第16話




今日は朝からテンションが高いのが自分でもわかる。


1週間はあっという間にすぎて、また“時代に追いつきたい!”の放送日となっていた。


そのことに気が付いたのは昨日の夜だ。


今日のスケジュールを確認していた時、仕事が終ったら何しようかと思った瞬間に思い出したのだ。


そこからるんるんな気分ということだ。


仕事の空き時間にスマホを確認すると、鈴風からメッセージが入っていた。


連絡が来るのはキラステを見に行った日ぶりで、彼女からの連絡はほとんどが『推し事』関連のなので心躍る内容が多い。


《仕事お疲れ様~!これはすぐに連絡しないと、って内容の情報解禁がありまして…!》


メッセージの下にはURLが送られてきていた。


解禁して直ぐにわざわざ連絡をくれるほどの内容…


私は深く息を吸ってから開いた。





“『舞台 本愛ほんあい』 今秋上演決定!!


たくさんの物語が人々の心を潤わせてきた。

そんな数々の作品の内容、結末を書き換えて自分の作品として世に出そうとする

"模倣文豪"を名乗る者たちが現れた。

そこで政府は元の物語を守るために"物語保護機関"を構成した。

物語の中に入ることができる特殊能力をもつ"神子みこ"のもと物語を愛する者たちが集まる…


夏目椿 役:紀田蒼人

菊池きくいけ時雨しぐれ 役:廣野圭斗

桜咲おうさか怜 役:東優雨

梅香うめか志人ゆきと 役:伊原雅紀

岡宮葵 役:橘颯汰


Coming soon… ”





公式ホームページ開いたまま私は一度目を閉じた。


喉まで出かかっている嬉しさを押し殺して、自分に落ち着かせるように言い聞かせた。



まって…!?

蒼人くんが主演で、このメンバー!?



しかもゲームが配信されてから人気すぎてサーバーが落ちることが多々ある"本愛"!?



これは……


嬉しすぎてにやけが止まらない。



わたしの推しキャラは今回の舞台では出でこなさそうだけど、好きな作品に推しの俳優、さらにこのキャスティングとなれば、絶対に見に行きたい!!!



今すぐに鈴風に電話して話をしたい気持ちだったが、次の仕事の時間が迫っている。


今日は“時代に追いつきたい!”の放送日なだけでもテンションが高い日だったのに、こんな素敵な情報解禁まで頂いてしまったら…



キャパオーバーしてしまいます!!!!


蒼人くん主演おめでとうございます!!!

颯汰くん、雅紀くん、圭斗くん、優雨くん、出演おめでとうございます!!!!


心の中でお祝いして、仕事に戻った。




その日の仕事は絶好調で、予定よりもかなり早く終わった。


終わると速攻で鈴風に電話をかけた。


彼女は直ぐに電話に出てくれた。



「もしもし鈴風?今大丈夫?」


「大丈夫だよ~!…本愛の話でしょ?」


「もちろん!!ねぇ、今日早く仕事終わたんだけど、うちに来ない?

明日の仕事も午後からだから泊って行ってくれてもいいよ!」


「え~!そんないい誘い、断る理由がないな~!!じゃあ、準備したら向かうね!」


「やったー!待ってるね!!」



今夜は楽しい夜になること間違いなしとなったところで、彼女が来るまでに夜ご飯の準備と、お風呂に入ってしまうことにした。



夜ご飯の支度もあと少しと言うところでインターフォンの音が部屋に響きわたり、私は彼女を出迎えに行った。



ガチャッ


「鈴風!久しぶり~!中入って入って!!」


「お邪魔します~!私はテレビでめぐみの姿みてるから、そんなに久しぶりな感じがしないんだよね~(笑)」


「いやいや、電話はたまにしてたけど、ちゃんと会うのは結構久しぶりだよ!?」


「そーなんだけど(笑)あ、これ!トゥンカロン!!今日のじだ追いに出てくるかも~?って思って買ってきたよ~!」


「え!!さすが!!!最高すぎる!!」




トゥンカロンを受け取って冷蔵庫に入れ、夜ご飯にすることにした。


ご飯を食べ始めたところで、待ちきれず私が話を切り出した。



「本愛舞台化おめでとうございます~!!めちゃめちゃ楽しみ!!」


「だよね!!ストーリーすごくいいし、衣装も色々あるから舞台映えしそう~!!」


「うんうん!でもなんといっても…」



「「キャストが神過ぎる~!!」」



「ほんと!私たちの推しがついに共演だね!!」


「待ってたよね!この日を!!」



推し同士が同じ舞台に出演が決まれば、何としてでも一緒に舞台を見に行きたいところだ。



「でも本当に本愛でこのキャストは倍率相当高そうだよね…」


「それは…間違いなく…」



人気作品の舞台化というだけでも倍率は上がるが、2.5次元界の天才圭斗くんを筆頭に今人気の俳優を集めました!とでもいうかのようなキャスティングは更にチケットの倍率を高くしていた。



「まだ秋にやるってことしか分からないし、めぐみの予定合いそうな日全部申し込むしかないね〜!」


「そうだね〜〜!お願い!!当たって〜〜!」



そんな会話をしながら、鈴風が思い出したかのようにこの間のアフタヌーンの話を持ち出した。









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