第6話 問い

「――冒険者になりたい?」

「は、はい……」

 少女の両親が盛大に作った食事を終えて、俺はようやくダインさんに本題を話すことが出来た。

 そして不安の材料だったこの世界の食事は元の世界とあまり変わらないということが分かった。

 どうやらこの世界にも農作物もしっかりとあるようで、米が出てきた時は本当に驚いた。

 というわけで大盛りごはんをなんとか食べきったことで気が緩んだからか、すんなりと本題に入ることが出来た。

「う〜む……」

 冒険者という単語を出してからはダインさんの雰囲気が途端に変わる。

 先ほどまで夫婦で俺を歓迎していた空気が一気にかたいものに変わったのを肌で感じる。

「見たところ君の武器はその短剣のようだな」

「そ、そうっすね……」

 今の俺の装備はこの短剣一本。

 普通こんな装備で冒険に出るのは危険すぎるが、でもこれは神からもらった神器なのだ。

 神曰く、この世界でもっとも強い武器だとか言っていたので恐らく相当なチート武器だろう。

「……失礼かもしれんが、その短剣はどこで手に入れたものだ?」

 恐らくこの短剣の性能について気づいたのだろう。

 流石は元凄腕冒険者と呼ばれているだけはあるみたいだ。

 素人の俺は、最初この短剣を見た時はただの雑魚装備だと思ってたんだけど、高いステータスといいやっぱりあの神は本当に神なんだなと改めて思い知った。

「え、え〜とっ、俺の家に代々伝わってきたものみたいです……」

 当然神からもらったなんて言えるはずもなく、適当に考えついた言い訳を話す。

 まぁ、俺の家はどんなやばい家なんだって話しになるけど……。

「なるほどな……」

 だけどこれ以上は言及する気がないのか、ダインさんは今度はまっすぐとこちらを見てくる。

「それでどうして冒険者になりたいんだ?」

 この店を紹介してくれたおじさんの話しでは、ダインさんなら冒険者として鍛えてくれるという話しだった。

 つまりダインさんの下に弟子入りすることになるみたいだから、この質問は恐らくそのための最初の試練だろう。

 だけどどうして冒険者になりたいのか、か……。

 それは勿論神に言われたからだろうけど、正直冒険者に対して強い思いを持っている訳じゃない。

 だけど魔王討伐のために動かないと強制送還されるなんて話しもあった。

 折角異世界に来たんだからどうせしっかり満喫したい。

 だからここはなんとしても冒険者にならなくちゃいけない。

 そして冒険者になる為にもっとも近い道は恐らくダインさんの弟子になることだ。

 だからこの質問は絶対に失敗出来ない。

 変な嘘でもついてしまえばすぐに見抜かれて門前払いされそうなので、俺はただ本心を伝えることにした。


「冒険者になって、萌えを布教するためですっ!」

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