い落しライリーの後に付いて、歓声を上げる周りの兵士たちに頭を下げたり握手に応えたりしながら恐縮して砦に入る。いや、背中バンバン地味に痛いし。


 そんなにテンション上げたら後で疲れちゃうよ。


 何か兵士の俺を見る目がキラキラしてる気がするのは気のせいだろうか。特に魔法士。




 案内されたのはいつもの部屋ではなく貴賓室のような立派な部屋だった。


「な、俺が正しかっただろ」


 いつのまにかマットがちゃっかり付いてきている。


「何の事?」


「こっちの方が面白そうだって言っただろが」


「いやいやいや、ニョロ助の相手するの結構大変だったんだけど」


「ニョロ助?何だそりゃ?」


「最後に出てきた蛇みたいな魔族。ああ、ザルタンとか名乗ってた」


「ザルタンだと!帝国の第一皇子軍を壊滅させたザルタンなら賞金首の冷血魔人じゃねえか!」


 蛇なら冷血で間違いではないな、うん。


「同じ奴かは知らないけどザルタンとは言ってた」


「……それよりお前、魔族の言ってる事分かるんだ」


「あっ!」


 マットさん、ジト目の視線が痛いです。


「あっ!じゃねぇ。魔族と話せる奴なんて聞いたこともねぇ」


「でもニョロ助の名前知ってたんだから分かる人いるんだろ?」


「ありゃ、帝国が捕まえて封じてる小悪魔インプから聞き出したって話だ。小悪魔インプは半分妖精みたいなもんで人間の言葉も魔族の言葉も話せるらしいからな」


「ふーん。じゃあ、あの場にも小悪魔インプがいたって事でお願いします」


「またお願いしますかよ。隠すだけ無駄な気しかしねえんだがな」


「まあまあ、そこは長い付き合いって事で」


「何が長い付き合いだよ。まだ一月も経ってねえだろが。まぁ普通なら一生かかっても無理な経験はさせてもらってるけどよ、って濃すぎるわ!」



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