第25話
念願の庭ステは想像以上に再現度が高く、
演出、BGM、全てが最高だった。
圭斗くんが出てくると、
しっかり見たい気持ちと、
チケット断ったのに見に来てるって知れたらどうしようという葛藤に最初は苛まされたが、
気づくとお話に引き込まれ、熱中していた。
幕が閉じ、客席から観客たちが立ち上がっていく。
たまたま真ん中の方の席だったこともあり、
少し落ち着いてから劇場を後にした。
劇場から離れ、人気の少ないところまで歩くと、今までは声に出せなかった感情が押し寄せ口から溢れ出した。
「………最っっ高でした、、!!!」
原作に忠実なだけでなく、オリジナル要素が加わる事で舞台ならではの庭球がそこにはあった。
「めぐみ………」
ここまで人気のないところに来れば、
もう妹でいる必要はないと思ったのか、
はたまたそんなことを忘れてしまったのか、
光莉さんはキラキラとした顔で私を見ていた。
「凄いね!2.5次元!舞台ってすごい熱量!!!これはみんなが好きになるのわかるわ〜!!!」
「光莉さん……!!分かってくれましたか!!最高なんですよ2.5次元!舞台って最高なんですよ!!!そこに彼らは存在してるんですよ!!!」
「いや、ほんとにね?クオリティ高い。満足度高い。これは……ハマる人の気持ちが分かる。私ですら感動したし、めっちゃ楽しめた!!!」
私の想定以上に、光莉さんは2.5次元舞台の良さを分かってくれ、感動してくれた。
芸能関係の仕事をしているからこその、大変さなど、分かることも多いようだった。
原作があるものはどうしても原作と比べられる。
ドラマや映画も原作ファンの声は気になるものだが、舞台は生ものだ。
その場で観客の反応が分かる。
どのくらいの観客が来場しているかも分かる。
それだけに大変なことも多いだろうが、
生ものだからこそ、感動するところも多い。
実際観客の目の前でそのキャラクターは生きているのだ。
「光莉さん、また観劇したくなったらいつでも行ってくださいね!!」
「他のも観てみたい!いや、なんなら気になるの見つけたらこれからは舞台も観に行ってみるわ!1人でも!!!」
「素敵です!!!面白い作品合ったら共有してください!!!!」
「そうね!舞台って大変だけど、やり遂げたら役者として成長は出来そうよね…うん」
ん?
光莉さんもしかして…
舞台の仕事を取ってこようとしてる…?
でももし舞台に出演できる機会が得られたら、頑張りたい…。
今よりももっとお芝居のことを勉強したい。
それに舞台に立つってどんなものなのか、
蒼人くんが見ている景色がどんなものなのか、
どんな緊張感の中お芝居をしているのか、
気になるんだ。
家に帰ると、今日買ってきたグッズたちを収納することにした。
ブロマイドをフォルダーに入れていると、
ふと前のページへ遡り、見返す。
蒼人くんのブロマイドだけを収納しているフォルダーは、
いつの間にか何冊にもなっていた。
最初の1冊目は……これだ。
わかりやすいように“1”のシールが貼られたフォルダーを手に取り、1ページ目を開く。
そこには初めて観劇した時に購入したブロマイドがあった。
懐かしい…。
何も知らずに観に行って、観劇後にはグッズの列に並ばずには居られなかった。
今日の光莉さんも、その時の私も似たような気持ちだったのだろうか。
でも間違いなく観る前と、観た後では2.5次元というものに、舞台というものに対する気持ちは変わっていた。
目の前で直接感じることができる熱量に感動し、面白みを感じ、それをその場で拍手という形で感謝し想いを伝えることが出来る。
私はその日彼はもちろん、舞台の虜になったのだ。
しばらく過去のブロマイドを見返し、思い出に浸っていた。
最後に今日の庭ステを思い出し、余韻に浸っていると、スマホの通知音が鳴り響く。
“庭ステ、本日もご来場ありがとうございました!
明日は休演日です。
ゆっくり体を休めて明後日からの公演に備えたいと思います!”
写真には蒼人くんと圭斗くんの姿が。
今回2人は同じチームメイトの役どころなので、舞台上でも一緒にいることが多く、写真も一緒に写っていることが多い。
今日観劇させていただきました!
とっても楽しませていただきました!
ゆっくり休んでください!
写真ありがとうございます!
文字に起こして伝えることはできないけど、
心の中で感想を伝える。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます