第9話
CMがはいり、クイズのコーナーを乗り切ったことでかなり気持ちが楽になっていた。
「冬城さん!モンブラン残念でしたね!」
雅紀くんが声をかけてくれ、蒼人くんも近くにやってきた。
「残念ですけど、楽しかったですね」
蒼人くんの喜ぶ姿を間近で見れれたので残念な気持ちはほんの少しだけだった。
企画を組んでくれた番組に感謝し、出演を決めてくれた光莉さんには感謝しても足りない。
蒼人くんと同じ番組に出るなんて心臓が持たないと思っていたけれど、
いざ始まってみると楽しいことも多い。
「あ!ちょっと俺挨拶しに行ってきますので抜けます!」
そういって雅紀くんは芸人さんたちがいる方に走っていった。
そして私と蒼人くん2人…
2人!?どどどどどどうしよう…
内心わたわたの私をよそに、 蒼人くんは何も気にしていないように見える。
「まさはお笑い大好きなんですよ。まあ僕も好きですが、今は冬城さんとお話したいなと」
……!?
私とお話って!?
どういうこと!?
ただでさえ2人にされて困っているのに、これ以上困らせないで!!!!
「へ、へぇ〜!お笑い好きなんですね〜!」
そう返すのが精いっぱいだった。
むしろ平然を装って返事を返した私を褒めて欲しいと思う。
「よかったら半分食べますか?甘いものは誰かと食べるのが美味しいですよね。 あ、 そろそろCMあけるみたいです」
そういってモンブランを私に渡すと、何もなかったかのように雅紀くんに合流していた。
え…
蒼人くんの食べかけのモンブラン……?
思考が停止していると光利さんがモンブランを私の手からとり、
「これ持ってるから!! 早く戻って!!」
その言葉で我に返り、仕事モードに戻った。
とりあえず今は仕事のことだけを考えないと!!
その後も撮影は順調に進み、 エンディングの時間がやってきた。
「それでは冬城さんから告知をお願いします!」
「ドラマ『私たちの恋日記』が本日22時から第8話が放送です!是非ご覧になってください!」
「ありがとうございます!では伊原さんと紀田さん、お願いします!」
「はい!この度2人で番組をさせて頂くことになりました。今流行りのものを紹介したり、探したり…と、楽しい番組となってます!」
「放送は来週火曜日の23時30分からです。お楽しみに」
「ありがとうございます!ではまた明日!グッドアフタヌ〜ン!!」
撮影が終わり、共演した方々の挨拶をして楽屋に戻った。
楽屋には既に光莉さんの姿があり、机には例の食べかけのモンブランが置かれていた。
「めぐみお疲れ様〜!クイズよく答えられたね!!偉い!!」
「ありがとうございます!光莉さんのおかげです!!お疲れ様です!!
本当に答えられない!どうしよう!?って思ったんですけど、なんとか出ましたね…!」
「うん、うん!これからバラエティーもたまには出るようにしていきましょ!めぐみのファンからの声も多いんだから!」
「そうですね…わかりました!頑張ります!」
実際自分がファンだったら、いろんな顔が見られるバラエティー番組にも出演してほしいと思うのはよくわかるのだ。
「それで〜?この食べかけのモンブランは…?」
さっきまで喜んでくれていた光莉さんも、このモンブランについては気になっていたようだ。
「あー…それなんですけど…」
私が話そうとしたその時、
<コンコン>
ドアを叩く音が聞こえた。
すかさず光莉さんがドアを開けると、
かなりテンパった様子の男性が目に入った。
「お、お疲れさまです、紀田蒼人のマネージャーをしております、速水と申します。お疲れのところ突然申し訳ございません…。
蒼人が食べかけのモンブランを冬城さんに渡したと言っているのを聞いたものですから、とにかく謝罪に伺わないとと思いまして…」
「あ!あのモンブラン、紀田さんから頂いたものだったんですね〜!そんな謝罪だなんて大丈夫ですよ!」
「いや、本当に申し訳ございません。食べかけのものをまさか冬城さんにあげるだなんて…失礼極まりないです!!」
蒼人くんからもらったモンブランと知って、光莉さんがニヤっと笑ったのが分かった。
「いえいえ、めぐみも甘いもの大好きなので嬉しいと思います〜!ちょっとびっくりしたとは思いますが」
「本当に申し訳ないです!!本人に謝らせるべきなんですが…って、あ!蒼人!!ちょっとこっち!!」
ちょうど蒼人くんが近くを通りかかったようだ。
呼ばれた蒼人くんはどういう状況なのかを理解しているようだった。
「お疲れ様です、えっと、食べかけを渡してすみませんでした。」
衣装から私服に着替えた蒼人くんは少ししょんぼりとしていた。
その姿を見て、本当にただ純粋に甘いものが好きな私にもケーキを分けてくれたのだと思った。
気が付くと私もドアの方まで来ていて、蒼人くんの目の前にいた。
「モンブラン、ありがとうございます。本当は食べられなくて残念だったので、すごく嬉しいです。」
私のその言葉を聞いて、蒼人くん少しうれしそうに笑った。
「冬城さんまで、お優しくして頂き本当にありがとうこざいます。蒼人少し天然というか、抜けているところがありまして…。
またご一緒させて頂くことがあれば、お礼させて頂きます。では」
「またお仕事ご一緒できる日を楽しみにしてます、お疲れ様でした」
その言葉を最後に二人は次の仕事へと向かっていった。
「蒼人くん、めぐみより年上だったっけ?」
「私の3つ上なので、27歳…?舞台に出ているときと全然違ってびっくりしました」
「でも悪い感じはしなかったんじゃない?」
「それは……もちろん」
私の中の蒼人くんは、ちょっとクールで落ち着いた男の人って感じのイメージだったけど、
実際の蒼人くんは甘いものが好きで、すこし天然な可愛い人なのかもしれない。
新しい蒼人くんの一面を知ることができて、ファンと芸能人より少しだけ、ほんの少しだけ近づけた様な気がした。
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