第5話





家に帰り、ご飯を食べてまったりしていると、ケータイが鳴った。


画面には“鈴風すずか”の名前が表示されている。


「もしもし〜」


「あ、めぐみ〜!!今大丈夫?」


「うん、大丈夫〜!」



鈴風は高校時代からの友達だ。


彼女が2.5次元舞台を勧めてくれたことをきっかけに今の私がある。



「今日キラステ行くって言ってでしょ!!!で!!!どうだった???」


「え、もうね、、、言い表せない。最高すぎた!!!キラキラだし、みんな存在したし、かっこいいし、楽しいし!!!!最高すぎて、語彙力!!!!」



「でしょ〜!私も今日も行きたかったなあ〜!!!まもるんヤバくなかった??」


「控えめに言って、ヤバすぎた!!!あの可愛かった、弟みたいだった颯汰くんが…。完璧にまもるんをやってくれるなんて、お姉ちゃん感激!!!」


「お姉ちゃんって(笑)」


「いやいや、颯汰くんは私の弟みたいなものだもの〜!」


「私の推しも見て来てくれた?」


「もちろん!!!超王子様だったね……!!何してもほんとに似合うし、様になると言うか!」


優雨ゆうくんほんと完璧!!!心葵かなた本人にしか見えない!!心葵の再現度やばいよ!!!あんな王子セリフさらって言って似合っちゃう人いないよ〜!!!」



心葵はNemophilAのリーダー。

白髪で儚げな美少年。


そんな心葵を完璧に演じているのが、鈴風の最近の推し俳優“東 優雨”。


中性的で可愛らしいルックスでファンを虜にしている。

元アイドル出身。


舞台に出るようになり俳優業に専念する為アイドルは引退したが、アイドル時代から人気で今でもその頃のファンが多い。


「優雨くん、完璧でした!!本当に。今日誘ってくれた晴稀くんには感謝しかない、、!」


「関係者席で見に行くって聞いた時、めぐみも芸能人なんだな〜って思ったよ(笑)しかも橘晴稀に誘われていくなんて!」


「私も一応芸能人やらせて頂いてますんで(笑)」


「そんなあんたと友達で、オタ活仲間なんて、わたしも凄いかも(笑)」


「自信もって!!そして、これからもよろしくね!!!」


「こちらこそ〜!まあ、色々気をつけてね?橘晴稀と一緒に出歩くのがまず危険だからね?いつ写真撮られるか分からないんだよ?」


「うん、そこはちゃんと気をつけるよ。晴稀くんに迷惑かけちゃいけないしね。他の舞台行く時も私だってバレないように必死なんだから…」



純粋に好きなものを見に行くだけでも、

どこで何が起こるか分からない。


マスコミはいつでもスクープを探しているし、舞台を見に行っていたからと言って何も後ろめたいことは無いが、どんな風に記事にされるか分からない以上、警戒するに越したことはない。


ファンの子達に私だとバレた場合、

どうなるか分からないけど、炎上する可能性だってある。


芸能人っていうのも大変だ。



「それでも蒼人くんの舞台には足繁く通って…。本当に蒼人くん好きだね〜!」


「まあね?初めて見た舞台の推しキャラを演じてくれてたからって言うのはもちろんあるけど…。配信とか舞台裏とか演技してない時もめちゃくちゃ素敵なんだよね」


きっと今の私は恋する乙女のような表情だろう。


「めぐみなら蒼人くんと付き合って結婚だって夢じゃないんじゃない?同じ芸能人な訳だし。」


「いやいや、無理でしょ!?蒼人くんと共演すらしたことないし…。私と蒼人くんじゃ釣り合わなさすぎ!!!!」


「いやいや、あんたと釣り合わなかったら、世の女子の大半は釣り合わないよ(笑)そのうち共演あるかもじゃん〜!最近2.5次元俳優もテレビ出演とかドラマとか多いし!!」



蒼人くんと付き合いたいって気持ちが無いわけじゃないと思うけど……


そんなの考えただけ心臓が飛び出て死んでしまいそうだ。


舞台上ででしか生で見たことない人と付き合うなんて、恋愛経験のない私にはハードルが高すぎる。



「共演か〜。そんなの、テンパってすごい恥ずかしい思いをする未来しか見えないよ〜!!」


「まあまあ!共演することもあるかもしれないんだから!!それは仕事なんだから!!そこから芽ばえる恋…!素敵じゃない!」


「もう!他人事だと思って〜!!」


「でも俳優ファン過激な子とかもいるから、気をつけてね?優雨くんのファンは結構過激な子が多いし、蒼人くんファンはあんまりそう言うイメージないけど…」



優雨くんはアイドル時代にファンサービスでハグして写真撮ったりしていたこともあり、

本当に恋している、所謂“リアコ”と呼ばれるファンが多い。


優雨くんに比べれば、蒼人くんのファンは落ち着いているイメージだけど、


本当に恋してる子ももちろんいるはずだ。


私だって…


本当は蒼人くんに恋してるのだろうか…?



それとも本当に“推し”として好きで応援してるだけなのかな…?


自分のことだけど、気持ちが分からない。



本当の蒼人くんを知らない。舞台上にいるキラキラした蒼人くんしか知らない。



「うん、気をつける。ありがとうね!」



その後も舞台の話をしたり、推しの話をしたりして、鈴風との電話を終えた。








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