第11話





「ねぇねぇ、昨日たまたまテレビつけたら

『時代に追いつきたい!』っていう俳優さん2人がやってる番組だったからとりあえずそのまま見てたの~!


そしたら廣野くんがナレーションでね、…あ、廣野圭斗くんわかる?

私一回テレビで共演したことあるんだけど…」



予想もしていなかった相手から、昨日の今日でこの話。


『時代に追いつきたい!』は、お察しの通り蒼人くんと雅紀くんの番組名だ。


今日は雑誌の撮影で、今はちょうど撮影の合間だ。


声をかけてきたのは星南で、星南に2.5次元の話はもちろんしたことなんてないし、私がオタクだってことも彼女は知らない。


オタクなんて言葉からかけ離れた存在の彼女から、共演したことがある圭斗くんの名前が出てきたことは100歩譲って分かるとしても、


『時代に追いつきたい!』の話が出てくることはだれが予想できたでしょうか…?



「うん、わかるよ」


様子を伺いながら返事を返す。


「よかった!それでね?出会ってしまったの…運命の人に…!」



ちょっと待って…!?

突然のことすぎてびっくりしているけど…


もしかして星南も蒼人くんのこと好きになった……とか!?



「伊原雅紀くん!もうめっちゃくちゃかっこよくて!超タイプなの!!廣野くんとかが出てる2.5次元舞台?の俳優さんみたいなんだけど、絶対舞台観に行きたいんだよね!!


…めぐみんは知ってる?2.5次元舞台!」



まさか、まさか…こんな日がくるなんて!



「星南!!最高すぎ!!!」


彼女の手を強く掴んで、私は叫んでいた。


「え!どうしたのめぐみん…?」


勢いよく手をつかまれたことと、私が叫んだことでかなり驚いた様子だったが、私にとっては飛んで喜びたいくらいの出来事なのだ。


「言ってなかったけど、私2.5次元舞台大好きで、『時代に追いつきたい!』の紀田蒼人くんのファンなの!!」


「えー!!!そうだったの!?まさかこんな身近に2.5次元舞台の先生がいたとは…!」


「先生って(笑)私この前アフタヌーンの収録で2人とたまたま一緒だったんだけど、雅紀くん、すごくいい人だったよ!!!舞台、絶対観た方がいい!本当に最高だから…!!


…星南ってアニメとかみたりするっけ?」


「羨ましい!!あたしもご一緒したかったなあ〜!!!アニメか~!最近流行ってるのは何個か見たことあるよ~!」


「そっか!2.5次元舞台って、漫画、アニメ、ゲームが原作のものを舞台化するってイメージなんだけど、そういうの抵抗なかったら、今度舞台一緒に行こうよ!!」


「え!いいの!行きたい~!!先生、これからいろいろ教えてください~!!」



思わぬところで舞台仲間ができた。


こうやってファンは増えていくのだとしみじみ感じていた。


「ちなみにめぐみん、今日の夜は空いてる??」


今日の夜は…晴稀くんとご飯の予定だ。


蒼人くんとの共演の話を聞いてもらう約束をしていたのだ。


「今日は予定があるんだけど…、ちょっと待ってね!」


「あ、予定あるなら全然いいよぉ~!」


「ううん、話の合う仲間だから、ちょうどいいかもって思うの!」


早速経緯を晴稀くんにメッセージで送ると、ちょうどタイミングが良かったのか返事はすぐに返ってきた。


「うん!大丈夫だって!お店の場所はメッセージで送っておくね!」


「ありがとう~!楽しみ~!昨日の今日でこんなに色々知れるだなんて!感謝感謝~!めぐみんの好きな蒼人くんはどんな人なの?」


「蒼人くんは舞台上だとクールな感じがするけど、ちょっと天然で可愛い人だったよ!」


「なるほどなるほど、この前の収録で、お話したんだねぇ~!蒼人くんは所謂“推し”なの?それとも“LOVE”なの?」


「蒼人くんは…推しだよ!」


「どっちも好きってことには変わりないし、めぐみんも芸能人なんだから、好きになってもいい間柄だと思うけどな〜!

あ~!雅紀くんは彼女いるのかな~♪」


「星南は雅紀くんの彼女になりたいの?」


「うん~そうだねぇ~。一目惚れに近い感覚だったから、できるならお付き合いしたいよね~♪」


星南と私では感覚もかなり違うだろうから、

星南には星南の気持ちを尊重してほしいと思う。


私はアニメが好きで、キャラクターが好きで、そのキャラを実在させてくる蒼人くんが好き。


もちろん蒼人くん本人も大好きだけど、恋と呼ぶには少し違うように感じる。


本人に会ってそう思うようになっていた。








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