第5話 逃亡生活の始まり

次の日、叩き起こされた私は寝ぼけながら【なに?】と答え起きた。朝まで網戸のまま大喧嘩をしていたため、私は仕事を休み、ゆっくり寝ていた。

すると彼は慌てた様子で【ウーバーイーツと一緒に警察が来た、代わりに受け取って】と彼はクローゼットに隠れた。昨日の大喧嘩で通報でもされたのかと思いながら出ると、若いウーバーイーツの男の子が目を泳がせていた。


私はハテナ状態で警察ならただの喧嘩ですと答える気でいた。しかしウーバーイーツの男の子はドアの両サイドチラチラ見ており商品を受け取ったときに軽くしか見えていないが黒い服の裾と男性の革靴が見えた。

特になにも言われず商品を受け取り、その場は終わったが、彼は電話をし始め、そわそわと窓の外を気にかけベランダに出てまで外を探っていた。そして誰かに電話を何度もしていた。

私は仕事を休むことになり、冷静に別れ話をするつもりだったが、彼は落ち着かず今話しても無駄だと思い、知り合いにLINEをした。

相手は私が昔、拉致、レイプされた時にお世話になったヤクザの人間だ。

彼氏が警察に追われていて、家に警察が来たという事情を話した。

【下手に動かない方がいい、関東と関西では警察も質が違うだろうが】と言われ、彼に話したが

彼は【親父にすぐタクシーを呼んで新幹線に乗れ】と指示されたと言い

その日の夜、彼は荷物をまとめてタクシーを呼び逃亡生活が始まったのだった。


ヤクザの父親から指示され新幹線で逃げるとのことだったが

次の日から彼は【眠れない、食べれない、迷惑かけてごめん】とLINEをするようになった。

そしてヤクザの父親、弁護士と話し合い、不動産詐欺の被害者と示談をすることにすると言った。

私は仕事をこなしながら彼の病んでいるLINEのやりとりをしなければならない日々になったのだった。

正直、疲れていた。

そして日々彼は転々とホテルを移動する毎日を送ったようだった。

彼は日を追う事に自分のしたことに対し反省し、変わると言った。【今まで酷いことばっかりしてきてごめん】と。【今まで誰も信用してこなかった。親以外信用できる人間はいなかった。今回の件でお前を初めて親以外に信用しようと思った】と話した。


次の日、私は嘘をついた。【警察が来たけど名前の確認された】と。

彼の免許証には2つ名前があったのだ。韓国籍の名前と日本名。

その流れで自分の聞きたいことを全て聞きだした。

まず本名、そして気になっていたクレカの苗字について聞く事にした。

【名前何個あるの?警察から3つ名前を言われたけど】と。

クレカの女性の名前は最初は不動産詐欺をしたときに使った名前かもと言っていたが話が変わり元カノだと話し結婚もしていなければ子供もいないと話したが、それも話が変わり、本当はバツイチだと話した。子供の有無には否定をしていた。

月末になりたくさんの請求書がきた。

彼は偽名で通販を買っていた。

そして私名義の計2台の携帯の請求書が来たのだった。

そしてその後、箱の宅配便が届いた。

名義は私であり、品名を見るとBIGLOBE通信機器と書いてあった。


私は箱の裏をカッターで開けたことがバレないように透明のテープを裂いて開けた。

すると黒のiPhoneが入っていた。


これで計3台の携帯契約になる。

一体何がしたいのか。


勝手に名義を使われ説教をした。

【何のために何台も携帯持つの?警察から逃げてるなら携帯なんて持たなきゃいいし、必要ないでしょ?】と問い詰めると

彼は

【ホテルの部屋変えるのと一緒】と訳の分からないことを言い出した為、【意味がわからないからちゃんと説明して】とLINEをした。

【居場所がバレたらまずいから。1台で2つ番号持てるから携帯番号変えてる】と言い、【なんで私の名義勝手に使うの?クレカも、銀行のキャッシュカードも犯罪だよこれ】と説明したが

彼は【迷惑かけてごめん、全部支払えばいい訳じゃないけどちゃんとお金は払うから、ごめん】と返信が来た。


そして払うと言った通り、数万単位のお金が振り込まれ、返す気があるのだと思い、私は安堵したが、それはその後後悔することとなる。


彼は神戸を転々とし、LINEでは【毎日移動がキツイ、辛い】と毎日のようにLINEが来た。

その頃私は転職をした。

そしてまた月末、また請求書が来たのだった。支払うと言っていた携帯代が払われておらず、私は電話をしたがその携帯は解約されていた。

その頃、彼は静岡に移動していた。

人気のない場所に移動させられてるとのことだったが、人気のないところで金髪の男は逆に目立つだろうと思っていたが言わなかった。

そして静岡に移った頃、彼は気分転換に散歩を昼にするようになった。

そして、【今日も暑い。散歩も人付いてきてるから気が休まらない】と元ヤクザのちゃんと父親の関係の人間が護衛に付いてるとのことだった。

【1人でいれるのはホテルの部屋の時だけ】

【示談出来そう】

【話がまとまったらそっちに帰る。早く帰りたい】

というLINEが送られる日々を過ごした。

そして【⠀ゴールデンウィーク明けに帰る】と報告があったが、結局彼はうちには帰っては来なかった。

【帰るって言ったり帰らないとかどうなってるの?】と聞くと

【俺にもわからないねん。親父に聞いても、お前はそんなこと気にすんなって言われて聞くのも諦めた】と言い出したが、1000万の土地を8000万で売り仲間内で山分けし1人1500万で分けたものをどう示談するのかと疑問が湧いた。


不動産詐欺で8000万騙し取られた被害者相手に1500万しか手に入れてない人間が全額返せるのか。


話がまとまる気がしないと私は思っていた。


案の定月が変わり、今度は彼は箱根に移動していた。

この時は既にもう6月に入っていた。

半月毎に親父から現金30万ずつ貰ってると言った彼に、【月60万も何に使うの?】と聞いたが【なんやろな、タバコと飯代と

ホテル代かな】と言った。


毎日温泉に浸かっているという彼はもう警察に追われているという危機感は薄れていた。


そうしてある日、使っていない筈の楽天クレジットカードの超過SMSが届いた。


どういうことかと彼を問い詰めたが【携帯代とかかな】と言い支払っとくとのことだったが払われている様子はなかった。


そしてさすがに疑問に思い、楽天クレジットカードに問い合わせをし、利用明細を発行し送ってもらい、紛失したと話した。

利用明細、カード再発行については2週間かかるとのことだった。


届くのを待つ中、やはり携帯代は払われていなかった。


そして消費者金融の月々の最低額のみが振り込まれ地味に返していくのかと思うと疲れてたまらなかった。


そしてある日、

【泣】とLINEが入り、病んでるのかと思ったが【親から貰った30万失くした】と言い出し、旅館費が払えないからどうしようと言い出したのだった。


【月60貰ってるなら足りるでしょ】と言った私に【服買ったからお金足りひん】との返事が来た。

【ちょっと残ってたから支払ったけど半分足りひん、どうしよう】と言い出し、誰とも会えない状態でどう借りるのかと思った。

すると【前にお前名義で作った楽天銀行カード貸してほしい】と言われたが【どう渡すのか】と聞いたら【マンションの宅配BOXに入れといて欲しい、俺取りに行けへんから、会社の人間に取りに行かせるから】と言い、【誰も信用出来ないのに誰に借りる気でいるの?】との質問に【わからへん、でも何人かには今聞いてる】とのことだった。

【そして5万だけ貸してほしい】と言い出した。

【半月30貰ってるなら親に言いなよ】と言ったが【5万足りひんだけやし、怒られたくないから】とぐちゃぐちゃ言い出した彼に疲れ、5万貸す事にしたが【次の30貰う時に返す】という彼の言葉を信じた。


私はもう本当にお金がなくなり困った。

彼がうちにいた時の電気代は半端なかった。

ひと月25000円を超えていたからだ。

彼は電気を消す癖がなく常にいようが居なかろうが電気がついていた。

電気代2か月分で5万円を超え、払われていない携帯代も含め、まとめて約15万の振り込みをするよう言った。

次の日、彼は2回に分けてUFJ銀行から振り込んだと言い、ネットで確認したが反映されておらず、どういうことかと問い詰めた。

すると彼は15時以降の振り込みだからすぐ反映されないと思うと言い、次の日もその次の日も反映はされなかった。


一体どういうことなのか。


私は窓口に行くよう指示し説明を待った。

彼は【窓口に行ったけど振込先間違えてませんか?と確認され口論になった】【逃げてる立場だから結局大人しく連絡先を伝え帰った】とのことだった。1週間経っても変わらず振り込まれないまま、私は苛立つ毎日だった。



そして箱根にいるはずの彼が早朝うちに突然現れた。

私は仕事が変わり仕事量が増え余裕がないことも伝えていたのにお構いもせず突然現れたのだった。

私はぶちギレ、なんの用かと聞いた。とりあえず玄関先でお金が振り込まれていないことの説明をしろと話し、【あなたの言ってることは一般的にありえない】とも話した。

すると彼は【一般的にはな】と答え、【一般的以外何があるの?】と話した。もしUFJ銀行のシステムがエラーを起こしていたら彼だけではなく他にも振り込めなかった人間がいるはずだからニュースになると説明した。【どういうつもりなの】と聞くと彼は黙り、サングラスを外しこう言った。


【正直言っていい?ぶっちゃけめんどくせぇ、こんなに言われるなら一人でいた方がいい】と言い出した。

彼の逃亡中私は何度も心が折れ、何度も別れ話をしたが、彼は拒んだのだった。そして今めんどくせぇと別れ話をしにきたのだと思い、話を進めたが彼は座りたいといい部屋に入り話を進めた。


そして下にタクシー待たせてるからお金を貸してくれと言い出した。

続けて、【この不動産詐欺の件が終わったらこの土地以外の場所に住むからお前も着いてこい】と言い出し、【携帯失くしたから電話してくれ】とのことで電話したが全く繋がらなかった。そしてテーブルにあった私の友達の解約済みの携帯端末をなぜか持っていくついでにテーブルに置いてあった1万円分をとっていった。


早朝5時にうちに現れるのは絶対におかしい。

不可能だ。


その後失くしたという携帯に何度も電話をしたが変わらず電話が繋がらず、私の友人の解約済みの携帯端末で私のメアドで服の買取一括査定をしていた。

すべての店に電話し事情を話しやりとりを辞めてほしいと伝えたが1店舗だけ間に合わなかった。


事情を説明し、店長らしき人に代わり、そこで彼は服を2着、サングラスを売っていたことがわかった。

そして本人確認で免許証を出していた事もわかったが、裏に新しく住所が記載されているというので聞いたが、さすがに個人情報なのでと言うので、私が今から言う住所が合っていたら【はい】と言って欲しいと頼んだ。

すると答えは【はい】だった。

彼は4月生まれだ。この時は静岡にいたはずなのに更新している意味がわからなかった。

更新時期でもない上なぜ変える必要があったのかも謎だったが、言えるのは、この時点で彼にはお金がないと悟り、すぐに詐欺専門の事務所へ連絡しまくり、詐欺師の常習犯だと言うことが判明した。

まず不動産詐欺には時効がないこと、示談なんてものはないことがわかった。




そして彼はまた日曜にうちに早朝来たが

鍵を持ってるはずなのにオートロックの下の入り口からインターホンを鳴らし、私は寝ていて出れず、彼はそのまま大人しく帰った。

そして2時間後またうちに来て直接ドアを開けたが内鍵がかかっていたので大人しく帰った。

そして私はまた別の詐欺専門の弁護士の所に電話した。

すると電話対応してくれた方が彼の情報が載っているサイトを教えてくれた。

見ると彼は、1人の女性を妊娠させ、子供が生まれたにも関わらず逃亡し、カードを勝手に作り、窃盗、器物破損、結婚詐欺との記事だった。


私の心は一気に乱れた。


私は衝撃を受け、とにかく騙されていたことにショックを、隠せずにいた。

逃亡生活も父親がヤクザだということも、タワマンに、住んでいるという話も彼が話したことは全て嘘であり、ただただその現実に打ちのめされたのだった。


そして彼の行方は今わからない。

連絡が取れない。


そしてそのうちにカードの利用明細が届いたのだった。


彼とは連絡が取れないまま、私は警察に行き事情を説明した。

だが被害届は受理されず無駄な時間を過ごしたのだった。

そして私の給料日近く。月末に必ず奴はくると思い、どうするか考えていた。

どう考えても私は不利な立場だった。現金も私は手渡しでしていたし、借用書もない。


現状、彼は警察からも私からも、そしてもう1人の被害者女性からも逃げているのだ。


残っているのは私名義の請求書と奴が偽名で買っていた通販の督促状と弁護士事務所からの督促、LINEで全てお金を返すという文面のみだった。

私は追い詰められた。


ただ彼は私が行動に移していることをなにも知らない。

彼にとって私はまだ騙された女のままのはずだと思い、油断している彼を追い詰めることをとにかく寝ずに考えるようになった。


奴の裏をかくこと。毎日寝ずに考えた。

その間に、詐欺師専門とする仕事をしてる方とコンタクトをとり、やりとりをした。

《詐欺師相手に正攻法は通用しない》

《不動産詐欺に時効も、示談という話などない》

‥という話を聞き、何が今出来るかをとにかく考えた。

奴にはお金がない。

また同じ方法で獲物を探すだろうと考え、一度マッチングアプリを退会し別人を装い登録することにした。

私の給料日らへんにまた来る可能性もあるが、平行して獲物を探しているはずだと思い退会したのはいいが再登録に1週間かかるとのことだった。もどかしい時間を過ごすのは私には無理だった。

そして何人かの弁護士とやりとりをした。

そんな中、私の前に被害者がいることがわかった。

ネット社会のありがたみを感じた。すぐにその被害者の方とコンタクトを取った。



















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