第13話 急展開

公判1回目から約1週間。

彼は保釈申請を出しており、来週には出るとの連絡が舞い込んできた。


私は慌てて奴の携帯からLINEの登録されている人間に報告LINEをし、奴が行きつけの美容室にも連絡をした。


一旦落ち着いたと一息ついた途端、またLINEが鳴り

【今日10月22日付けで釈放されるようです】と連絡が来た。


予想もしていなかった展開に私は身の危険を感じた。


奴が自由になる。


いきなり現れた身元引受け人、保釈金を払う人間が動いたのだった。


第一回目の後半で、次回の公判日を来月にしたのはこの事があったからなのだろうか。

でも住所不定である彼の保釈申請の許可が降りることは想像していなかった。


私はまた再度、奴の携帯を手に取りそれぞれに連絡をし直した。


奴が出るのなら私は危ない。

奴のフリをしてLINEトーク履歴を仲間から送らせたこと、それぞれLINE登録されている人間に連絡していること、ロック解除出来てることも、携帯を持っていることもバレる。


それに対して奴はキレるかもしれない。

うちの鍵をまだ奴は持っている。

そして奴はチェーンをビニールテープで数分で開けられる。

私は危ないのかもしれない。


だけれども、各被害者の不安は計り知れない。


うちに来るのなら、暴力を振るわれ傷害で再逮捕に繋げれば各被害者の不安は除かれる。


私はその可能性に賭けたい。


捕まってから起訴公判まで3ヶ月かかった。

それが微々たる保釈金で釈放されきっとさらに被害者は増えるだろう。

各被害者と連絡をとり話を聞き、警察に行くよう促した日々も、携帯の中身を調べあげた日々も、警察での聴取や調書、対応の日々も、起訴に持っていけたことすらも水の泡になるかもしれない。


釈放され自由を得たことで出廷せず公判は停止するかもしれない。


奴は在日韓国人で名前を変えられる。


逃亡すれば、検察庁の担当部署が捜査することになるが拘束まできっと時間がかかる。


こんな事が起きていいのか。

法律とはなんなのか。

許可をした裁判官は何を考えているのか。


憤りを隠せない。


とりあえず、私は奴の携帯の電源を切り隠した。


これからまた頭を使い、神経をすり減らす日々が始まるのかと思うと気持ちが重くなった。


私は今回の事でなのか心労からなのか今や体重は15キロ減ってしまった。


この苦しみも裁判官は知らないのだと思うと腹が立って仕方がない。


奴がうちに来る可能性があるのなら賭けるしかない。


私の件では立件出来なかった。


傷害なら書面での証拠など要らない。


この可能性に賭けたい。


どうか、神様がいるのならみんなを助けて欲しい。


私は家に引きこもる準備を始めた。


犯罪者の心理は私にはわからない。

何をしでかすかも予想すらできない。

うちに来ないかもしれない。


それでも、この可能性に賭けたい。


睡眠薬を飲むのを辞め対応出来るようにしないといけない。

そして暴力を振るわれたという時の証人もほしい。

私はできる限りの準備をすることにした。


各被害者にはそれぞれ警戒や注意をするように促した。


あとは読めない動きをする奴の行動を待つしかない。


それしか釈放された今出来ることはもうない。


神様どうか、どうか奴の味方にはつかないで欲しい。


この願いが叶うのなら私はもう何も願うことは無い。


これからまた私はこの願いに、可能性に賭けるばかりだ。


どうして犯罪者に保釈請求の権利など存在するのか。

法律を作った人間に対して怒りが込み上げてたまらない。


ただただ奴が現れる日を待つのは苦痛でたまらない。


今更裁判官への苦情を出しても釈放の許可は棄却されない。


どうしてこんなにも被害者に対して優しくないのか。


この世は間違っている。


そう感じてならない。


私は今月誕生日を迎えるのになんて最悪な展開なのか。



無謀な賭けに神経をすり減らす日々が始まる。




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