第28話 裏切り

「つまり――萌えを主体としている集団なんだよ」

「……えっ?」

 リアスさんの言葉に耳を疑う。

「待ってタイチ!敵の言葉に耳を傾けちゃだめだよ!」

 萌えという言葉に僅かに心が揺れ動いたのがエリに伝わってしまった。

 まるで正気に戻れと言わんばかりに睨んできた。

「うんっ、分かってるよ」

 ……そうだ。こいつらは女性を狙った変質者集団なんだ。

 いくら萌えという言葉を使おうとも、その萌えるべき相手に悪さをするのは絶対に見過ごせないことだ。

 萌えを侮辱していると同等だ。

「はぁ……だからそう敵意を向けなくていいんだけどな。僕達は何も悪いことをしている訳じゃないんだ」

 しかしリアスさんはあくまで白々しく俺達を諭してくる。

「何を言おうが俺は信じませんよ。あなた達が変質者集団なのは分かってるので。僕は女性を、そしてエリを傷つけようとしたことを絶対に許す気はありません!」

「はぁ……。とにかく話だけでも聞いてほしいな」

 強い意志を見せたが、しかしリアスさんは諦める素振りがなかった。

「とにかくまず僕達の集団について。僕達は女性を崇めることをモットーとした集団だ。女性教と言えば分かるかな?」

「女性教……。確か聞いたことがあるわ。女の子が大好きな変態宗教があるって……」

「変態、か。確かにそれは少し耳が痛いね……」

 女性教……。俺は知らないが、エリの反応を見る限りどうやら随分と前から存在していたようだ。

 しかしリアスさんの話じゃ、変質者が目撃されたのは最近っていう話だった。

 つまり、最近になってエスカレートしたということか?

「その女性教なんだが、私が発足して今までダインさんにこの地下室を貸してもらって活動をしていたんだ」

「……その活動があれですか?」

 街中で女性に対して嫌がらせ行為をするあれが活動だというのか?

「いや、勘違いしないでほしいんだけど、あれは俺達じゃない。むしろ我々としても奴らの行為は絶対に許されないと思っている」

 しかしリアスさんの口から出てきた言葉を聞いて首を傾げる。

「……どういうことですか?あなた達がその変質集団じゃないですか。そのタトゥーが何よりの証拠じゃないですか」

 それにこの部屋の天井に大きくタトゥーと同じマークが書かれている。

 それが何よりの証拠だろう。

「いや、違う。正確には奴らも僕達と同じ女性教だが、それはつい最近までのことだ」

「え?どういうことなのよ?」

「……奴らは我らの裏切り、我らの教団の名前を語って悪事を働いているんだよ」

 リアスさんは悲しそうな表情を浮かべながら呟いたのだった。

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