第9話 被害者としての私

各々弁護士の言うことはわかってはいたが、改めて聞くとうちひしがれた。


在日韓国人、無職、住所不定、現在捕まっている


この条件だけで皆、言うことは同じだった

【取れる物がない、自己破産】


本当に、改めて重く疲労が募った。


加害者の弁護はあるのに、被害者には弁護などなく、とにかく自分がしていないことの立証が必要になり、その立証も難しい。

法律とはなんなのか。

警察とはなんなのか。

検察とは、裁判官とはなんなのかを誰かに説明していただきたい。

一体、被害者は誰が守れるのか。

警察へのクレームは

警察庁、公安委員会へ送らなければならない。

特に公安委員会は書面のみの受付でいちいちPDF印刷しなければならないこと、切手代すら発生することに苛立ちが募った。

まさか、ここまで警察が役に立たないとは思わなかった。

もちろん、被害届の受理は検察官の判断によるものだが、

検察庁にもクレームを入れようと考え、ひたすら文章を考えた。

この世は、弱者に優しく出来ていないのだと改めて思った日だった。

私が警察を信じず単独で動いていたのには理由があった。

今回の件には関係ないが、私は昔15の時にワゴン車で拉致に遭い、5人に回された。そう、レイプされたのだ。この時の記憶は未だにはっきりと覚えている。

抵抗する度に爪を剥がされ、回されたのだった。

最終的にはどこかもわからない林に捨てられ、道で倒れ気づいた時には病院に運ばれており、警察が来たのだった。

その時警察は私を慰めるのでも同情をするのでもなく、

【なんで逃げなかったのか】と問い詰めたのだ。

全身打撲で動けない体で私はその刑事を殴っていた。

当時携帯は今程使えるものではなかった。GPSもなくピッチ(PHS)だった。

犯人の5人は未成年で証拠不十分で釈放されていた。

私は精神的にも体も傷つけられ心は復讐心に燃えていたが男性恐怖症になり父親を見るだけで吐いていた。

心と体がチグハグな生活の中、犯人の5人組を制裁しなかった警察にうんざりし、法律にもうんざりした15歳の私は精神科に通いながらもとにかく復讐に燃えていた。

おおっぴらにはここでは書けないが復讐を自らの手でしたのだった。

あの時から警察を信用してはいなかった。

あれから時が経ち、十数年経ったが警察の使えなさは変わっていないのだとうんざりした。

私の件で被害届も受理をしないということは立件もせず咎めないということになる。

今受理されている女性だけの件で立件し起訴に持っていくのだろう。

じゃあ他の被害者はどうなるのか考えてもいないんだろう。

そう考えるとため息が止まらなかった。

今まで情報提供してきたが、自分の件で動いてくれないのなら私の行動は無意味であり、時間も無駄だと感じずにはいられず、今あるこの請求書に対しての処置を優先することにした。

ずっと、犯人に対し、頭の中では将棋盤が浮かびどの駒を動かしていくかを考えていたが、全て無駄だったのだと思い、悔しく思うが私はもう動くのを辞めようと考えた。

全てが無駄だからだ。

本当に寝る時間も削り仕事をしながらあれこれしてきたが全て無駄にされたのだと思い馬鹿馬鹿しくなった。

私のことで被害届も受理すらしていないのに私の事でも問い詰めているというのも、納得がいかない。

おかげで奴はうちに近寄ることも油断することもない。

本当に警察は何をしてくれてるのか問い詰めたい気持ちでいっぱいで仕方がなく何をしても楽しくはなかった。

もし起訴が出来なければそのまま釈放され、また奴は名前を変え住所不定のまま、同じ事を繰り返すのだろう。

起訴が出来るのであれば留置所から拘置所へ移り起訴から公判まで約2ヶ月。

どっちにしろもう私は関係ない。

勝手にしてくれと呆れ果て、自己破産を考えた。

冷静になって考えたが、もし被害届が受理され、損害賠償請求を起こしたとする。

起こしたところで勝訴しようが、

そもそも奴には返済能力もなく、財産もない。

【中卒、日本国籍でもない、土地もない、お金もない、職歴もない】

こんな人間相手に勝ったところで何が返ってくるのか。

傷ついた個人の信用情報は取り返せない。お金も返ってこない。

何が自分にとって1番なのかを客観的に考えたが、普通に自己破産の道の一択だろう。

数年カードもローンももちろん組めないが、今来ている請求を自己破産してその分、貯金に回す方が得策だと考えが傾き始めた。

ただ自己破産するにも弁護士が必要となり、お金はかかる。

弁護士によるだろうが30万+消費税はするだろう。

もしくは法テラスを使い約15万程の分割払い。

本当にこんな糞人間のせいでとんだ目に遭ったなと思うが、今の私の最善策は、自己破産だろうという結論に至った。

対債権者で民事を起こしたところで0にするのは限りなく無理だろう。

頑張ってもせいぜい減額、元金の支払いになるだろう。

結局その手続きをしたところで支払ってもその後そのカードは使えない。

数年で完済しそのカードを使える道を選ぶか

数年カードやローンの組めない道を選ぶかの2択。

なんて馬鹿馬鹿しいのか。


この1ヶ月、私は3食食べていたにも関わらず心労のためか8キロ痩せた。

寝ている間も脳が働いてるのがわかっていたが、ダイエットしたときには減らなかった体重が気づいたら減っていた。

ほんとにバカらしい1ヶ月半だった。

奴が急に早朝現れたあの日から、ずっと悩み、考えた毎日だった。

考えない時間など一切なく、寝ている間もずっと頭の中でシュミレーションしていた。

出所後のことすらも考えていたが、今現在、どうでもよくなったのが正直な気持ちだ。

本当に、奴がうちから逃亡し約5ヶ月、そしてその中でのここ2ヶ月は特に頭を使ったが、警察のおかげで全てが無駄になった。

奴から信用を得るために騙されているフリをし続けたのも、警察の問い詰めで無駄になり、情報提供も無駄。被害届も受理されない。なんて無駄な時間だったのだろうか。

そうして奴を訴えるのではなく警察を訴えることが頭にちらつき始めた。

そもそも4、5年前に出ていた被害届の捜査が去年打ち切られていた。その時に逮捕されていれば私を含め他の被害者など生まれなかった。

本当にこれは過失ではないかと思い始め、矛先が変わり始めた。

【被害届は受理しない、今後受理する予定もない】と言われる中、書留で訴訟勧告の最後の通達の手紙が来た。

すぐに問い合わせたところ、事情を説明したが、やはり被害届の受理番号をと言われ、心が折れた。

警察に対しての憎しみが膨れ上がった。

復讐や憎しみで心がいっぱいになり、その心さえも持つのが嫌になり全てから逃げたくなった。

目の前にある、私の名前での請求書や訴訟勧告の手紙、奴が落とした携帯の中身のデータの書類、取り寄せた契約書類が散らばったテーブルを見て吐き気が止まらず吐いた。

平和だった頃はYouTube漬けで歌を口ずさんでいた頃が懐かしいと涙が出た。

たった数ヶ月、付き合った男のせいでなんでこんな目に遭っているのだろうと、涙が止まらなかった。

ふと、ここ最近はずっと音楽すらも聞いていないことに気づいて、久しぶりに大好きなBUMP OF CHICKENを聞いた。

そういえば、ボーカルの藤くんが大好きだったなと思いだし、似ても似つかない男となぜ付き合ったのか自分を責めた。

藤くんの声に癒された。

BUMP OF CHICKENは全メンバー千葉出身で、私も千葉の出身でよくライブハウスに行っていたことも思いだし余計に泣けてきた。

本当に、なぜあの男と付き合ったのか…唯一無理矢理好きな所をあげれば、サラサラの髪の毛位で、他は特になかった。たった3ヶ月の付き合いでここまで女の人生をぐちゃぐちゃに出来るのは本当にすごいと思う。私は寂しさから付き合っただけなのだろうと思い悔しさで目の前が涙で滲んだ。

いつだって、藤くんの存在は私の中で大きい。

一度だけ、親が離婚するときに電話で相談に乗ってもらったことがあった。

物静かに話す藤くんは、とても冷静で優しく、大きな人だと感じた。

その時に、これからは藤くんのような人と付き合いたいと思っていたのに、まさかの今回犯罪者…。

本当に自分が情けなく、小さな、女としても決して賢くはない人選だと、どうしても自分を責めずにはいられなかった。

私の地域での管轄の警察署から電話があり、説明をされ謝罪をされた。

しかし私が警察庁に出したクレームは奴が捕まっている警察署に対してであり、その警察からは【被害届は受理しない、今立件できる可能性のある女性の方で捜査を進めていっている、立件できるかもわからない件で時間は取れない】

【どうしてほしいんですか?今来ている訴訟勧告が来ている法律事務所や通販会社に説明すればいいですか?全部こっちに投げてくれてかまわないです。請求は止められませんけど。見て欲しい請求やら資料があって、見て欲しいというなら見ることは出来ますけど】と鼻で笑い終始上から目線であった。

憤りを隠せずまた警察庁へクレームを出した。

そして公安委員会は書面のみだったので後回しにしていたがもうあまりにも横柄な態度で【もういいですか】と電話を切られた為、もう書くことにした。

また再度、さっきの上から目線の刑事から電話があり、【クレジットカード会社に問い合わせができなかったので、これからカード会社と裁判になると思いますが自分で対処してください】とのことだった。問い合わせが出来ない時間でもないのに問い合わせができなかった理由とはなんなのか。

【全てこっちに投げてください、説明するので】と言ったのに問い合わせができなかったとはいえどういった言い訳なのか。そもそもしてないだろうと私は思った。

なぜできなかったのか聞いたが【問い合わせできなかった】としか言わず、してないんだろうと思い、話そうとしたが【この件はこれで終了します。切ります】と一方的に電話を切られた。

こんな無責任な人間が警察、刑事をしてることすら神経を疑う。

2度目のクレームは名指しでしたのだった。

その間、奴の直筆の書面を取り寄せようと電話をした。

すると、ちゃんとした対応の出来る人が電話に出て安心をした。

事情を説明すると上の方から電話をかけ直すとのことで電話を待ち、話を聞いたところ、【男性と電話でやり取りをしてますが、名義人本人様ですか?】と聞かれ、そうですと答えた。

すると落ち着いた声で、【お日にちが経っているので原本があるかどうかがわかりませんが、勝手ながら明日は会社が休みで対応が出来ないので後日お電話します】とのことだった。

願わくば、この書面があることを祈るばかりだ。


とにかく目の前にある請求書や訴訟勧告状に対して何かしら動かなければならないのは間違いない。

警察とのやり取りの中で過呼吸になり、精神的にも参り、心療内科へ行った。今現状況、私は心と体がチグハグで勝手に涙が出たり、過呼吸になったり吐いたりしており仕事が出来る状況ではない。

唯一、奴の直筆の書類についての連絡があった。

しかし、やはりうまくは行かなかった。

【日にちが経っているので破棄されていました】とのことだった。

たった3ヶ月半で書類を破棄するのだろうかと疑問に思いながらも電話を切った。

この会社はライト通信、乗り換えドットコムに繋がる。

この会社は名義人の私ではなく奴とやり取りをしており、キャッシュバックが成立していた。

期待はしていなかったが武器となるはずのものがなくなった。

私は絶望感を感じずにはいられなかった。

目の前にある請求や訴訟勧告に埋もれたテーブルを見て、そして警察の一方的に喋り一方的に電話を切るという態度に過度のストレスを感じ、過呼吸になり吐いた。

それでも何とかしなければいけない状況に心身ともに疲れ、全てから逃げたくなった。

逮捕状もなくうちに警察が来なければ奴は行方不明にはならなかった。今回捕まったのは、被害者の力によるもので奇跡に近い。

それでも私の目の前にある被害は被害とは言わないのだろうか。

被害届を受理もせず私のことでも奴を問い詰めているのも、先日受けた聴取と調書の訳がわからず混乱し、また吐いた。

絶望感の中、私はこれからの人生に希望を見いだすことが出来なかった。

私ではないという立証が難しく、目の前にある請求や訴訟勧告からは逃げられない上に払えない。

総額200を越えている。

そして息すらうまく出来ず震えも吐き気も止まらず死を考えるようになった。

たかだか200万越えの請求かもしれないがされど200万であり、信用情報はガタガタであり、新しくカードも作れない。家賃と生活費、サラ金の返済までしか出来ない。少なくともこの数ヶ月味もわからず無理矢理食べていたが、それもどうでも良くなり、家族には心から詫び、友達にも絶望感を訴えた。

気づいたらハンガーを使い自殺をしようとしていた。しかし針金のハンガーが壊れ未遂に終わった。

そして持っている全ての睡眠薬を飲み、起きることがないよう行動をとっていた。息もうまく出来ず、体は冷え、震えた。意識が遠のくなか、いきなり玄関のインターホンが鳴り、オートロックなのにと考えながら動けない体で横たわっていた。すると、名前を呼ばれドアをドンドン叩く音が遠く聞こえ、無理矢理体を起こし出ると大嫌いな警察が立っていた。立てずに座り込みぐったりした私を見た警察は、【あなたの友人から通報があった、大丈夫ですか。しっかりしてください】【具合が悪いなら救急車呼びましょうか】という質問に私は答えなかった。心の中で誰のせいだと叫びたかった。

そして【安否確認ができたので帰ります】とのことだった。そして最後に【担当の係のものから電話させますので対応してください】と、帰っていった。

どこまでも、警察はおかしい。

オートロックのある一階からのインターホンでなくいきなり玄関のインターホンを鳴らしドアを叩き多きな声で名前を呼び、さっさと帰っていった。私が詐欺被害者だという認識はあり、管轄の警察に関してはわからないがどうも出来ないといい、ぐったりしている私を見て言ったのは【担当の係のものから電話させますので対応してください】しか言わなかった。この状態で対応できるわけがないだろうがと憤りを感じた。

そして体を引きずり検察庁、警察相談窓口に電話をし、なぜ私がここまで追い詰められたのかを回らない頭で説明した。

警察相談窓口で電話に出た男性は静かに話を聞き、今奴が捕まってる警察の対応はおかしいと話し、書面にして警察署長に送るということになった。それらが済むと私は気を失った。

目が覚め、通報してくれた友達に謝罪をした。私を大切に思ってくれている友人が遠く離れた県外からなんとか警察とやり取りをしてくれたのであろう。友人は泣いた。

心配をかけたことに対して申し訳ない気持ちになったが、未来に希望を見いだすことが出来なかった。




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