第13話 執筆
「今度はどうだっ!」
「う〜ん……確かに少しはましな現代風になってるけど……、まだちょっと分からないところがあるかな……」
「そうか……」
この世界で初めて書いた小説は、エリに駄目だしされまくったので、俺はすぐさま二作目を書き上げた。
今回は異世界人の現地ものの話だ。
これならばきっとエリにも理解してもらえるだろうと思っていたんだけどな。
でも違和感が少しだけならあとはそこを直せばいいだけか。
「あとすっごく言いにくいんだけど……」
「ん?何でも言っていいよ」
一回で全部言ってくれた方が書き直す回数も少なくなるし、何より早くこの世界に萌えを布教できる。
「えっとね……その……」
だけどエリはすごく言いにくそうにもじもじとしていた。
きっとエリは優しいところがあるから、こういうことを直接言いづらいんだろう。
普段は元気で明るい女の子だけど、こういう気遣いが出来るいい子なんだよな。
だけど、そんなにも言いにくいことなのか?
なんて思っているとエリは何やら覚悟を決めたように口を開く。
「ちょ、ちょっと文章が読みづらい、かな?」
「ちょ、ちょっと?」
「い、いや……かなり……?」
「まじか……」
どうやら物語の内容以前の問題だった……。
「わ、分かった!次はもっと読みやすい文章を会て見せるからっ!ちょっとだけ待ってて!」
「う、うんっ!楽しみにしてるねっ!」
やはりいくら本を沢山読んでても、簡単に小説なんかが書けるはずがないか……。
でもこれがこの世界で唯一、萌え成分を補給出来るものだ……。
イラストという手段もあるが、昔猫の絵を書いたら家だと間違えられた俺の画力じゃとてもじゃないが萌える絵なんて描けない。
だから俺には小説しかないのだ。
くそっ、絶対にこの世界に萌え文化を伝えるために、完璧な小説を書いてやる!
幸いなことにも俺には向こうの世界であらゆる数の作品を見てきた!
ストーリーのおもしろさだけなら絶対にこの世界に対抗できるはず!
そう!これこそが異世界人の特権である知識チートだ!
これで俺はこの世界に萌えを広めて成り上がってやる!
そうして俺は冒険者になることなど忘れ、ただひたすら小説を書くことに集中する。――という訳にもいかず、それとは別で毎日の修行は続いていた。
しかも小説に集中し、修行の際に少しでも集中力が欠けると迷わず攻撃を食らってしまうので嫌でも修行に集中せざるを得ない。
「さぁっ!どんどん行くぞっ!」
しかも少しでも修行に慣れればすぐに厳しさの段階もあがっていくのでキリがなかった。
だからこそ俺は一刻も早く萌え成分を安定的に補給できるすべを作らなければならなかった。
とにかく早く小説を完成させなければ……。
今までの小説じゃ、文章がちゃんとしてないせいで、せいぜいほんの僅か萌え成分が補給されるだけなのだ。――なんなら稚拙な文章過ぎて恥ずかしくなるぐらいだ。
だから一刻も早く完璧な小説を……。
「集中が乱れておるぞっ!」
「いたっ!」
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