第16話 集団

「どういうことなんだ……?」

 俺の一番のお気に入りといっていいこの本は、少なくともこの辺り一帯には存在しない本ということだった。

「う〜ん、確かにこの本はお店でみたことは一度もなかった気がする……」

「てことはもしかしてダインさんが冒険者時代に買ったのかな?」

「いや?パパ達が冒険者の時は本なんて荷物になるから買わなかったって言ってたから多分違うと思うよ。それにパパ達が本を集め始めたのはこの街に住んでからって言ってたから」

「なるほど……」

 じゃあますます謎が深まるだけだな……。

「ここは一旦家に帰ってダインさんに聞いてみるといいかもしれないかもな」

「うんそうだね。じゃあ帰ろ……」

「ん?どうした?」

 本屋を出て、帰路につこうかと考えていた最中エリの声が途切れたことに気づきすぐさま振り返る。

「なぁ、ちょっと俺達と一緒についてこいよ」

「何も怖くないからね〜。だから一緒に行こうぜぇ」

「い、嫌ですっ!」

 見るとエリはこの前のような君の悪い男達に絡まれていた。

 しかも今回は人数が二人から五人に増えていた。

「ちょ、ちょっと俺のツレに何してるんですかっ」

 この街は治安が悪いと思いながらも、俺は即座に止めに入る。

 あの時は無我夢中で何も考えずにつっこんでいったが、今はダインさんに修行してもらっている分、戦い方は学んでいる。

「あぁ?なんだガキ?お前には用がないから引っ込んでろ」

「そうだ、そうだ。俺たちゃ男には興味ないんだよっ」

 男達は俺が声をかけるや否や、エリを囲んでいた男の内二人がこちらへとやってきた。

 男達の中でも一番人相の悪い二人は、俺がビビるとでも思っていたのか、上から睨みを利かせてくる。


 ――いつどんな時も敵を侮るな。常に警戒しろ。


 俺はダインさんの言葉を思いだしながらまずは男二人を観察する。

 相手は二人とも武器を所持しており、ナイフを片手にこちらに詰め寄ってくる。

 ……この世界には銃刀法違反はないのか。

 まぁ、異世界にそんなことを期待しても無駄か。

 とにかく敵が油断している今だからこそ、勝機がある。

「そんなもん持ってると危ないっすよ」

「うるせぇなっ」

 男の一人が威嚇のためか、ナイフを回す。

 当然攻撃するつもりなどない攻撃など隙だらけだ。

 これはもう俺も手を出してしまってもいいよな。

 まだこの世界の法律は分かってないけど、恐らく正当防衛は成立するだろう。

「甘いっ」

 だから俺はそう呟きながらナイフを振り回してきた男の腹に平手を叩き込む。

「なっ!?」

 そして流れるようにもう一人の男に蹴りを入れる。

 相手が倒れたことを確認した俺はすぐにエリを救うべくすぐさま、残りの三人の元を倒そうとしたが……。


「タ、タイチィ……」


「おっと?動くんじゃねぇぞ?」

「ぐっ……!」

 俺はすぐに足を止める。

 目の前では首もとにナイフを当てられたエリが、男達に捕まっていた。

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