第12話 第1回公判

10月12日15時より一回目の公判が始まった。

私は財布が見つからず手間取り入室はギリギリで入ったため、手錠を外される彼と目が合った。

マスクとメガネ姿の奴の目は驚いていたがすぐに私は目を逸らした。

そして私は全体を見渡すため1番後ろの席に座った。

傍聴席は女の子が多いだろうと思っていたが女の子の倍男性がいた。その中で奴の仲間 は2人来ていた。

公判が始まり

検察官の女性は【K、198〇年○月✕日生まれ、国籍は韓国で中卒後、飲食店を転々とし、現在無職、住所不定です。詐欺での執行猶予2年半が下されており今回逮捕、起訴になります。】

奴の素性や国籍など裁判官から確認され

奴は【間違いありません】と答えた。

サラサラだった金髪はパサパサでチリチリなっておりプリンになっていた。身なりは黒のTシャツにメガネ、マスク姿だった。

大人しく座り、裁判官から黙秘権についての説明があり【わかりました】と静かに答えた。


そして小さな声で検察官は、ツラツラと罪について話し始め、執行猶予中の犯行だと【不動産経営と名乗り、不動産取引で発生したキャンセル料等と言い被害者Aから200万を返済能力もないのに借り更に被害者Aからキャッシュカードを借り50万をみずほ銀行○○店にて下ろし、計250万を、詐取】


始まると同時に奴の仲間は寝始めており全く聞いていないだろうと腹が立った。


裁判官は静かに【間違いありませんか】との問いに奴は【間違いありません】と答えた。

そして検察官は【調査した結果存在しない不動産会社、架空の不動産取引等の証拠を提出物します】【返済金○月✕日銀行からお金を下ろしたとのLINEを被害者Aにし、さも返すかのようなやり取りの証拠も提出します】


私は周りを見渡した。

どう見てもおかしい。

どうしてこんなに男性が多いのか。

2名は奴の仲間であり、奴の接見に行っていた2人だった。その他の男性人数は女性の倍いた。

被害者女性は把握していたが閑散とするはずの傍聴席は男性でほぼ埋まっていた。その中で女性は私含め4人。

この状態はなんなのか。

引っかかっていたが、裁判は検察官がツラツラと話し、約15分程で、裁判官が【追起訴についての日程ですが10月末はどうでしょうか】という問い掛けに、奴の弁護人は【出来れば来月の頭にお願いしたい】と話し【それでは11月頭14:30から50分枠の予定で】と話し、また彼は手錠をかけられた。



裁判が終わるとさっさと出ていった奴の仲間2人を追いかけることが出来なかった。

外へ出ると被害者女性が男性とおり、話をした。彼女とはLINEと電話でのやり取りだった為、会うのは初めてだった。彼女の連れた男性はスーツ姿で爽やかな男性だった。仕事は弁護士だった。


男性は【恐らく前の刑もつくので5年は出られないでしょうね】との事だった。

そんな話をしている中、さっさと出ていった奴の仲間が、部屋の外に貼られている奴の名前の書かれた紙を確認しに来たのか何度か見返していたため、話しかけた。【あれ、Iちゃん捕まってたんじゃないの?出られたんだね、心配してたんだよ】と話しかけると彼は私を認識していなかった。

もちろん今年の1月に1度しか会っていないのでそれはわかりきっていた。

彼は慌て【え?!なんで?どういうこと?】と答え、私は【Kから春先に〇ちゃんは捕まって連絡が取れないって6月まで言ってたから】との、答えに【えっ?!!なにで?!】と言うので【脱税で捕まったって聞いてたよ】との答えに、彼は【え?!ないない!クリーンです!ありえないです!】と全否定した。私は【おかしいなぁ…】と答えると【失礼します】と苦笑いで去っていった。この事が嘘なのは知っている。

彼は奴の保証人等を断ってることも知っている。経営しているバーが開店していたことも知っている。


なぜそんな嘘を奴はついたのかと関係にヒビを入れるため、私はわざと嘘だと知りながらも奴の仲間である彼に話したのだ。

彼は被害者女性を全員奴から会わされているが傍観者として、私は奴の仲間だと判断していたため関係を壊したいと思っていた。


本当は裏ではこう言われているということも話したかったが、話せなかった。

その後、1人女性が部屋へ入ろうとした所、【まだ裁判やっていますか】と聞かれたため、【何時の回ですか?】と聞くと奴の裁判を聞きに来たようだった。【もう終わりましたよ】と話すと、残念そうな彼女に【被害者の方ですか】と聞くと【はい】と答えたため話を聞いた。11月に48万取られていた女性だった。私が会っていない女性被害者はあと2人だった。その2人のうち1人は学生のため来られない事は知っていた。あとの1人は動いているかどうかもわからない。そして私たち3人はお茶をすることになり話した。


去年11月に被害にあった女性は一昨年から某マッチングアプリで出会っており長い付き合いだった。もちろん警察にも行っているが被害届の受理はされていなかった。

そして男性の多さに疑問を持つのはやはり私だけではなかった。

私は裁判が終わった後、1階で打ち合わせをしていた男性に話しかけた。彼はやってもいない罪を全て被せられていてと話し、急いで話を切り上げ出ていってしまった為、詳しくはわからなかったが、男性の被害者がいることを今日初めて知ったのだった。他の男性もそうだろうか。私の知らない何かがあると思った瞬間だった。警察の言う余罪は、詐欺や窃盗だけではなかったのだ。そして恐らく罪を被せられた彼は被害届の受理をされていないのかもしれないと思った。1階で弁護士だろう人間と【こうするしかない】と打ち合わせをしていたからだ。まさか女だけでなく男性も騙していたとは思わなかった。

傍聴席にいた何人が被害者なのだろうか。次回の公判まで約1ヶ月、それまではわからない。私は再度公安委員会に書面を送ることを決めた。

お茶をしながらピザを食べたり話をしていたが、帰ったら起訴できた彼女に報告を忘れずする事を考え、11月に被害にあった女性とも連絡先を交換し、電車に乗り別れた。

家に着くなり、起訴に持ってけた彼女にすぐ連絡をした。

奴の状態や態度、裁判の流れを伝え、奴の仲間以外は女性は数人でそれ以外は女性の倍近く男性で傍聴席が埋まっていた事も話した。

そして奴の仲間に【捕まってたんじゃなかったの?】と話しかけたというくだりも話した。奴の仲間は、公判が始まっても寝ていた為、なんの為に来たのかと彼女と話した。

次回の公判までに私は公安委員会にまた書面を書き、1ヶ月近く連絡を取っていない警察との連絡をとるよう頑張るといい、どこまで聞き出せるかわからないがなんとか余罪について聞いてみると話した。

私は明日からまた再度折れるかもしれない心を奮い立たせなければならない。そう思うと怖かった。

そして私は眠りについた。


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