第15話 無理
店の手伝いも修行もない休日。
俺はようやくラノベを書いてくれそうな小説家を探しに出かけることにした。
ただ、普通の小説家に頼むだけでは恐らくだめだ。
というのもこの世界の小説家どもは皆女が嫌いと言わんばかりに、女が活躍する小説を書かない。
だから俺は唯一、エリが持っていた本にあった女性が活躍する小説を書いた人を探すと決めていた。
その人ならばきっと、女の子がきゃっきゃうふふするような萌え成分がたっぷり詰まったラノベを書いてくれるに違いないと考えたからだ。
「まぁでも、そもそもどうやって小説家を探せばいいのか分からないけど……」
「そこは気合いでなんとかなるよっ!」
「そう、だな。なんとしても見つけるしかないんだから気合いで頑張るしかないか」
「うん!そうだよっ」
エリに励まされた俺はまず、この世界の本の仕組みについて聞くことにした。
前の世界じゃ小説家とアイコンタクトをとろうと思えばSNSなり、ファンレターなりで連絡をとろうと思えばとれる。
まぁSNSはあり得ないにしろ、せめてファンレターぐらいはあったらいいんだけど……。
「ファンレター?ちょっとよく分かんない……」
「そっか……」
どうやらこの世界で小説家という職業はメジャーなものではなく、かなりマイナーな職だそうだ。
まぁ、小説といっても実際に起こった出来事を記しているだけなのでこの世界では仕事とすら呼べない立ち位置のようだった。
つまり、この世界にはフィクションの本は存在しないということ。
どうやら俺はそんな地獄みたいな世界に来てしまったようだった。
「とにかく一度本屋さんに言って話を聞いてみるか」
「うん、そうだね。私も本が出来る仕組みまでは分からないからちょっと興味あるかもっ」
ここはひとまず本屋で詳しい話を聞くことにした。
本屋に行けばどこで本を仕入れたかが分かる。
またもしかすると小説家についても知ってるかもしれないし、そうじゃなくとも本を制作している場所さえ分かれば後は順々に分かっていくというものだ。
ということで俺達は早速、この街で一番大きな本屋へ向かうことになった。
「――え?そんな本はない?」
本屋について、真っ先に店主に小説家について尋ねた。
小説家について直接知っているようではなかったが、本を作っている場所を特定することが出来たのは幸いだった。
しかしその際、ついでに俺が探している小説家の名前を出すと、店主はそんな本は存在しないと言ってきた。
どういうことなのかと問いただすと、どうやらここら一帯の地域にある本は全て管理されているため、本の情報は全て持っているようだ。
そしてその情報から探しても、俺達が求めている小説家、さらにその本の題名から探してみても全く見つからなかったのだ。
「一体どういう……」
新たな問題が発生し、俺は頭を悩ませるのだった。
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