第6話 彼の正体

私が持っている奴の情報は免許証、健康保険証、詐欺師専門の方の説明によるものでしかない。


ただ、詐欺師の常習犯であるのは確かだった。



私の持っている情報では何も武器にならない。

情報が足りなすぎる。

私はネットで拡散していた、私の前の被害者であろう女性と会うことになり話をすることになった。

話が長くなることはわかっていたので某ファミレスに入り、奴に関する書類などを持ってきて貰い、どういった経緯でどういう状況に置かれているかを聞いた。



彼女は奴とは約1年の付き合いでもちろん私と同じくマッチングアプリで出会っていた。


そして話を聞くと彼女の被害は私の想像域を越えていた。

まず奴の子供を去年2020年11月出産していた。

奴は子供が生まれる約一ヶ月前に籍も入れず認知もせず逃亡していた。

そしてクレジットカードは4枚勝手に作られており被害額は満額400万そして彼女自身の貯金、彼女名義の後払い請求が来ているとのことだった。

そして彼女は警察に行き被害届が受理され、指名手配がされたとのことだった。


そして彼女の持っている書類を見せてもらった。

奴は国民保険料を払わず削除されており、奴名義のタワマンの賃料も約180万滞納しており、弁護士事務所から督促が来ていたのだった。

2人で話し合いをし、もう一度奴と会うためにマッチングアプリで別人を装いおびきだす作戦を提案し捕まえ婚姻関係であるという証明を書かせる算段をとったが、これは途方もなく奴と繋がるには時間を要する。その間に何が出来るか私は私で考えるとその日は別れた。


彼女と会った事で、得た情報は大きなものだった。


ただ彼女も人間不信の中、私と会ってくれた事に感謝した。

連絡先も交換した。

今日の収穫は大きいとプラスに考えた。



しかし、よりにもよってその日の夜帰宅すると奴の愛用しているタクシー会社のタクシーが止まっており、鳥肌が立った。

私の部屋を見上げると電気がついていた。


まさか本当に思った通り前の仕事の給料日に来るとは。

私は奴を騙せている確信を得た瞬間だった。


しかし私は明日仕事は休めない。重要な仕事の日だった為、30分ほど様子を見たがタクシーはいなくなり部屋の電気がついていたままだった。

金の無心だろうと思い、即ホテルを取りその日は会わず、考えた。

奴を騙せているという確証を得られた日だったが、次来るのは確実にお金がある月末か、遅くとも給料日の週の土日には来る。

何故土日かというと警察には当直しかいない日だからだ。

そして奴は一目につかない夜から早朝に動く。それまでに何が必要かを考えた。

仕事をこなしながらたくさんの可能性を考える日々を送ることになり私の精神、頭はフル回転し消耗する日を送った。

マッチングアプリで奴を探す。

該当者はいなかった。

奴の登録は

不動産経営、もしくは経営者

年収は1200万以上

好きなものはハイブランド、旅行

辞めた可能性があると不安がよぎった。


そうなるとおびきだす作戦は無意味になり、時間も無駄だ。

賭けるのは私の給料日、土日になる。

ただホテルをとったのは失敗だったと後悔をした。

奴にとっていつ会えるかわからない女になってしまった事

奴は私のメアドで服を買い取り査定を出していた為お金がないはずだ。


いつ会えるかもわからない女の所に頻繁にタクシーで来るとは思えない。

ひどく後悔をした。

よくよく考えたら暴力を振るわれ傷害罪で訴える事も出来たのに、私は浅はかだと激しく後悔をした。


そして私の前の被害者女性にうちに来たと報告をした。

連絡を取り合うようになり

そして会って欲しい人間がいるとのとだった。

唯一相談している人間がいるから会って欲しいと約束の日を決め、会う事にした。


その後、とある警察署から電話があった。

【○○警察署の○○です。K(彼)の事について話を伺いたい】とのことだった。


不躾すぎて話にならないと思い、なぜ私のところまで行き着いたのかを説明して欲しいと話したが、しどろもどろで話にならず電話を切った。



なぜこのタイミングで私の存在が私の区域の管轄外の警察署から電話があったのか考え、彼女が警察に私の存在を話したのかと思い聞いたが話してはいないようだった。


その後、彼女の拡散しているネットに私以外の女性から連絡があったとLINEが来た。


私もその女性と連絡を取ってみたが私に話すことと彼女に話すことはかなり違っていたが、その女性は被害者ではなく、彼と接触をしたいだけの女性であった。


それからというもの毎日私は既読になるかもわからないLINEに心配するふりをしLINEを送り続けたが既読にならず、電話をかけても電源が入っていなかった。



そしてある日、またクレジットカードの超過のSMSが届き、クレジットカード会社に連絡をした。

すると、私のクレジットカードは家族カードまで作れていたことがわかった。そして利用明細を見ると、キャッシング30万残りの全額はショッピングだった。満額50万使われていた。

そして箱根に逃亡していたはずの奴は県内にいたことがわかった。

家から逃亡して数ヶ月、毎日のやり取りが全て嘘だったのだ。

怒りに震えた。

どうしてやろうかとにかく考えた。

そしてある日、携帯を失くしたと言っていたことをふと思い出した。常に電源の入っていない携帯。

お金を返せない理由として嘘ではなく本当に失くしているかもしれないと、携帯会社に連絡した。この携帯は紛失した際に見つけられるサービスには入っていない、そしてGPSも切られている。

そのなかで探す方法は1つだけあった。基地局だ。

すぐに基地局に事情を説明し探してもらったところ警察署に届いていた。

この場合、名義人本人しか受け取れない。

名義が私でよかったと思った。

奴の情報が詰まった携帯を手に入れられる。

状況が変わるかもしれないと思いすぐに取りに行った。


だが携帯を取りに行ったもののパスコードがわからず本人確認を得られず引き取るのに1時間半かかった。

そしてその日はパスコードを解くのにショップへ行ったが初期化しないとロック解除はできないとの事だった。

それは困る。絶対にそれは回避したい。自力で解くしかないとうちひしがれた。

iPhoneは10回ミスれば強制初期化される。

10回しかミスれない。

6桁の数字。

奴に関連する数字をひたすら紙に書いたが6桁の番号はヒントすらなかった。


ただ人1人が関連する4桁の数字や8桁の数字のパターンはそう多くない。

1日かかったが6桁の数字を解くことに成功した。

そして中身を見ると私はまたひどく落ち込んだのだった。

LINEの登録人数は58人。

メッセージは全て削除されていた。

電話帳も登録は0だったのだ。残っているのは銀行口座のやり取りのスクショ二枚。

メールを見ると登録されたサイトからの広告メール。

そして持っていないはずのドコモのdアカウント登録のメールだった。



この携帯から得られる全てのものをとにかくIDやパスワードを解き紙に書き出した。

そしてスクショされていた銀行口座の相手に連絡をこの携帯からとり、電話をし、事情を聞いたのだった。

この相手は女の子で私と同じ被害者だった。

そしてこのLINEの58人中ほとんどがキャバクラ嬢だった。あと、やり取りをしているのは男3人のみ。

この男友達は私たち被害者をハメるときに使われる人間だった。

仲間ということだ。

この携帯をとにかく利用し最大限いかす必要がある。


ここまでを整理すると

奴の発言

●不動産経営→人に任せている

●父親は元ヤクザ(山口組)

●既婚の妹が存在(子供有)

●年越しは毎年ハワイ

●マンガを読んだことがない

●子供が出来たら結婚

●子育ては田舎に一軒家買ってしたい

●バツイチ

●子供はいない

●銀行口座の凍結

●不動産詐欺をして追われている

●警察に追われているため自分のカードを使えない

●父親に金にもならない空想の世界に時間と金を使うなと言われ六法全書を読んでいた

●スポンサー探ししている杉原杏璃に会ったことがある

●電車に乗ったことがない

●高級車を乗り回し人をはね、元ヤクザのお父さんが代理を送り込み出頭させた


今わかっていること

●窃盗による指名手配がかかっている

●去年いっぱいで1つの指名手配案件は捜査終了

●本名と韓国籍名、生年月日

●郵貯(韓国名義)

●お金がなく服を売っている

●被害者複数

●仲間

●無職、住所不定

●携帯の中身はほぼ偽名による買い物、登録住所

●Jメールというマッチングアプリ登録

●PayPay利用

●宅配によるレンタル収納利用

●セブン銀行口座

●dアカウントの登録

●ブランドサイト

●ブランド買取査定店

●楽天市場、楽天トラベル登録

●Gmailアドレス複数

●auアカウント

●クラウドID

●Safari履歴

●発着信履歴

●Twitterアカウント

●Instagramアカウント


全てID、passを解きこの携帯の中身をできる限り全て暴いた。


そして彼女にロック解除が成功した事などを報告した。


この携帯を最大限活用しなければならない。


とにかく被害者を見つけ出すこと。

そして何かしら新たな情報を得ること。

次の被害者の芽を潰すこと。


ただどういったやり取りをしていたか分からずこちらから下手に動けない。


もしかしたら、関係者かもしれない女性もいるはずだと思い悩んだ日々を過ごすことになった。


そして彼女とまた会う約束の日が来た。


常に頭はフル回転で食欲もなく、睡眠時間を削り対応する日々に疲れ、遅刻してしまい、指定された場所へと向かうとそこは行政書士事務所だった。

子供を連れた彼女や、会って欲しいと言われていた方に謝罪をし、話をした所、彼女の受理されている被害届の件での協力をして欲しいとの事だった。


話が終わり、結果私はこの行政書士の方は使えないと判断をしたのだった。


何故かと言うと、法律に詳しかろうと弁護士ではないからだ。

行政書士の仕事ではない。


話が終わり、また彼女と話をすることにしたが子供がまだ幼く時間的にトイレだろうとまず駅のトイレに籠り、オムツ替えをしあやしながら話をした。


初めて会う、奴の子供は全く奴の面影がなかった。


そこに救われた。


私はもし似ていたらどうしようかと複雑な気持ちでいたからだ。

憎しみが再燃し冷静さに欠くかもしれない、もちろん子供に向けてでは無く奴に向けての憎悪が増し、どうかなってしまうのじゃないかと心のどこかで心配をしていた。


トイレに籠り、ファミレスに入るよりここで話す方が良いかもしれないと思い話をした。


LINEでやり取りをする中、会うのは2回目なのは変わらない。


これからどうするかを話し、彼女の気持ちを確認し、長話になったがその日はそれで帰ることにした。


奴の携帯を手にしつつ、彼の免許証の写メを眺めていた。

この免許証住所は今誰が住んでいるのだろうか。


保険証の住所は、私は個人情報を扱う仕事で管轄内区域だった為、調べられた。


何重にもフィルターをかけ私が勝手に調べたことが分からないよう気をつけた。


住民登録は韓国籍名での登録で、6月の状態ではその住所の住人になっていたが、そこは子供を産んだ彼女名義の家だった。


免許証住所はそれ以前の住所になる。

更に前の被害者じゃないだろうかと考えていた。

まだ住んでいるかはわからないがどうにかして会えないかと考えていた。


そして仕事の日の休憩で、彼女にLINEをした。

奴の父親について名前を確認し私の管轄区域内に存在するのなら調べられると考えたが、調べると対象者が5人目以上複数名いた。


年齢で絞れば約2名だが確信を持てずにいた。


管轄外の区域に存在するかもしれないからだ。


戸籍謄本までは調べられない。

そもそも在日韓国人の時点で戸籍謄本なんか存在しないんじゃないかとも思っていた。


なんとも厄介な奴の素性に苦しんだ。


家に帰り、奴の免許証を再度眺めていた。


なぜ私と同い年で、免許証が青いのかずっと気になっていた。


よく見ると令和元年の秋に免許を取得しており納得したが、人を高級車ではねたという話が嘘なのか、本当であって取り消しになり再度取ったのかは謎だったが、嘘ならなんてダサい男なのだろうか。


免許取得が遅すぎる。


なんだか馬鹿らしくなり笑ってしまった。


在日韓国人、中卒、無職、住所不定。


これだけの要素だけでこんな男に騙されたのかと思うと情けなく、笑うしかなかったが、本当に底が知れるなと思いまた笑いが込み上げた。


この事は彼女にも報告をした。


2人で笑ったのだった。


そして各サイトでの購入履歴を見ると

全て彼の持つブランド服やサングラスは中古であった。


更に馬鹿らしくなった。


何が不動産経営だ。

金持ち?ブラックカード?


偽りの自分を語っている人生に疲れないのだろうか。


それとももう麻痺してるのだろうか。


彼は嘘にまみれているどころかもうそれ以上ではないかと悔しさもあるが笑いが込み上げた日だった。


そうして奴の頭がただの漫画と映画、インターネットのみの知識であり、常習ではあるものの、ただの韓国籍の虚言癖のある、キャバクラ狂いのおっさんだということが明らかになりさらに笑った夜だった。









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