第14話




家に着くとお風呂に入って明日に仕事の準備をした。

後はアラームをセットして布団に入るだけ…まで来たとき、

今日のことを思い出した。


『じゃあ僕、立候補したいなぁ~?』


あの言葉は彼氏がいない私に対して気を遣ってくれただけ…?

表舞台での彼は誰とでもフレンドリーで人懐っこいイメージがある。

私と仲良くしようとしてくれているだけ…?

それともほかに何か意味がある…?

お互い表舞台での顔は知っていても本当の顔はわからない。

圭斗くんだって、まさか私がアニオタの2.5次元オタで、更に俳優オタだとは夢にも思っていないだろう。

考えても答えは出ず、もう寝ようと思ったその時、スマホにメッセージが届いた。

《こんばんは。夜遅くに連絡してごめんね?今日はお疲れ様でした!

まさかめぐみちゃんと会えるなんて思わなかったよ!颯汰に感謝だね〜!


これからもっと仲良くなりたいなって思ったからまたご飯とか言ってくれると嬉しいな。また会えるの楽しみにしてます!》

メッセージは思った通り、圭斗くんからだった。

連絡先を交換しても2人でご飯にいくような関係になる人はあまりいない。

あいさつ程度のやり取りをしてその後連絡がない、なんてことがほとんどだ。

圭斗くんと現場が一緒になることはないだろうし、きっと今日だけでやりとりも終わってしまうだろう。

そんな風に思いながら返事をして眠りについた。

《こんばんは!お疲れ様です。こちらこそまた機会があったらお話伺いたいです!》

朝もまだ早い時間だというのに、見るからにるんるんな星南をみて私まで気分が上がったように感じた。

「星南おはよ」

「あ!めぐみん~!おはよぉ!!昨日は本当にありがとうね!!!」

「私は何もしてないけどね」

「いやいや!晴稀くんとのご飯に誘ってくれていなかったら、雅紀くん本人に会うなんて奇跡起こらなかったんだから!!!」

こんなにうまく話が進んでいいのだろうか?と思うほどに昨日はドラマみたいな展開だった。

晴稀くんも言っていたけど、本当に星南は強運なんだろう。

「昨日はいっぱい喋れたみたいでよかったね!」

「そうなの~!!雅紀くんって本当に優しくて格好良くて…!あんないい人なのに、いま彼女いないんだって!!」

「そうなんだ!!!よかったね!!」

「うん!!でも今はお仕事に集中したいから、彼女とか作らないようにも見えたなぁ~?」

「そう思ってても、好きになったら変わることもあるんじゃないかな?」

「そうだよね!!今度またご飯行く約束もしたし!!頑張る!!めぐみん本当にありがとう!!」

ちゃっかり次会う日まで決めているあたり、さすがだなと思わずにはいられない。

私も誰かに恋…してみたいな~なんて、柄にもないことを少し思ってみたり…

星南を見ていると、恋するってすごく素敵なことに感じた。





撮影が終わり、光莉さんと私は何か食べることにした。

最近教えてもらったカフェが近くにあったので、お願いしてそのお店に連れて行ってもらった。

車から降りる前に眼鏡と帽子をかぶり、中に入る。

お花屋さんとカフェが一緒になったようなそのお店は、入るとお花のいい香りがした。

平日のお昼過ぎだったこともあり、待たずに店内に入ることができた。

「素敵なお店じゃない!」

「実はこの間真嶋さんに教えてもらったんです~!」

「真嶋さん可愛いお店とか詳しいものね!!」

今の時間はカフェメニューが注文できるようで、ケーキセット、パンケーキなどどれも美味しそうで目移りしていた。

光莉さんはスマホを取り出すと、何やら調べ始めて、調べ終わるとスマホの画面を私に見せてくれた。

「ここのお店の人気メニューはチーズケーキみたいね!」

可愛くデコレーションされたバスクチーズケーキの写真がSNSに投稿されているのが何件もあった。

バスクチーズケーキ…!

最近私の中でチーズケーキがブームになっていたこともあり、これ以外の選択肢が消えた。

注文を済ませると、本日のSNSを見る時間となった。

今日はまだ蒼人くんの更新はなし…と。

なんとなくスクロールしていると圭斗くんの投稿があった。

“普段甘いものはあまり食べない僕ですが、苺大福を頂いたので食べました~

苺大福だけは昔から好きなんだよね~!”

ニコニコで苺大福を食べている写真が上がっていた。

苺大福…おいしそう…

苺大福に気を取られつつも、食べている圭斗くんがすごく可愛かった。

圭斗くんが私の彼氏に立候補だなんてあり得ないあり得ない!!

やっぱり昨日のことはその場の流れで言ってくれただけだよね…?


そんなことを考えていると、バスクチーズが運ばれてきた。

「わあ!!美味しそう!!」

先ほど写真で見せてもらったもの同様に可愛くデコレーションされたプレートを前に、

私のテンションはかなり上がってた。

光莉さんはパンケーキを頼んでいたのでもう少し時間がかかりそうだ。

スマホで写真を撮ってワクワクしながら待っていると、

「先に食べていいわよ~!お腹すいてるでしょ!」

その言葉に反応したかのように私のお腹が返事をしたので、先に食べることにした。

まずは何もつけずにそのままのチーズケーキを口に運んだ。

表面がしっかり焼けているのでほろ苦く、中がトロッと濃厚なチーズケーキは全く持って私好みのチーズケーキだった。


「お、おいしい~!!なにこれ!!私が求めていたそのものです!!!」

「よかったわね~!」

はちみつ、生クリーム、バニラアイス、フルーツ、何と食べても本当においしい。

濃厚なのに重すぎず、満足感もしっかりある。

私が感動していると、光莉さんのパンケーキも席に運ばれてきた。

定番のチョコバナナに春だけ限定で苺もトッピングされている贅沢なプレートだ。

メレンゲでふわふわのパンケーキはするすると光莉さんの口に運ばれていった。


食べ終えて店内を見渡すと、1組のカップルが目に留まった。

料理は届いているが、女の子が何やら一生懸命写真を撮っている。

男の子は特に何も言わず、彼女が写真を撮り終わるのを待っている。

SNSにアップする用の写真かな…?

私はなんとなく撮った写真をそのまま使ってしまうけど、本人なりの映えがきっとあるのだろう。

そんな風に思っていたが、思わぬ形で裏切られる。

『涼くん!もう少し心葵くん右にお願い!!』

『この辺でいい~?』

『えーっと…、うん!ばっちり!ありがとう!』

写真を撮り終えると、心葵くんのアクリルスタンドはそのまま机の端において、パフェとパンケーキを食べ始めた。

心葵くん…しかもあれは…優雨くんだ!!!

キラステで販売されているグッズにアクリルスタンドがあった気がする!!


アクリルスタンド可愛い〜!


そう言えば鈴風も心葵くんのアクリルスタンド、大絶賛してたっけ。


可愛くて美味しいスイーツたちと一緒に写真、、、いいなぁ、、。



今度家でスイーツ買ってきて写真撮ってみようかな?


どこにあげるわけでもないけど、カメラロールにあるだけで幸せな気持ちになれる気がした。







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