第7話 逮捕

さて、どうしたものかと考えていた次の日の夜。

京都にて奴は通報され捕まった。

そして奴は警察による取り調べを受けている。


急展開を迎えた。


捕まえるのに手間が省けたが、私の場合、完全に民事事件になり弁護士を雇ったところで金のない、返済能力のない男に金を要求したところで無意味、無駄金。

刑を重くするにはどうしたらいいのかと考えを切り替えた。


そうこうしているうちにすぐに勾留延長が10日決まり、

警察に携帯のロック解除に成功したものを提出することにし、警察の聴取を受けた。

この携帯で連絡が取れる被害者には連絡し調べられるものは全て調べた。

初めは窃盗担当の刑事と話し、次に知能犯係の刑事と話した。


奴がうちから逃げたきっかけは黒服の人間のせいだったが、その人物は今担当している刑事だと判明した。逮捕状もなく行動に出たのだ。

警察は本当に使えないと判断した私は、提出した携帯は返却され、私に出来ることはこの携帯で奴になりすまし仲間と証言を得るため連絡をとり始めた。

そしてあるべきはずのドコモの携帯の行方(名義)、郵送物の転送先を調べることに時間を使うことにした。

その間、奴が執行猶予中で今回捕まったと知り、思わず笑ったのだった。


執行猶予の付いた罪も執行猶予は消え加罪される。


その日の夜、他の被害者に連絡し警察へいくよう促した。


そして奴の携帯の検索履歴を見ると自分で自分を検索していた。

そのあとからメインで使っていたアドレスは使わず、慌てて作ったであろうメアドが3つあった。

調べたところどうでもいい名前で相変わらず愛用のサイトを登録していたのだった。


ブランド服を中古で女のカードで買い、それを売る。

女の家に転がり込み女のカードで生活をする、韓国籍の中卒、職歴もない上、住所もない低レベルな糞男だと改めて思った。

そうして警察は被害者の証言を元に何を取り調べているのか気になったがしるよしもないので考えるのを辞めた。


私が調べるまで警察は捜査する、携帯を解析すると言ったが、

私が調べるまで銀行口座などは調べもせず、携帯も解析などせず提出したその日に返却。

本当に日本の警察は何が出来るのか。

口だけ一丁前にどうしても捕まえたい。

熱量だけで事件が片付くならどれだけ日本は平和なのだろうか。


怒りがこみ上げる日々を送り、仕事の合間をぬいながら、奴の携帯を最大限いかす為に奴の仲間であろう人間に、奴になりすまし、トーク履歴を送らせることに成功したが、そのトーク履歴は不自然なほどに女の情報はなかった。

一進一退を繰り返す。


なんとか気力で持ちこたえ、頭は常にフル回転。食欲もなくなり睡眠時間を削り自分に使える時間などなかった。

そして自分の携帯を眺めていたある日、私の電話帳に奴の携帯番号が複数存在してることに気づいた。

もちろん私名義ではない番号だ。


ミスったと思った。

警察に訪れた日になぜこの複数の番号を伝えなかったのかと後悔が目まぐるしく廻ったが、警察のあの捜査能力の低さにはうんざりしていた為、報告していたところで何もわからないだろうと思ったが、一応仕事の休憩中に報告した。


全てのこの番号はMNPされておりキャリアが変わっていた。

全てdocomoになっていた。


そしてこの奴の携帯にて登録されていたdアカウントの解除も成功し、登録されていた、名前、住所も報告した。

これらの情報提供も無駄になるだろうと警察に対しては本当にうんざりするほどだった。

私の睡眠時間、休みの時間を返してほしいと怒りがこみ上げた。


私からの情報を無駄にする組織だとしか思えず、自分は被害届すら受理されていない為、情報提供をやめようとまで思った。

私がとにかく調べたのは元々警察を信用していない為、自らが動いて情報を流し、問い詰めるのは警察の役目だと割りきっていたがここまで使えないとは思わなかった。


ただ私には、奴を問い詰める権利もなくとにかく捜査を短縮させ、あらゆる奴の情報を提供してきたが、奴の郵便物の転送先すら調べておらず何を捜査しているのかととにかく腹が立ったのだった。



警察に対してうんざりする中、私名義であり得ない金額の請求書が届き心が初めて折れた。

私名義で勝手に契約された携帯2台分の請求が弁護士事務所から送られて来たのだった。総額機種代も含め45万弱の請求だった。

この携帯はもう存在しない。

転売されてるはずのものになる。


あくまでも名義が私であり、支払う義務が私にあるのはわかるが、私が契約してないという立証をしなければならない。

この立証にはまず警察で被害届を受理されなければならない。

そのためには契約時の登録を携帯会社から送らせなければならない。

時間が必要だ。本当に最悪だ。


使った本人でなく名義人に請求がくるこのシステムを憎んだ。

そして簡単に契約が出来るこのネット社会に怒りがこみ上げる憎んだ。

便利なようだが、犯罪者にとってはなんて都合の良いシステムなのか。

クレジット会社も存在しない人間の家族カードを発行ししている時点でどうかと思った。


クレジットカード会社から契約登録時の写しを送らせたところ、最悪だった。

あっているのは私の名前、誕生日、住所のみ。

勤務地、職種はデタラメ。

そして家族カードの登録も私の名字で下の名前が奴になっており、続き柄は親となっていた。

うちは父親がいない。

架空の父親がカードの持ち主。


なぜこんなものの審査が通るのか。

この会社はバカなのか。存在しない人間の家族カードも作り、電話をしたが請求書は送り続けると折れなかった。カードを作っていない。使ったこともない。所持もしていない。私からしたらお前らの審査がちゃんとしないからこうなったんだろうがという気持ちがこみ上げカード会社自体を訴えようかと考えた。

そのまま弁護士、警察にも連絡し弁護士は明日の昼。

警察へは来週の月曜に行かなければならなくなった。

警察に行くのはいいが提供出来るものは私の名前での請求書や、今回のクレカ契約時の登録の書類のみ。

なんのために行くのか。

弁護士と相談の上、初めは自己破産を勧めたが、捕まったのなら話は変わる。と色々指示をしていただいた。

そして月曜日警察へ行くはずがなぜか話が流れ別日に行くことになり、それまでの間に私は関係書類をまとめることにした。


その間に、警察は私の件で被害受理してもいないのに私の件でも奴を問い詰めており、面会でことごとく侮辱し心を折れされようというつもりだったのも無理になった。

本当に警察にはうんざりする。

そして警察は、私のデタラメのクレカの登録契約書の存在を知り、私の件でも立件したい、各被害者とのやりとりをしていることを知っているため情報を共有してほしいとヘコヘコしてきたのだった。

これまで私はただの情報提供者だった為、捜査については教えてくれなかったが、奴の名義は全て調べたと話した。

そして、奴の免許証住所は奴の名義ではなく被害者の可能性が高いと口を滑らせた。

私はその免許証住所に行くことにしたが、無駄に終わったのだった。

その住所には新しい人が住んでおり、しかも男性だったのだ。

無駄骨もいいところだ。

警察は一体何を調べたのか。


憤りを隠せず、その日は寝ることにした。

冷静さを取り戻し、通報してくれた女の子から連絡があり、情報を共有したところ、奴は、この通報してくれた女の子に【迷惑かけてごめん】という伝言を面会で会った女性からされたとのことだった。通報されたことに気づいていない奴にはほとほと呆れた。


そして、伝言を頼まれた女は奴のことを【心底悪い人間とは思えない】とのことだった。頭がおかしいのかと理解ができなかった。

奴はこの伝言を頼まれた女には【知人とのもめ事で捕まった】と話していた。知人とのもめ事ごときで捕まることに疑問にも思わない人間がいるのかと理解できなかった。


各被害者とのやりとりをしながら、解約済みのMNPされた複数の携帯は相変わらず電源が落とされたままだった。

何が目的なのか。どこにあるのか。

ずっと頭を悩ませた。


携帯の場所を探すには本人確認が必要になる。

調べたところ全て私の名義ではなかったため行き詰まった。

名義を使われている可能性がある人間は約1名。

奴の素性や各被害者の状況を説明したにも関わらず全く連絡がない人間が約1名いるのだ。


この女性はとても激情家ですぐ熱くなり、とても反抗的な女性だった。

どれだけ冷静に話してもすぐに噛み付いてくる女性だった。

この人間以外はカードも止めている為、今まで同様契約をネットでしているはず、引き落としは?支払方法は?と考えたがうちにも他の被害者にも請求はなかった。


残る人間で可能性があるのはこの気が強い女性しか考えられなかった。

LINEを、それとなくしたが既読にもならず返信待ちとなった。

ただ、奴のことは被害者によりネットに晒され調べればわかるはずなのに何のリアクションもなく1週間以上経っていた為、被害者としての意識がないように思う。

普通なら調べたところ、ネットで拡散され、今現状捕まっていることも私は伝えているがノーリアクション。

本当に理解しがたいがこの女性から協力を得られることはない可能性のが高いと思い、イライラが募った。

なんやかんやと、出所後の楽しみを少なからずとも奪おうと日々、奴が落とした私名義の携帯に連絡が来る女の子には申し訳ないが奴のふりをして傷つけブロックさせ、削除させた。

この携帯の中にある連絡先は被害者、関係者、他はほぼキャバクラ嬢だった。なんて中身のない人間だろうかと思いながらも、女性とやり取りをする中で、奴が出たあとどうするかを相談するために元ヤクザの知り合いに連絡を取ったのだった。

このままいくと奴が捕まっても、勾留が解ける可能性があると思い、とある人に相談した。この人はもう引退しているが元々ヤクザの幹部の人間だった。


金もない、土地もない、家もない、職歴もない、ましてや日本国籍もない。韓国人から奪えるものといったら自由しか浮かばなかった。

そこで知恵を借りようと連絡を取ったのだった。


復讐に燃え、冷静さを欠いた私にヤクザの知り合いはこう言った【殺すだけなら一瞬で終わる、それで被害者のみんなは満足するのか、新しい人生を歩めるのか】と。

たしかに、そうじゃない。

殺したいほど憎いが、それで終われない。

自由を奪うには、刑務所に行かせる必要があり、出所後の自由すらも奪いたいという願いは、なかなか難しい。ただ出所後、奴は名前を変えることが出来る。もちろん足がつかないよう生きることは目に見えていた。少なくとも奴は現在40近い。その後が長い。

自殺するような人間でもなく、薬に手を出す人間でもない。

これから先ずっと同じことを繰り返し生きていくであろうと思えば思うほど憎しみに溢れ冷静さを欠いた。

この人間にとって生きていく上で何が1番苦しいのか、ひたすら考えたが、それをするには何十年単位になる。

答えは出なかった。

各被害者に聞いてみたが、一生を苦しんでほしい、お金を返してほしい。孤独に生きていってほしいとのことだった。

お金が返ってくるなら、誰もが被害者にはならなかっただろう。

お金がないから、窃盗や詐欺を繰り返してきたのだから。

そうしてる間に詐欺でも再逮捕され20日間勾留が延び、接見は禁止となった。


その間に私は聴取と調書をとることになり約4時間半を越える聴取、調書となった。

その中で、警察の担当刑事に取り調べはどうなのかと聞いたところ、

【事件に関してはなにも話さないのがわかってるので雑談してました】と聞いた瞬間に怒りがこみ上げた。

雑談?なんのために?なんの足しになるのか。

私の聴取中の涙は引っ込んだ。

そして奴はご飯を食べておらず10キロ程痩せたというどうでもいい話をしてきたのだった。そして最後に各被害者に情報共有しないでほしいと言い放ったのだった。

そりゃ、雑談してました。は、各被害者も【は?】となる話であり、時間は無限ではなく有限の中で雑談してましたと言われれば各被害者は腸が煮えくり返るだろう。

そして、奴が20代で日本人と結婚しており子供もいた事がわかった。

各被害者にはバツイチという話はなかった。

なぜか私には【バツイチ】という話をしていた。

それが事実なのにも驚いたが、私に本当のことを話していたことがあったのだと疑問に思い、過去を振り返った。各被害者と私との大きな違いはまず暴言、暴力の有無は明確だった。

過去を振り返るなかで、何が本当で何が嘘なのかももう本人にしかわからないことだと思い、無駄だと感じ考えるのはやめた。

今すべきことはそこじゃないと言い聞かせ、なんでもいいから何かしら書面がないかと考えた。


各書類を各会社に取り寄せるにも2週間はかかる。

そして、唯一奴の直筆のものがあることを思い出したが、なんとも胡散臭い会社であり、この会社には携帯のキャッシュバックを目当てに私の名前、口座などを書き送った事を思い出したが、なんとも不自然すぎたレターパックで覚えている。

住所は東京、東池袋。会社名の下に個人名が書かれていたからだ。

キャッシュバックの会社ならなぜ個人名宛なのか問い詰めた記憶があった。

再度その会社を調べたが本当に胡散臭い。

詐欺師が詐欺に遭うなどあるのだろうかと悩んだが、まず書面がほしい。なんと説明したらすんなり送ってくれるのか。

各被害に遭っているカード会社等も事情を説明したが普通のオペレーターでは対応しきれず上席にと時間がかかった。

コールセンターで働いていた事があるのでその流れもわかっていただけにイライラが募った。それをこの胡散臭い会社相手にしたところで書面があるのかすらわからない。とにかく時間がかかるだろうと考え気持ちが萎えた。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る