第8話 労働
「いらっしゃいませーっ!」
扉のベルが鳴るのと同時に俺は元気よく声を出した。
「おぉタイチ君、今日も元気だね〜」
「やっぱり若いってのはいいねぇ〜」
「いえいえ。お二人の方こそ全然元気じゃないですか」
新しくお店に入ってきた常連二人を見て俺は苦笑いを浮かべる。
なにしろこの常連二人は鍛冶師で、毎日くそ熱い工房に籠もっているせいかいつも上半身裸でいるのだ。
そのくせズボンも短パンものだから、最初にみた時はパンツ一丁のやばい奴だと思ったよ。
「いや〜俺達はもう歳だからなぁ」
「そうそう。最近じゃ体がなまっちまって肩凝りなんかがひでぇんだよ」
二人はそう言って肩を押さえるが俺は知ってい思いもしなかったが、これも仕方のないことだった。
どうして俺がダインさんの店で働くことになったのか、それは今から一週間前に遡る。
俺はダインさんの下で修行をつけてもらい、冒険者になることになっていた。
しかしその後、何故か少女――ダインさんの娘で名前はエリというらしい――の部屋に突然招待されたかと思うと、そのまま俺はエリと意気投合してしまった。
当然、女の子の部屋で二人きりだからといってラブコメ的な展開などは起きず、ただただエリが持っている本を紹介してもらって俺は見事にそれにはまってしまった。
異世界の本は基本的に実在の出来事が物語になっているが、俺にとってはそれはフィクションの世界と何ら変わらず俺はすぐにハマった。
だけど……やはりというか、想像はしていたが美少女が出てこず萌えが一切ない。
一応中には一冊だけ可愛い女の子が主人公の本があったが、ぎりぎりその本には萌えがあっただけだった。
俺の中では萌えという要素は――――と、少し話が脱線してしまったからこの話はまた別の機会にしよう。
という訳でエリと仲良くなった俺は、ダインさん達に宿がないことがバレ、結果としてこの家で住み込みで働くことになったという訳だ。
「お〜い!タイチ君〜!注文お願いするよ〜」
「は〜い!すぐに行きますっ」
ということで異世界に魔王を倒しにきた俺は、今日も生活のため必死に働く。
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