第4話




木曜日。


私たちは会場の近くではなく、少し離れたところで落ち合ってから、向かうことにした。



待ち合わせ場所に向かうと、晴稀くんらしき人の姿が目に入った。


近くによって、間違いなく晴稀くんであることを確認すると、後ろから小さな声で話しかけた。



「晴稀くん〜!おはよ!」


私の声に晴稀くんが振り返る。


「めぐみちゃん、おは……、え?えっと…。めぐみちゃんであってる?」


私を見るなり、晴稀くんは混乱の色を見せた。


「合ってるよ〜!どう?これならバレなくない?」


「びっくりしたー…。めぐみちゃんの声がしたと思ったら、男の人だったから。めぐみちゃん男装似合いすぎるよ…」



晴稀くんには何も言わずに来たが、反応からみてうまく男装できてるみたいだ。


「えへへ。実は前に撮影で男装させてもらって楽しかったから、メイクさん達に色々教えてもらったんだ〜!」


「そうだったんだね!でも確かに…、これならバレないね!」


「でしょ!でも晴稀くんは“橘 晴稀”だってバレると思うから、私の事めぐみちゃんじゃなくて、“めぐみ”か、“めぐみくん”って呼んでね?何処で会話聞かれてるか分からないから!」


「あ。そっか!わかったよ、気をつける!」




会場につくと関係者用の受付で受付を済まして、中に向かった。



「ねえ!!!今の“橘 晴稀”だよね?超格好良かった〜!!」


「ね!!受付できてラッキーすぎる〜!!一緒にいた人誰かな?類は友を呼ぶって本当…。一緒にいた人も超イケメンだった!!!」


「それな!!それにしてもこの舞台に仲良い俳優さんが出てるのかな〜?」




席に着くとすぐに暗くなり、舞台が始まった。


キラプリの舞台は今作で2作目。


前作の振り返りが少し入りながら、本編へと話が進んで行った。



“今はアイドル戦国時代。毎年何グループものアイドルがデビューして、解散してを繰り返している。その年最も輝いていたグループに送られる『プリンス賞』。プリンス賞を受賞したアイドル達はその年のプリンスとして、様々なイベント、テレビ出演などが約束されるのだ。”



ゲームでは好きなグループを選択して、そのグループを育ててプリンス賞を目指すと言ったものだが、


舞台ではメインストーリーを中心に、話が進んでいく。


ストーリーパートと、ライブパートがあり、ライブパートになるとペンライトで会場が照らされる。


キラプリのみんながいる!!!

出会えたことに感謝して舞台を楽しんだ。



話は終盤になり、もうすぐ颯汰くん達がでてくる。


楽しみすぎる!


頑張って!!颯太くん!!


心の中で颯太くんにエールを送った。




“次のサマーフェス、『Selene《セレーネ》』と遂に同じグループになるな。”


“『Selene』は4人組のダンスパフォーマンスアイドルだよね?”


“そう。プリンス賞も受賞したことある実力派グループだ。”



メイングループ『IRIS《アイリス》』のメンバーの会話が終わると、舞台は暗転。



スポットライトが当たった時には『Selene』の姿があった。



会場から歓声が上がる。


彼らは出演が決定決まっていたわけじゃない、言わばシークレットゲストと言ったところだ。



“お嬢様方、お待たせました。それでは『Selene』のライブをお楽しみください。”


そう言って彼がウィンクをすると、曲が始まった。


ん!!!!!


これは!!!!


まもるんが居るーー!!!!


かっこいい!え!!!まもるん存在した!!!



颯汰くん、最高すぎるよ………


ありがとうございます……。


Seleneのシークレットライブが終わると、今回のキャストが全員出てきて、最後のライブパートが始まった。



“まだまだ盛り上がれるかー???”


“僕たちと一緒に楽しみましょう!!”



曲が始まると、ステージでパフォーマンスを行うグループ、客席に降りるグループがローテーションやってきた。



「きゃーーー!!!!」


私たちの近くに1番に来てくれたのは、『IRIS』のみんなだった。


“みんな今日はありがとう”


“ IRISをこれからもよろしくね”


“最後まで楽しもう!!!”


キラキラの笑顔でファン達に応えている。



IRISが去ると、正統派王子様グループ『NemophilA《ネモフィラ》』が回ってきた。


“お姫様達、今日はありがとう”


“また是非お越しになってくださいね”


“私達がいつでもお姫様達をお迎えしますよ”



白い衣装が似合いすぎている。


『王子様』という言葉がピッタリすぎる3人に手を振っていると、少し離れた所から、また別のグループがやってきた。



バンドアイドルグループ『MeRaki《メラーキ》』だ。


舞台でも生演奏で、キャストたちも楽器のできる人から選ばれている。



“盛り上がってるかーー???”


“まだまだ行けるでしょ??”


“俺達についてきな!!!”


“今日はありがとうな!!”



最後にやってきたのは、『Selene』。


“お嬢さんたち、今日はありがとうな!”


“僕たちを1番応援してくれると嬉しいな”


“またお会いしましょう”


“お嬢様方にとって素敵な日になっていたら嬉しいです”


颯汰くんが、晴稀くんに気づいたようで、こちら側にウィンクと投げキッスを飛ばしてくれた。


「きゃーーーーーー!!!!!」

「ぎゃーーーーーー!!!!!」


同時に悲鳴とも取れるような歓声で会場が包まれた。


ま、まもるんーーーっっっ!!!!


顔が良すぎる、、、


まもるんがいる、、、!!!



叫びたい気持ちを抑えて、心の中で大絶叫していた。




舞台が終わるとスタッフさんたちが気を使って下さり、颯汰くんの楽屋まで案内してくれた。



「お疲れ様です」


晴稀くんがそう言いながらドアを開けると、颯汰くんの姿はなく、Seleneの残りの3人がいた。



「え!?もしかして“橘 晴稀”さんですか!?」


「えっと、そうです」


食い気味に話しかけられ、一歩下がるように晴稀くんが答える。



「え!なんでなんで!?!?橘さんが舞台見てくださってたなんて感激です!!!」


「橘さんのドラマ見てます!」



「ありがとう。でも、今日の舞台凄かったよ!僕もとっても楽しませてもらいました。」


「橘さんにそう言って貰えるなんて光栄です!!!」



3人に囲まれるて会話を交わしていると、ドアが開き彼が中に入ってきた。



「あ!晴兄!!!」


「颯汰!お疲れ様」


「うん、見に来てくれてありがとう〜!」



ふたりの会話を見て固まっていた3人のうちの1人が口を開いた。


「も、もしかして、颯汰と橘さんって…」


「うん、兄弟だよ?言ってなかったっけ?」


「聞いてねーよ!なんだ、そういう事か!!!


「突然橘さん楽屋来てびっくりしたわ!!!」


「あはは、ごめんごめん」



会話に入れず、楽屋に興味津々の私は、周りを見て感動していた。


これが舞台の楽屋!!


蒼人くんもこの部屋使ったことあるのかな〜!なんて。


そんな私に颯太くんが気づき、声をかけてきた。




「えっと…?そっちはもしかして、めぐみちゃん?」



「え!なんで分かったの??」



まさかバレると思っておらず、素の声が出てしまった。


「え!来てくれたんだ〜!久しぶりだね!ありがとう〜!」



私たちが高校1年生の時、颯汰くんは小学6年生だった。


颯汰くんは私にとっても弟のような存在なのだ。


バレてしまったならいいかと思い、素で返事をした。



「颯汰くんが出るって晴稀くんに聞いてね!!颯汰くん、超格好良かったよ!!!」


「ほんと??嬉しい!!」



「“めぐみちゃん”って…。違ってたら凄く失礼なんですが、“冬城めぐみ”さんですか…?」


恐る恐る問いかけられた。


「あはは、バレちゃいましたか〜!」



「えーーー!!!俺、超ファンです!!お会いできて嬉しいです!!」


「橘さんに、冬城さんに…。颯汰、お前もしかして、凄いヤツ???」


「えっへん!凄いヤツかもね〜!(笑)」


「えっと、ふたりはお付き合いされているんですか?」


「え!?そうなの!?晴兄ぃ!!聞いてないよ〜!!」



その質問に1番びっくりしていたのは颯汰くんだった。



「そんなわけないよ、颯汰、めぐみちゃんに失礼だろ」



晴稀くんと恋人に間違われて嫌な気持ちになる人なんて居ないと思うけどな〜。


そう思いながら声には出さなかった。



「晴稀くんとは高校生の時からモデルの仕事とか一緒にしてて、仲が良いの!その繋がりで颯汰くんともね!」


「そうだったんですね〜!」


「おふたり、お似合いだと思ったんですけどね〜!!」









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