第2話
数日後。今日はドラマの撮影の日だ。
「おはようございます、よろしくお願いします。」
挨拶をして中に入ると、今回のドラマで一緒に出ている“山下
「あ、めぐみん〜!おは〜!」
「星南おはよう〜!」
星南とは同い年で、雑誌やドラマでも何度か共演している。
「あれ?めぐみん、リップもしかして新作のやつ〜?」
「あ、そうそう!真嶋さん仕事が早いでしょ〜!めちゃめちゃいい感じだから、おすすめ!そういう星南も、シャドウ新色じゃない?」
「そうなの〜!超可愛いし、発色もめちゃめちゃいいよ〜!」
メイクを終え、衣装を着て現場に向かうと、“橘
今回のドラマは学生青春もの。主人公のルカ役を杏澄ちゃん、ルカの彼氏のイズミ役を晴稀くん、イズミの友達のセイヤ役を悠翔くん、ルカの友達のマヒル役を星南、ルカの幼なじみのレイ役が私だ。
「おはようございます」
「おはよ〜ございます〜」
「あ、めぐみちゃん、星南ちゃん、おはよう!」
「杏澄ちゃん、今日早いね〜?」
「そうなの、晴稀くんと悠翔くんとの3人のシーンが今日あるじゃない?そこがどう表現すればいいか悩んでて、、、」
「だから、俺達も早めに来て練習してたってわけだよ」
杏澄ちゃんの後ろから悠翔くんの声が聞こえた。
杏澄ちゃんは、今人気のアイドルグループ“MAZE《メイズ》”で活動している。
小柄で可愛らしい雰囲気があるけど、
グループでNO.1の声量の持ち主。
演技の経験はほとんどないみたいだけど、
努力家で熱心に練習している姿をよく見かける。
悠翔くんは、ダンス&ボーカルグループ“CLUB 9《クラブナイン》”のダンス担当。
ダンスで鍛えられた筋肉と甘いルックスに
心を奪われる女性も多い。
スポーツ飲料のCMに出演したことをきっかけに、演技に興味を持ったとか。
「そろそろ時間だから、今日の練習は終えようか」
「そうだね!ありがとう!」
「こちらこそ、役の解釈が深められてよかったよ」
切り出したのは晴稀くん。
晴稀くんは人気急上昇中のイケメン俳優。
3年前に特撮での初主演後、映画、ドラマ、CMと引っ張りだこ。
撮影が始まるため、各々準備に取り掛かった。
今日のシーンは修学旅行に向けて、グループを決め、旅行中回る場所を決める所からだ。
『みなさん、今日は修学旅行のグループを決めて、自由行動の計画を立ててもらいます。4〜5人のグループに別れて、計画を初めて下さい。』
先生の言葉を合図に、私たちは机を寄せて5人のグループを作った。
『修学旅行、楽しみだね〜!!!』
『ね!ルカはどこに行きたいとかあるの?』
『私はね!八つ橋食べたい〜!』
『ルカってば、ほんと食べるの好きだね〜』
『男子は?行きたいところある?』
『俺は、ルカ達が行きたいところで大丈夫だよ。』
『う〜ん!京都といえば、やっぱり清水寺は外せないよな〜?』
グループ計画のシーンが終わり、次は朝練習していたという3人のシーンだ。
『どうしたんだ?ルカ、元気なくないか?』
『イ、イズミくん…。そんなことないよ、いつも通り元気だよ。』
『どうして?俺に嘘つかなくていいんだよ?』
『本当に!!!…なんでもないの。』
『イズミー?って、ごめん。取り込み中だったか?』
ルカとイズミが話しているところに、セイヤがやってくる。
『セイヤ、ごめん。後にしてもらっていい?』
『あぁ、わりぃ。邪魔したな。』
去ろうとするセイヤを引き止める、ルカ。
『待って、セイヤくん。……私はイズミくんと別れるつもりは無いよ。だから、ごめんね。』
『どういうこと?』
『あー…。イズミ、俺もルカちゃんのこと好きになっちまったってこと。困らせて悪かったな。でも、イズミに飽きたらいつでも待ってるぜ!じゃあな!』
3人の練習の甲斐あって、そのシーンは1発OKだった。
今日の撮影を終えて、私は光莉さんの待つ車に向かっていた。
この後まだ取材があるのだ。
「めぐみちゃん、お疲れ様。」
「晴稀くん!お疲れ様!どうかしたの?」
「今日の夜、少し時間取れないかな?ちょっと相談があって…。」
「えっと…、20時には終わるから、その後でも良かったら大丈夫だよ!」
「本当?じゃあまた仕事終わったら、連絡貰えるかな?」
「うん!わかった!じゃあまた後でね!」
晴稀くんからのお誘いは久しぶりだった。
ここ最近は晴稀くんも忙しそうだったし、私から誘うこともなかった。
少し前まではよくご飯に行っていて、色んな話をしたものだ。
車に乗ると、光莉さんはカフェラテを飲んでいた。
「お疲れ様〜!」
「ありがとうございます!あ、光莉さん、今日夜に晴稀くんと会ってきても大丈夫ですか?」
「晴稀くん?久しぶりだね〜!じゃあいつものお店予約しておこうか?」
「いいんですか?ありがとうございます〜!晴稀くんにも連絡しておきます!」
2人で会うとなると、写真に取られないお店である所が最低条件。
晴稀くんは、今大人気の俳優だし、私といる所が週刊誌にでも載れば大変な騒ぎになるだろう。
雑誌に載り始めたばかりの頃は、そんなことを気にせず、撮影メンバーで終わってからよくお茶したりしていた。
メディアに出れば出るほど、そんなふうに気軽にカフェに行ったりすることは出来なくなったけど、それが“売れている”ということにも思えていた。
《光莉さんが、いつものお店予約してくれたよ!早く行けるようなら、先にお店で待っててね!》
晴稀くんにメッセージを送ると、すぐに返事が来た。
《ありがとう。僕の方が先に着けそうだから、待ってるね。》
次の現場に着くまで、私はいつも通り、彼のSNSを確認していた。
“おはよ。今日はまさと撮影です!
なんの撮影かはまだお伝え出来ませんが、
楽しみにしていてください^^”
蒼人くんの投稿には、雅紀くんと笑っている写真がアップされていた。
「か、、、可愛い〜!!!蒼人くんと雅紀くんのツーショ、、、ありがとうございます!!!!なんの撮影なんだろ〜??情報解禁されるの楽しみ!!!」
「SNS見てる時がいちばん元気ね〜!めぐみの元気の源は、やっぱり彼なのね〜」
はしゃぐ私を横目で見て、半ば呆れているような顔で光莉さんが言った。
「まあ、そうですね〜!蒼人くんが頑張ってるから、私も頑張ろう!って思えるところもありますからね〜!」
蒼人くんは割とマメにSNSを更新してくれる。だから仕事で失敗して凹んでいる時も、蒼人くんのSNSを見ることで、パワーが貰えるような気がしている。
「その、蒼人くん?だっけ?顔は可愛い感じだよね?めぐみのタイプはそういう人なの?」
「うーん?そうですね〜。タイプというか、アニメや漫画のキャラクターでもそういう子を好きになりがちではありますね〜?」
「そうなのね〜、じゃあ付き合うとしたら?やっぱり可愛い系?」
「光莉さん!!!私が誰とも付き合ったことないの知ってますよね???仕事も仕事ですし、誰かと付き合うとかイマイチピンと来ないんですよね〜」
「知ってるけど、もしもの話じゃない。“もしも”!!」
高校生の頃からモデルを始めて、最初は上手くいかないことばかりだった。
だから、誰かを好きになる余裕なんてなかったし、付き合いたいとも思わなかった。
卒業してからはドラマの仕事も受けるようになり、また仕事に追われる日々を送っていた。
おかげで気付けば、演技でしか付き合ったことがないのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます