第5話 歓迎

「あっ!タイチさんっ!」

 店の奥から出てきたのは、あの時本屋の前で出会った少女だった。

 どうしてここに……?

「ん?なんだ知り合いか?」

「そうなのっ。さっき話したでしょお父さん。私この人に助けてもらったのよ」

「おぉっ、君があのタイチ君かっ!」

 父さん……?まさかこの厳つい親父からこんな可愛い子が生まれたというのか?

「いやぁそうとは知らずすまんのっ。ほれ、娘を助けてもらったお礼じゃ!今日はなんでも食べさせてやるぞっ!」

「い、いえ……そ、そんな……っ」

「いやいや遠慮するなっ。どれまずはこの店自慢の料理でも振る舞ってやろう!」

「い、いやっ……」

 咄嗟に声を挟むも、ダインさんはそのまま厨房の方へと入っていってしまった。

 どうやら娘を助けてくれたお礼をしたいらしいが……申し訳ないことにそこまで腹が減ってないんだよな……。

 それに俺はあんまり飯が食えないし、そもそもこの世界の料理がどんなものかすら分からない以上、最悪食べられないかもしれない……。

「ごめんね、お父さんいっつもあれだから。でもちゃんとお礼が出てきてよかった」

「は、はあ……」

 しかも困ったことに例の少女が隣に腰掛けてきた。

 ……やばい、どうしよう。

 なんかしゃべらないといけないのに……全然言葉が出てこない。

 そもそも俺はダインさんに冒険者について危機に来たのに一体どうしてこうなった……。

「ねぇ?タイチ君って本屋にいたけど、もしかしてタイチ君も本が好きなの?」

「えっ?う、うん、本はすごく好きだよ」

「えっ!ほんとっ!?」

 何かが少女の琴線に触れたのか、少女は前のめりになる。

 かなり顔が近づいてきたので俺は思わず顔をそらすが、少女はそんな俺の気持ちなど気にせずにぐいぐい話しかけてくる。

「いいよね、本!私も昔から大好きで、毎日読んでるのよ!だけど同じような同士がいなくて寂しかったのよ!だから同じ本好きに出会えて本当に嬉しいわっ!」

 よくもまぁ、素直にここまで心をさらけ出せるものだ。

 俺も対外だが、どうやらこの子の対人スキルは相当なものらしい。

 ……とは思いつつも、本が好きだといいながらこの世界の本は読んだことはないことが心苦しい。

 まぁ、でも俺はジャンル問わずどんな本でも読むから恐らくこの世界の本もすぐに好きになるんだろうけど……。やっぱり俺は可愛い女の子がみたいんだよなぁ。

「ねぇねぇタイチは何の本が好きなの!?」

「え、えぇっと……」

 そして早々に不味い事態になってしまった。

 やばい……コミュ症の弊害がこんなところにも……。

「タイチ君っ!ほらご飯が出来たぞっ!」

「は〜いっ!どんどん食べて行ってねぇ〜!」

 するとナイスタイミングで店の奥からダインさんと、ゆるふわウェーブの髪を伸ばす綺麗な女の人が出てきた。

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