第26話 控訴審判決と色々な思い
昨夜はうまく寝付けず睡眠薬も効かず諦めていた。
気づくと深夜2時になっており、目を閉じるだけのはひとつの事に集中し、ふと目を開けると4:26に目が覚めた。
なんとか約2時間半は眠れたのであろう。
最近は自分を取り戻すこと、やりたいこと、こうでありたい未来を考えるようになっていた。
やりたいことは思ってるよりも沢山あった。
まずは貯金、そして関東へ帰ることがメインであった。
本当に私は関西の土地に肌が合わず、友達もあまり作りたいとは思えない数年間だった。
東京が恋しくて恋しくてたまらない。
その為には貯金だと自然と思えた。
今は食いつなぐ為だけに咄嗟に時給の良い派遣で働いているが派遣というのは保障もなく長期続けられるものでは無いため、手に職をつけたいと思うようになり始め、資格を取りたいと考え始めた。
関東へ帰るには自らの手で作ってもない借金返済が邪魔に感じ始めた。
だが自己破産してしまうと、被害にあっている金額から逃げることは出来るが、事件に持って行けなくなるという可能性、そして約10年信用情報に傷がつき、カードもローンも組めない。
40になる私の未来は約50、51歳になるまでカードもローンも組めなくなるのだ。
これから出来るか分からないが結婚して子供が出来る未来を想像したが得策では無いように感じ、返済していく方向を取ったのだが、正直にいうと精神を病んでいる自分にとってはきついものがあった。
貯金は0で借金と生活費の為だけに働かねばならない。
自分の好きなことが何一つ出来ない。
神社へ行ってもお賽銭を投げるお金すらない。
服を買うことも、漫画を買うことも、髪を切ることも、タイミング悪く壊れたテレビと掃除機、冷蔵庫、調子の悪い洗濯機。
生活する上で清潔さを保つ為の家電、お金のかからない気分転換のテレビも無い。
必要なものすら今現在買う余裕も無いのだ。
自分を見つめ直し、取り戻す時間をやっと考えられる精神を取り戻してきたのに。酷な現実。
被害にあってからこの1年間で、私は心どころか体も壊れていた。
甲状腺機能低下症になっていた。
橋本病だと診断されたのだ。
橋本病は妊娠できても流産しやすい病気でもある。
私はショックを隠せなかった。
ただでさえ高齢出産である女としての体。
私は子供を産む未来があるのだろうか。
毎日薬の服用が必要な為通院費、薬代もかかる。
固定費の見直しをしたいが、引越し代がない。
1番の支出は家賃だ。
私は途方に暮れている。
派遣でいくら時給が良くとも、やっていけない。貯金も出来ないのだ。
余るお金などない。
派遣が決まってから1ヶ月半経ったが節約し続け、何度も支出を見直す日々。
明るい未来など本当にあるのだろうか。
恋愛も当分出来そうにない。
買い物も出来ない。
こんな生活、一体何が楽しいのか。
自分を取り戻す事が出来ても何も出来ない。
だが、勝手に私名義で作られた借金を完済して初めて、明るい未来を歩き出せるのだ。
自分で自分の未来を明るく導かないといけないのだ。
そんな中で私は未来を見据え、資格取得をしたい。
どうしたら良いのか悩んでいる。
そんなことを考えながら朝、仕事の準備をしながらも私は仕事場と逆方向へと向かった。
6月29日。控訴審判決が出るのだ。
結果は【棄却】される事は分かっている。
だが、このクソ男の顛末を見届け、目に焼き付けたい気持ちで高裁へと向かった。
開廷し、
裁判長、裁判官2人
そして警官に挟まれた奴の背を見ながら判決を聞いていた。
【判決結果が重すぎる事に対し控訴し、今事件は~】と数々の犯行を話す裁判官は続けた。
【被告人が被害者に対し返済したものは判明せず、悪質と指摘され同意し、確定裁判にて定めた刑期の理由として、結婚をほのめかし、自身も真剣に付き合っており結婚を考えていたといいながらもそうはせず当初から返済の目処もなく犯行を企ており、被害者には結婚の意思があり、保釈されていながらも返済することも何もせず、1部返済さえせず悪質である。そして被害者は重い刑を望んでいる事から、判決の結果、棄却とする。
しかしこれに納得できない場合、明日から1週間後までに上告することができる。
今裁判での判決は棄却が妥当である。これにて閉廷する】
無言のまま、黒いTシャツとズボンを履いた奴はまた手錠をかけられた。
どんな表情かはわからなかったが、その背を見届け私は法廷を出た。
約10分程の裁判であった。
そして私は仕事へ向かった。
私の今の日常生活へと戻る。
仕事はもちろん本当の理由は言えず、腹痛ということで遅刻を前もって報告していた為、怒られず、今の職場は環境や皆明るく良い職場な為、裁判を見に行っていたとは思えない程、裁判や奴に出会い被害にあったことが逆に非日常的に感じられた。
たわいもない話で笑い、業務をこなし仕事を終え帰宅した。
本当になんであんな男と出会い、付き合い一緒に暮らしていたのか。
どんな罰ゲームなのか。
なんの天罰なのかと考えたが、今になって思う。
奴の言葉や行動になぜ何も思わなかったのか。
奴も愚かだが私もそれだけ愚かなのだ。
人を見た目で判断しては行けない。
本当にそうだと思う。今。
ブランドで固められた風貌に騙され、多々話がおかしい所はあったのに、私はブランドで固められた風貌で先入観、固定観念で信じてしまったのだ。
なんて愚かなのか。
愚かさの代償が
借金と心神喪失、そして健康な体さえを失った。
愚かさもまた罪なのかもしれない。
そうして私は、明日の準備をし多くの抗うつ剤、甲状腺の薬、睡眠薬を飲み
また明日から他人には何事も無かったかのように
普通に振る舞い借金返済のため仕事をする日々を送るのだ。
嘘にまみれた男 eimy @eimy_nonfiction
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