第4話 お店

「――あぁ?冒険者になりたいって?だったらダインさんのお店に行ってみな。ダインさんだったら冒険者になるのをサポートしてくれるはずだよ」

「あ、ありがとう、ございます……」

「だがまぁ、今時冒険者なんてやっても生きて行けねえぞ?まぁ、そこまでしてなりたいなら頑張りな」

 生きていけない、か……。

 おじさんさんはそう言い残して行ってしまった。

 本屋を出て、少女と別れた俺はこの先どうやって生きていこうかと街をさまよっていた。

 こういう場合はまずは冒険者ギルド的なとこに行こうと思ったんだが、どうやらこの街には冒険者ギルドはなかった。

 神から特典をもらっているので多少の敵なら大丈夫と思ったけど、流石にいきなりモンスターと戦う度胸は俺にはなかった。

 だからこれからどうしようかと道ばたに座り込んでいると、先ほどのおじさんに声をかけられたというわけだ。

 俺は魔王を倒すために神によってこの世界につれてこられたはずだ。

 なのに冒険者じゃ生きていけないってどういうことなんだよ……。

 娯楽もないこの世界は、どうやら想像以上に生きづらい世界のようだ。

「――とりあえずダインさんという人のところに行ってみるか」

 冒険者になりたいならその人を頼れという風におじさんに言われたので、行く宛もない俺はひとまずその人がやっているというお店に行くことにした。




「いらっしゃい」

「あ、は、はい……」

 案内された店に入ると無精髭を生やし、ガタいがいい、いかにもなおじさんが立っていた。

 しかもどういう訳かマスターの上半身裸で立っていて、体のあちこちに傷跡が残っていた。

「…………」

 そのあまりにも怖い見た目に、すぐにこの人がダインさんだと分かった。

 店の中には客が誰一人おらず、マスターが食器を洗う音だけが響いていた。

 や、やべぇ……どうしよう……。いかにも場違い感が否めない……。

 どうしよう。冒険者になるならダインさんの元に行けと言われたが、これは話しかけることすら出来ない。

「ん?どうしたのかね?」

「い、いえ……え、えっと……」

 もうやだっ、異世界怖いっ!

 やっぱりオタクが異世界行ってもまともに生きていけねぇよ!俺TUEEEEEなんて出来ねえよっ。

「…………すいません」

 と、とりあえず席に着こう。

 このまま立ち止まっていては迷惑をかけるだけだ。

 ひとまず席は適当に座ろう。冒険者について聞くには……まぁ、タイミングがきたらでていいか。

「――あれ?お客さんっ?」

 ん?この声は……? 

 店の奥から聞き覚えのある女の子の声を聞いて思わず視線をあげる。

「あっ!タイチさんっ!」

「あっ……」

 なんと店の奥から出てきたのは、あの時出会った少女だったのだ。

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