第14話 無理

「文章が書けない……」

 小説を書き始めてからおよそ一ヶ月。

 その間何作もの小説を書き上げてきた。

 しかしそれら全ては文章が読みにくく、どれも小説と呼べるものではなかった。

 ……小説を書くのがここまで難しいだなんて思ってもなかった。

 俺は文章を書く才能が全くなかったのだ。

 情景や心理描写なんてあんなものどうやって書けばいいんだよ!

 詳しく説明しようとすればつまらないものになるし、簡潔に書こうとしても意味の分からない文章になる。

 小説を書くのは想像以上に難しかった……。

「あぁ……萌え成分が欲しい……。可愛い女の子たちが見たい……」

 異世界に来てから今までの間、この世界の本を読んでなんとか萌え成分を補給し続けていたが、それもそろそろ限界に近づきつつある。

 なんてたってこの世界の本には女はほとんど登場しない。

 男の冒険者や勇者がかっこよく活躍する、そんなストーリーばかりでとても萌え成分が充実しているはずがなかった。

「……こうなったら。萌え小説を書いてもらってみせる!」

 最近、俺はどう萌え小説、つまりラノベをこの世に誕生させようか考え続けていた。

 ストーリーは頭の中にあるが、俺には才能がないので自身で生み出す計画は早々に考えなおすべくだと思ったのだ。

「だけど……一体誰に書いてもらえば……」

「今度は何に悩んでいるのタイチ?」

「うぎゃわっ!」

 部屋で一人悩んでいると、突然背後からエリに声をかけられて変な悲鳴をあげてしまった。

「んっ、んんっ。ちょ、ちょっとね……」

 変な声を出したことを僅かに誤魔化しながら、エリになんて言えばいいか考える。

「――念のため聞くけど……。エリって小説家の知り合いっている?」

「えぇ〜そんなのいないよ。もしいたらすぐにタイチに紹介しているよっ」

「そうだよね……」

 まぁ、小説家なんてそうそう知り合いにいないか。

「あっ、もしかして小説家の人に書き方を教えてもらおうと思ってるの?」

「ま、まぁそれもありかなって……」

 そうか。小説を書いてもらうんじゃなくて、本物の小説家に教えをもらえばいいのか。

 確かにそっちならばわざわざ何度も頼まずとも、半永久的にラノベを生み出せるという訳だ。

「あれ?でもタイチって冒険者になりたいんだよね?なのに小説家の弟子入りなんかしたら多分パパ怒っちゃうかも……」

「うっ……」

 そうだよな……。きっとダインさんのことだから冒険者一筋じゃないと許されなさそう……。

 ただでさえ修行についていくのがやっとだからな……。

「じゃあやっぱり外注って手段になるか……」

 その場合はお金がとんでもないことになりそうだけど、俺が生きるためだ。

 萌えを補給するためにもこの世界にラノベを作ってもらわないといけない。

「よしっ。そうと決まったら早速頼みにいこう!」

「あっ、私もついていくっ!」

 とにかく善は急げだ。

 そうして俺はエリと共に、ラノベを書いてくれる小説家を探しに出かけた。

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