私だって推し活したいっ!!!
冬空 幸
第1話
小さい頃から背が高いことが嫌だった。
背の順はいつも一番後ろで、
背の低い友達が可愛くて羨ましかった。
大人っぽい、背が高くてかっこいい、落ち着いてるね。
ずっと言われてきた言葉。
その言葉が嬉しくない訳じゃない。
顔立ちも可愛いよりは綺麗系。
実年齢より歳上に見られることなんて、
当たり前だった。
高校生の頃、親の仕事の転勤で東京に引っ越してきた。
母と買い物に出かけていた時、
モデルの仕事に興味ありませんか?
とスカウトされたことをきっかけに芸能界へ。
今、
「おはようございます」
「めぐみ!おはよう!今日も撮影頑張ってね」
「はい!ありがとうございます」
私に声をかけてくれたのは、マネージャーの
灰崎
光莉さんは、モデルを始めた時から私のことをサポートしてくださっている。
今では私専属のマネージャーだ。
今日は朝から専属モデルを勤めてるいる雑誌の撮影だ。
「冬城さん、おはようございます」
「真嶋さん、おはようございます。今日もよろしくお願いします。」
真嶋さんはお世話になっているメイクさん。
彼女のメイクで私はいつも表舞台に立っている。
「あ!これCHANELの新色ですか?可愛い〜!」
「そうなんです!冬城さんに似合うと思って、今日はこれでいきましょう!」
メイク、ヘアメイク、衣装に着替えたら
私は、モデルの冬城めぐみだ。
「ハイカットー!めぐみちゃん!今日も最高だったよ!お疲れ様!」
「ありがとうございます!お疲れ様です。」
「冬城さん、お疲れ様です」
「お疲れ様です」
すれ違えば名前を呼んでもらえるほど、
私もこの業界が長くなってきた。
16歳、高校1年生の時にスカウトされて、
今年で24歳になる。
最初は分からないことだらけだったし、
どうしたら上手くやれるのか分からず泣いてしまうことも多々あったが、
今ではモデルの他に女優として、ドラマや映画にも出演している。
撮影現場を後にして、光莉さんが待っている車に乗り込んだ。
「めぐみお疲れ様〜!」
「光莉さんもお疲れ様です〜!」
車に乗ると、最初に必ずすることがある。
「スマホ!スマホ!」
「あ、そういえばなんか情報解禁されてたよ〜?」
「え?ちょっと待ってください、言わないで!!!自分で確認したい!!」
“『庭球!the Stage』夜風 唯月役で出演させて頂くことになりました。
大好きな作品に出演できることを本当に嬉しく思います。
応援よろしくお願いします!”
「庭球きたーーーーー!!!!!え!唯月くん役???超似合う!!!最高!!!おめでとう!!!!あ〜!!!絶対見に行きたい!!!」
「そうそう、庭球。やっぱり知ってるのね〜」
「もちろん!!!最近めちゃめちゃ人気の少年漫画ですよ!!タイトル通りテニスの話なんですけど、蒼人くんが演じる唯月くんは、主人公のライバル役なんです!!!私の推しが、唯月くんなんですよ!!!推しが推しを演じてくれるの神すぎません???あー!もう本当に最高!!ありがとうございます!!」
「……相変わらず、本当のめぐみはオタクね〜。さっきまで撮影してた人とは思えないわ。」
「オタクで何が悪いんですか〜?誰にも迷惑かけてないです〜!」
表舞台ではキラキラのモデル、女優としての顔。
だけど本当はアニメや漫画が大好き。
モデルの仕事を始めたばかりの頃、上手くいかず悩んでいた時に、
高校の友達が『2.5次元舞台』というものにハマっている話を聞いた。
アニメや漫画が原作の舞台だって聞いた時は、3次元の人間が2次元の人間にはなれない。
なんでそんなのが人気なの?と思っていた。
たまたま友達が行く予定だった舞台の日に風邪をひいてしまい、舞台に行ってみない?と誘われた。その時好きだったアニメだったこともあり、行ってみたことがきっかけ。
衝撃だった。
確かに彼らは2次元ではないけれど、3次元でもない、まさしく『2.5次元』だった。
その演技は紛れなもくそのキャラクターそのもので、2次元のキャラクターが3次元にやってきたように思えた。
これが2.5次元舞台!!!
なんて素敵なの!!!
この観劇をきっかけに、私は2.5次元の沼にどっぷりとハマった。
モデルの仕事に対しても、仕事としての自覚を持てるようになり、前に進むことが出来た。
ちなみにこの時、私の推しのキャラクターを演じていたのが、『紀田
初めて見た舞台で、推し役を演じていた彼のファンになるのに時間はかからなかった。
「でも毎回舞台見に行ってるのに、バレないのはプロね」
「そこはちゃんとしないとね!!私は蒼人くんのファンだから!蒼人くんに迷惑をかけることは絶対に避けたい!!!」
「ファンの鏡ね(笑)」
「蒼人くんが舞台頑張ってることで、私もエネルギー貰ってるし!本当は握手会とか行きたいけど、、」
「それはダメ。あなたの仕事の為でもあるのよ?」
「そうですよね〜、はい。もし私だってバレて騒ぎになったら蒼人くんに迷惑ですもんね!我慢我慢。」
舞台を見に行く時は、“私”だとバレないようにウィッグをつけて雰囲気を変えたり、化粧を変えたり、毎回試行錯誤している。
完全にプライベートで、趣味だから誰かに迷惑をかけてはいけない。
「そうだ!今度の舞台、私も1回見に行きたいんだけど、めぐみチケット取ってくれる?」
「え!もちろん!!やったー!光莉さんもやっと興味持ってくれたの??」
「毎回こんなに楽しそうな姿見てたら気にもなるよ。それに、舞台って実は見たことなかったから、勉強にもなるしね!」
「舞台は映像とは全然違うよ!生でお芝居見れるのって感動!!!舞台の経験はないけど、1公演1公演が本番で撮り直しが出来ない緊張感があるし、生だからこそ毎回違う日替わりが出来たり!2.5次元は原作になるアニメや漫画があって、そのキャラクターになる為にすごく努力して下さってるのが伝わってくる。それに世界観の表現も凄いの!」
ここぞとばかりの私の力説に、少し苦笑いで、でもちゃんと話を聞いてくれるのが光莉さん。
「めぐみも舞台の仕事受けてみる?」
「え、私??演者としてやってみたい気持ちもあるけど、そんな話あるの?」
「ううん、今はないけど。もしそんな話が来たらってこと!」
スカウトされて、何となく始めたモデルの仕事。
ドラマのオーディションを受ける機会をもらっても、初めは全然ダメで。
演技の勉強なんてしたこと無かった。
モデルの仕事を始めた時に、ぶつかったように、壁にぶつかってばかりだった。
モデルの仕事はたくさん雑誌を見漁った。
ポージング、表情、何パーターンも覚えた。
現場で他の人が撮影しているところを見学させてもらうこともあった。
演技も同じだった。
たくさん映像作品も、舞台も見た。
たくさん小説も読んだ。
この時どんな気持ちでこのセリフを言っているのか、どういう気持ちの表情なのか。
「もしそんな話がきたら、挑戦してみたい!あ、光莉さん、この日の午後空いてましたよね?この日チケット応募していいですか?」
「その日は、、そうね、大丈夫!じゃあその日でよろしくね!」
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