第8話 登録
翌日、宿の食堂で朝飯を食べて部屋に戻ると扉の前にイケメンが立っていた。
「ジン様、おはようございます。本日は昨日お話させていただいた冒険者ギルドへ登録に出向かれますか?」
昨日、宿に案内される途中に身分証の事を相談したらギルドの登録を勧められたんだ。商人ギルドでも登録証を発行してくれるらしいが実績やら保証人やら面倒らしいし、その後に審査もあるから時間がかかるようだ。会費もかかるって言ってたな。
それに引き換え冒険者ギルドは本人の申請だけ。費用も初回の登録費用だけで即日発行してくれるらしい。それだけ出入りが激しくて細かい事を気にしていられないんだろう。新人の半分くらいは一年以内に死んだり再起不能になって引退するらしい。
怖すぎる。
この世界は予想通り命が軽い。街の外には凶暴な獣や盗賊が待ち構えていて簡単に死ねる。だから外に出るときには護衛を雇い、自衛の手段を講じなければならない。当然、金がかかるから俺のように目的もなく外をフラフラしてる奴なんかタダの命知らずなんですって。ヒドイわ、アレックス。
「うん、その予定。場所だけ教えてくれれば一人で行ってくるよ」
「いえ、宜しければご一緒させて下さい。気性の荒い者も多く集まる場所です。万が一がないとも限りませんので」
「分かった。じゃあ、下でお茶頼んじゃったから一緒に飲んでからにしよう」
「はい、ありがとうございます」
冒険者ギルドは街の入り口に近い場所にあった。建物の入り口の観音開きの扉は外に向けて大きく開け放たれている。中に入ると、左手に受付、右手は掲示板、奥は食堂兼酒場のようだ。うむ、予測から1ミリたりとも外れていない。ある意味、見事なり。当然、受付嬢も粒揃いだ。一つだけ空いてる窓口で声を掛ける。
「すいません。登録したいんですけど」
書き仕事をしていたのか俯いていた顔を上げチラっと見られてから無言で紙を一枚カウンターに置かれた。
「・・・ん?」
「ん?じゃないでしょ。申込書を書けって言ってんの。それくらい分かるでしょ普通。それともあんた字書けないの?」
この窓口が空いていた意味が何となくわかりました。しょっぺぇ。美人なのに。
「いえ、大丈夫です。すぐ書きます」
名前に年齢、性別、特技と。特技は魔法にしときました。
「で、何?」
「は?」
「何の魔法が使えるのかって聞いてるの」
「あっはい、火です火魔法です」
「はいはい、火ね。登録料は銀貨三枚、早く出す!」
「はいっ」
慌てて銀貨をカウンターに出す。
「じゃ、その辺で待ってな」
「はっはい」
すっかり貫禄負けして、フラフラとカウンターを離れると、奥の食堂から既に酔っぱらってるらしいオッサンに声を掛けられた。いつから飲んでんだ。まだ朝だぞ。
「ブハハ、早速、洗礼をくらったみたいだな新人。ありゃな、ローバーギルド名物の
そういう大事な事は先に言ってください。そして二回言ってください。最初の街でボスキャラ出すのは反則です。
「新人のジンー。どこ行ったー」
隅でオッサンとそんな話をしてたら呼ばれたので再び
「ほら、登録証だ。なくすなよ。再発行は銀貨2枚掛かるからな」
そう言って渡されたのは名前と星が一つ刻まれた薄い鉄製のプレートだった。
刻まれた星は3つで一人前、5つで優秀、6つで一流、7つで英雄らしい。アレックスが教えてくれた。
「これであんたも
無事に冒険者になれたらしい。なら、よし。気分切り替えていってみよー。
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