第15話




今日は早めの時間に仕事が終わったので、

買い物を済ませてから帰宅した。


歯磨き粉が切れかかっていたので薬局によったのだけれども、


薬局に行くとついつい他にも欲しかったものを買ってしまう。


消耗品、日用品だからこそ要らないものはないから仕方がないと思うようにしている。


歯磨き粉だけを買うつもりが袋いっぱいの日用品を購入していたので、収納してから夜ご飯を作ることにした。


明日は久しぶりに何も無いオフの日。


何しようかな〜!


溜まっているアニメの消化と、最近発売された蒼人くんの舞台のBlu-rayを見るのもいいなあ…


そんなことを考えていると、ふと思い出した。



そうだ!明日じゃない!!


庭ステの当落!!


その日しか休みが取れそうにないからどうか当たっていて欲しい……!



光莉さんにも舞台の良さ、蒼人くんのかっこよさを分かってもらわないといけないしね!



明日が来るのが少し怖いような、早く結果を知りたいような、受験の結果を待っている受験生の様な気分だ。



出来上がったご飯を前にいざ食べようとしたその時、


ピンポーン


インターフォンの音が鳴り響いた。



こんな時間に誰だろ…?


画面を見ると見慣れた人物がそこに立っていた。



オートロックを解除すると、再び訪問者がドアの前まで来たのを知らせる音がした。


「はーい」


ガチャ


「めぐみ〜!!久しぶりね〜!!元気にしていたかしら??」


開けてすぐ私の胸に飛び込んで来た彼女に、私はもうすっかり慣れていた。


「もちろん元気!ママも元気にしてた?…って聞かなくても元気そうだけど(笑)」


「もちろん元気よ〜!あなたがおうちにもっと帰ってきてくれればもっと元気になれるのに」


「ママ、めぐみも仕事が忙しいからそんなわがままを言うんじゃないよ」


「まあ、そうよね。私にはパパがいるものね!」


相変わらずうちの両親は仲がいいようだ。


2人を部屋の中に入れると、これからご飯を食べようとしていたことを思い出したかのように、お腹の虫が鳴いた。


「あら、これからご飯だったの?言ってくれればなんでも買ってきたのに〜!」


「ママが来るなんて思ってもなかったから(笑)今日はいきなりどうしたの?」


出来上がっていたパスタを温め直してやっとご飯にありついた。


「家の近くにね、新しいケーキ屋さんが出来たの!すっごく美味しいから、めぐみにも食べさせてあげようと思って買ってきたのよ〜!」


「めぐみが明日休みだって言っていたのを思い出してね。そしたらママが買って持って言ってあげよう!って言い出したんだよ。」


美味しいケーキを見つけたから、そんなちょっとした事で会いに来てくれる両親には感謝しかない。


両親が住んでいる家と私の家はそんなに遠くはない。


不規則な時間に出ていって帰ってきてとなるので、仕事に慣れてきたタイミングで一人暮らしを始めた。


ママは特に寂しがっていたけど、すぐに会えない距離でもないので、パパが説得してくれた。



ご飯を食べ終えると早速買ってきてくれたケーキを食べる準備を始めた。


パパはブラックコーヒー、ママはミルクティー、私はストレートの紅茶をいれて、ケーキの箱を開けた。


「わあ!!美味しそう!!」


中にはいちごのタルト、桜のロールケーキ、ピスタチオとチョコレートのケーキ、チーズスフレ、フルーツミルクレープ、紅茶とオレンジのショートケーキ、目移りするラインナップのケーキが入っていた。


「めぐみはどれが食べたい?」


「うーん、こんなに沢山あると悩んじゃうな〜?どれも美味しそうだし、どれも食べたいけど…」


「じゃあ少しづつ食べましょ!今日の夜3つを3人でシェアして、明日の朝また3つをシェアしたら全種類食べれるわよ!」


「ママ天才!2人とも泊まっていけるの?明日仕事は?」


「明日はパパとママも休みでね。泊まらせてもらうよ。」


「そうだったんだ!そしたら明日は久しぶりに家族で出かけようよ〜!」


「あら!めぐみ何も予定無かったの?めぐみと出かけるのなんていつぶりかしらね〜!今日ケーキ持ってきてよかったわね、パパ!」


「そうだね。日帰りで温泉にでも行くか?」


「パパ最高!明日はゆっくりしたいね!」


明日の予定も決まって、ケーキ選んで食べようと思った時、この間カフェで女の子がアクリルスタンドと写真を撮っていたのを思い出した。


「ママ、パパ、食べるのちょっと待って!!!」


私は急いで部屋から蒼人くんのアクリルスタンドを持ってきた。


ずっと飾ってあるだけだったけど、アクリルスタンドとケーキの写真を撮るだけで、推し活をしている気分になれた。



「か、かわいい〜!」


「めぐみも本当に蒼人くんが大好きね〜!この前のアフタヌーンティー見たわよ!もう!やるじゃない!」


「いや、あれは光莉さんが取ってきてくれた仕事で、私も本当にびっくりしたんだから!」


「生蒼人くんはどうだった?かっこよかった???」


「もちろんめちゃめちゃかっこよかったよ!!もう死んじゃうんじゃないかと思うくらいにね!!」


「一緒に仕事が出来る日が来てよかったわね〜!めぐみが嬉しいことはママも嬉しい!」


「ママありがとう!」


オタクな娘にも寛容な両親の元に生まれて来れた私は本当に幸せだ。


アクリルスタンドとケーキの可愛い写真に満足した私はケーキを食べ始めた。





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